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隣の君は幽霊です。  作者: カイガイ
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その成仏手伝ってあげます。

第一話 [その成仏手伝ってあげます]



カチャッ


アラームを止める。


11月の朝の寒さは二度寝を許さないほどに体を冷やす。


しかし、布団から出るというのは悪手だろう。


布団の温もりは何物にも代え難い幸福感をくれる。


布団にくるまりながらふと思う、


昨日のあれは夢だったのだろうか?


普通に考えればありえない話だ。


昨日死んだはずの、もう一昨日か、


まぁ、死んだはずの人間が幽霊となって


目の前に現れる。


夢と思わなければ理解できないような話。


なぜ僕にだけ見えるのか、


彼女はなぜ幽霊になったのか、


謎は深まるばかりだ。


(でも、夢じゃなければいいな......)


そう考え事をしているうちにも時間は過ぎていく。


学校へ行く準備をしなくては。


「行ってきまーす」


家で考えていても仕方がない。


夢かどうかなんて学校へ行けば分かることだ。


吐く息は白く、池は所々凍っている。


これでまだ11月というのだから


冬というのは恐ろしいものだ。


しかし、昨日よりは寒くない。


今日は防寒具を忘れなかった。




教室の扉の前に立ち深呼吸をする。


ガラガラガラ


扉を開けると、机に頬杖をつき、窓の外を眺める


君を見つけた。


僕の隣の席の君、


一昨日死んだはずの清水レイカさん。


目が離せなかった、一歩も動けなかった。


動けたのは1分後、


「おい、入り口で止まってんじゃねぇよ」


そう声をかけられて僕は教室に入った。


席に着くと、早速レイカさんが話しかけてくる。


「おはよう」


「ねぇ、さっき私に見惚れてた?」


意地悪そうな笑顔で僕に問いかける。


「ち、違います...」


(なぜ分かったんだ?!)


「幽霊だからかな?」


「え?!、心が読めるの?!」


「読めないよ、ユウト君は顔でわかりやすい」


と言って笑う君は楽しそうだった。



ガラガラ


「おーい、席つけよー」


担任が入ってきた。


今日1日の報告があった後、


「レイカの隣のやつ、


花持ってきたから変えといてくれ」


「え...は、はい」


(よりにもよって僕かよ、本人見えてるのに)


レイカさんの視線は気になったが、


僕は言われた通り花を変えた。


「綺麗な花だなぁ、先生もいいセンスしてるね」


そう言ってまじまじ花を見つめている


レイカさんの横顔にまた見惚れてしまう。


すると、急にレイカさんがこちらを見た。


僕は驚いて目を逸らす。


「ユウト君も、花を変えてくれてありがとう」


お礼を言われた、しかし意地悪そうな顔が気になる。


「また見惚れてたでしょ?」 


またバレてた。


「いいよ?好きなだけ見つめてくれて」


「だ、大丈夫です....」


そう?と首を傾げてまた笑う。


一日中この調子で揶揄われるのかと思うと


先が思いやられた。


そして嫌な予感は的中する。


1時間目


「ねぇ」


「....」


「ねぇってば」


「.....なんですか?」


「暇なんだけど」


こうなるとは思っていたが


1時間目からだぞ、早すぎる。


「僕、授業受けてるんですけど」


「そんなの見てたらわかるよ」


「じゃあ...」


「私は授業受けても意味ないし、死んでるからね」


死んでるって笑顔で言うのもなんだかな


「ねぇ、話そうよー」


「ダメですって」


レイカさんが幽霊であると僕はすっかり忘れていた。


「おいユウト、さっきからひとりごとか?」


(しまった!聞こえていたのか!?)


「んふふ、言われてるよ、ユウト君」


楽しそうに笑うレイカさん。


「君のせいでしょ....


もう静かにしててください...」


「えー、もっと話そうよ、ケチー」


そういうとレイカさんは不貞腐れたような顔をした。


2時間目


そういえばさっきからレイカさんが静かだ。


1時間目のことで理解してくれたのか


と、思っていたら、


「わーー!!」


レイカさんが大きな声を出しながら


目の前に飛び出してきた。


「わっ!!」


僕は大きな声で驚いた。


ちょっと冷静になり周りを見ると、


教室中の目が僕に向いている。


「す、すみません....虫がいて...」


苦し紛れの言い訳をしてその場をやり過ごす。


隣の席を見ると、


レイカさんが机に突っ伏して笑っていた。


3時間目、4時間目も似たようなものだった。


流石の僕も腹が立ってきていた。


今日の朝、夢じゃなければいいなとか思ったが


夢でよかったかもしれないと思い始めた。


(もう我慢できない、昼休みに入ったら無視しよう)


昼休みになった。


「ユウトくん、ユウトくん


 昼ごはんどこで食べるの?」


早速話しかけてきたが、僕は返答しない。


「ねぇねぇ、聞いてる?


 無視しないでよー、ねぇー」


(ここで反応してしまったら負けだ)


僕は弁当を持って足早に教室を出た。


5時間目 


「ねぇ、お昼どこで食べてたの?」


無視無視、毎回反応してたらまともに授業が受けれない


「ねぇ、聞こえているんでしょ?」


(聞こえているよ、しかしレイカさん、


君はやりすぎたんだ、少し反省して欲しい)


「ねぇ、ユウトくーん」


聞こえているものを無視するというのは


心にくるものがあるが、仕方がないことだ。


そうして何回か無視していると、


「ねぇ、聞こえていないの....?」


声に元気がなくなってきたか?反省したのかな。


するとレイカさんが急に立ち上がった、


「や..やだ...そんな...」


よく見えないが泣いているように見える。


そしてレイカさんは走って教室を出て行ってしまった。


まさか泣かせてしまうとは。


女性を泣かせてしまうのは流石によろしくない。


(反省もしてるだろうし、謝りに行こう)


「先生、ちょっと具合が悪いので


保健室に行ってきます」


「あぁ、お前今日変だって噂だったしな

 

 体調悪かったのか、行ってこい行ってこい」


噂になっていたのか、とても恥ずかしい。


しかし謝りに行くとしてもどこにいるのだろう。


ふと、昨日の放課後を思い出す。


(屋上くらいしか思いつかないな)




屋上に向かう階段を上がっていると、


レイカさんの泣き声が聞こえてきた。


扉の前に立つとはっきりと声が聞こえる。


「....もう...誰も私に...気づいてくれない...」


「誰とも喋れない.....誰にも...触れられない...」


「悲しいよ...なんで...もう死んでるのに...」


「なんで死んでからも....こんなに....こんなことに...」


「私は....早く...早く消えたいのに....!」


ガチャッ


僕は考えるよりも先に扉を開けていた。


そこにはうずくまって泣いているレイカさんがいた。


「ユウト....君....?」


僕はレイカさんに話しながら近づいていく。


「ごめんない、さっきの声聞いちゃった」


「え...? ユウト君...私が見えて....声...聞こえて...」


「それと、今まで無視しててごめんなさい


 君の気持ちを理解せずに」


「今君は幽霊という、よくわからない状態で、

 

 不安でいっぱいだと思うし、その気持ちを


 理解できるのは僕だけのはずなのに...」


レイカさん、少し落ち着いたようだ、よかった。


僕はレイカさんの目の前に座り、


しっかりと目を合わせた。


「僕は君のこと、はっきり見えているし、


 君の声も、はっきり聞こえています」


「君の話し相手なんていくらでもなってあげます、


 早く成仏したいと言うならいくらでも手伝います、


 だから.....その....もう...大丈夫ですから」


締まりが悪いが、言いたいことは全て言えた。


「.....うん....」


レイカさんは小さく頷くとまた泣いてしまった。


僕は泣いているレイカさんに触れようとするが


やはりすり抜けてしまう。


しかし、すり抜けた手は


少しだけ、温かかった。











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