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4話

初めて錬成が成功した日から、一週間がたった。

今ではある程度のものを錬成出来るようになり、アイテムボックスに素材を詰め込んでその日の終わりに錬成するのが日課になっていた。


あと、リンナちゃんとイアンくんが、一週間前から修行する事が多くなった。森や洞窟に籠るようになり、リンナちゃんとイアンくんのお母さんは「ほっときなさい、そういう年頃なの」と言ってニコニコと私を微笑ましそうに見て、「大丈夫よ」と言ってたけど、リンナちゃんとイアンくん、何かあったのかなぁ…?


なので、遊ぶ期間が二日に一回になっていた。いや、それが普通なんだろうけど、今まで毎日のように遅くまで二人と遊んでいたから少しだけ寂しく感じる。


でも、そんな事で落ち込んでいる場合じゃない。

二人も強くなる為に頑張っているんだから、私も錬金術を扱えるようになって二人と一緒に旅に行けるように強くならないと。

ふぅー、と息を吐き、魔力を銀色の釜に変える。


まずは…。⦅頑丈な石⦆と⦅木の棒⦆錬成してみる。ちなみに⦅木の棒⦆は、⦅木の枝⦆を二つ錬成して大きくなるように想像したら出来た。


手の平サイズの銀色の釜に⦅頑丈な石⦆と⦅木の棒⦆を入れ、錬成。

想像するのは…、敵を打ち倒せるもの。…剣。


ボフン、と音を立て煙を出した釜から出てきたのは二つの⦅石剣⦆。


一週間前からだいぶ楽に錬金術を扱えるようになった。想像通りのものが錬成出来るようになったし、ステータスもある程度上がり、今まで知らなかったけど、この世界にもゲームのようなステータスがある事を知った。


ステータス、と頭の中で呟けば、目の前に薄い画面が見えて、自分の詳しい事が書かれている。前世の私はRPGとかファンタジーとか好きだったらしく、正直これを見た時気分が凄く上がった。

それでこれが私のステータス。







メルル・ハニーライト Lv…2

種族…人族 性別…女


HP 46/46


MP 15/68



攻撃力…G 魔力攻撃力…F


防御力…E 魔法防御力…D


素早さ…D 幸運…A




職業…錬金術師。



固有スキル


〖創造辞書〗



スキル


〖錬金術〗〖付与術〗〖状態異常無効〗〖魔術〗〖鑑定〗







ステータスはこんな感じで、何か知らないスキルも持っているし、幸運値も結構高いしで最初は結構驚いた。

そして、固有スキルの〖創造辞書〗って何だろう…?

〖付与術〗や〖状態異常無効〗、〖魔術〗、〖鑑定〗とかは何となく分かる。でも〖創造辞書〗は分からない。どういうスキル何だろう…?


いつか分かるかなぁ……?


頭を振って気分を切り替えて、今持っているスキルで何ができるかを考えて見る。〖付与術〗を錬成したものに付与できたりするかな。さっき作った⦅石剣⦆に、攻撃力上昇とか付与したりとか。素材とかに付与とかもできるかな。私の残りMPてきにあと一回分しか無い。


「メルー!」


錬成するか付与をするかを、迷っていれば、遠くからリンナちゃんの声が聞こえ、声が聞こえた方を見れば、リンナちゃんとイアンが駆け足でこちらに来ていた。

二人共、修行が終わったんだ…!


「リンナちゃん、イアンくん、おかえり…!」


「うん! ただいまー! やっと終わったー!」


「ただいま。僕もやっと終わったよ。」


さっきまで凄く疲れていたのにリンナとイアンくんに会えて、すぅ、と疲れが無くなっていくような気がした。だけどその嬉しさは直ぐに吹っ飛んだ。二人から血の匂いがする。


修行だから当たり前なのかもしれないけど、二人共キツい修行をしてきたのだろう。

リンナちゃんは身体中に無数の切り傷が出来てるし、右腕を後ろに隠すようにして力を入れないようにしているのを見ると、右腕に酷い怪我をしているのだろう。平静そうに見えるけど、時折眉を寄せて耐えるような顔をする。

イアンくんは火傷や切り傷を負っているだけで、リンナちゃんよりは怪我してないように見えるけど、私に背中を少しでも見せないようにしてる。イアンくんも平静そうに見えるけど、隠すように後ろに回している手を、血が出そうなくらい強く握っている。


リンナちゃんは右腕に負った傷を、イアンくんは背中に負った火傷を、私に隠そうとしている。


二人が私に心配をかけないようにしているのも分かってる。二人が私に怪我や血を見せないようにしているのも、心配させないようにしているのも、全部私が弱いせい。

私が強ければ、二人は私に傷などを見せてくれた。私が何も出来ないから、私が何も出来ないと落ち込まないように、二人は私に傷を隠そうとする。


これじゃあ私が強くなったとしても、旅には一緒に連れて行ってくれない。二人は私を守るべき弱いものって認識してるから。

二人には及ばないかもしれないけど、私だって最初の頃に比べれば成長してる。

ある程度の錬成なら出来るようになったし、錬金術の扱いだって成長した。まだまだ、錬成出来る時間はかなりかかるけど、もっともっと錬成していけば、熟練度は上がって早く錬成出来るようになる。いつまでも弱いままじゃ無い。


二人に、私は弱いままじゃない、思っているより強いんだって安心してもらって、私は大丈夫、思っているより弱くないって信頼してもらわなきゃ。


「リンナちゃん、イアンくん。ちょっと来て。」


「メル、どうしたのー?」


「メル? どうしたの?」


二人の腕を引っ張って自分家へと歩く。今日お母さんは、リンナちゃんとイアンくんのお母さん達とお茶会だから、夕飯までは帰って来ない。二人を手当てするには好都合だ。

自分の部屋だったら、錬金術を錬成しやすいだろう。確か傷薬を錬成していたはずだけど、足りなくなった時の為に錬成しやすい自分の部屋に行く。


「メル〜? ね、どうしたの?」


「そんな大事な事、あったかな?」


「うーん…、無いと思うけど…。」


「僕は早くメルと遊びたいな。」


「ね〜? 今日の分の修行も終わったんだし、少しでも長くメルと遊びたいな。」


やっぱり二人は、傷の事を気付いて欲しくないんだ。

別の話題を出して、私の家に行くのを忘れさせようとしている。いつもなら私は、二人がそう言うと二人の意見を優先させる。だけど、今回はそんな事はしない。私の部屋に行ったら、血の匂いで気付かれると思っているんだと思うけど、もう気付いてる。逃げようとしてるけどそんな事はさせない。

二人はもう少し自分を大事にして。


「怪我、火傷。」


「っ! え、」


「っ! メル…?」


驚いた顔で私を見る二人。きっと気付かれないと思っていたんだろう。驚いた顔から徐々に顔を青くさせていく。


「あ、あのね、メル! これは…!」


「リンナちゃん。血が出ちゃうから、あまり右腕に力を入れないでね…」


「メルっ! これには訳がっ!」


「分かってる。だからイアンくん、あまり動かないで。火傷に風が触れるたび、痛いでしょ…?」


二人の言葉に淡々と言い返すと、二人は静かになって大人しく付いて来るようになった。私が、怪我を負っている二人を逃がすつもりは無いって、二人も気付いたのだろう。


家に付き、自分の部屋へと二人を連れて来て、座らせる。部屋に置いてあった折り畳み式の小さなテーブルを広げてテーブルの上に、アイテムボックスに入っていた⦅傷薬⦆やら⦅治療セット⦆、⦅消毒液⦆や⦅柔らかな布⦆、⦅柔らかな大きな布⦆など、手当てする為に必要なものを出していく。


「メル…、これ…!」


「ま、まさか…」


「あれから、私も二人の役に立ちたくて、頑張ったの。」


二人の質問に答えるだけしか喋らず、黙々と手当てをする為の準備をしていく。それを二人は不安そうに見ていた。素人が錬成したものだから怖いのだろう。そこは大丈夫。


「お母さんに見てもらったけど、特に問題は無いって言って

た。」


お母さんの持つ〖鑑定士〗のスキルに見てもらっているから。


〖鑑定士〗は〖鑑定〗の上位スキル。

〖鑑定〗は自分やモンスター、物や素材の詳しい情報しか見れない。だけど〖鑑定士〗は〖鑑定〗に出来る事は勿論、人の情報やステータス、スキルの詳しい情報など、〖鑑定〗より些細な所まで詳しく見れる。人の感情とかも分かるらしい。だからお母さんには直ぐに錬金術の事を言った。言った上で見てもらって、「大丈夫」と言われた。


「ち、ちがっ! 違うよっ!」


「メルの作ったものを疑っている訳じゃなくてっ…!」


「うん、分かってる。」


私が二人を見ずに返事をすると、二人は何かを言おうとして止めて俯いた。別にそこまで怒ってないのに。


「別にそこまで怒ってないよ。」


「……そっ、か…」


「…うん…」


妙に元気の無い二人を不思議に思いながらも、リンナちゃんの怪我から手当てする事を言い、リンナちゃんに一声かけて、リンナちゃんの右腕の袖を上げると、赤い布が巻いてあり、その赤い布を外す。

そこには肩の辺りから肘辺りまでかなり深い切り傷があり、布を外した瞬間血が溢れ出して来た。リンナちゃん、血が出ないように布をキツく結んで、無理矢理血を止めたんだ。

布の色が赤く変わるぐらい、多く血を流したなら貧血になって顔色が悪くなっても可笑しくはないはずなのに。


リンナちゃん、何でそんな普通にしてるの…?


「…っ!」


私が弱いせいで、二人は私に心配すらさせてくれない。


どれだけ自分が二人に守られていたのかを知った。長い間私は二人に守られていたから、二人はそれが当たり前だと思ってしまっている。

それに対し自分がどれだけ弱かったのかを知り、前世の記憶を思い出せた事に感謝をした。


⦅消毒液⦆を染み込ませた⦅柔らかな布⦆で、リンナちゃんの切り傷を優しく叩きながら切り傷を消毒して塗り薬タイプの⦅傷薬⦆を塗り、⦅消毒液⦆を染み込ませた⦅柔らかな大きな布⦆で切り傷を押さえ、上から包帯を巻いていく。


「リンナちゃんは終わったよ。あまり、右腕を激しく動かしたら、駄目だからね。」


「…うん、分かった…。ありがと…」


「次はイアンくん。背中の火傷見せて。」


「…うん…、」


イアンくんに背中をこちらに向けてもらい、火傷をみる。

少し焼けた程度の火傷じゃない。かなりの高熱で焼けたのか、背中が火傷で少し爛れている。

イアンくんに少し痛む事を伝えるとイアンくんは身体中に力をいれたので、一声かけて⦅傷薬⦆を背中の火傷に塗った。

塗っている最中、イアンくんの「ぐ…っ、」と言う呻き声が聞こえたが、イアンくんが小さく「続けて…っ!」と言ったので素早く⦅傷薬⦆を塗って⦅柔らかな大きな布⦆で背中に押さえて包帯で固定する。


「二人共、終わったよ。あまり動かしたら駄目だからね。」


「…うん…、ありがと…」


「分かったよ…、ありがとう…」


終わったと声をかけると、俯きながら今にも消えそうな程小さい声で返事をする二人に少し不安を覚え、俯いている二人の顔を見ると、二人は血の気が引いたような顔色をしていた。


「リンナちゃん…っ! イアンくん…っ! どうしたの…!?」


あまりにも血の気が無いので、慌てて二人の声をかけると、二人はゆっくりと顔を上げ、泣いたかと思ったら抱き着いてきた。


「…ぇ…」


「ごめんね、ごめんねっ! メルに血とか怪我を見せたくなかっただけで、メルを信用してないとかじゃないんだよ!! メルが怖がるかなって思って隠していただけなのっ! メル、嫌わないでっ! メルが一番大事なのっ!」


「メルに僕達の怪我をみせて怖がらせたくなかっただけなんだ! メルを信用してないとかではないよ! メルに嫌な思いをさせたく無かっただけなんだ! だから嫌わないで! メルっ!」


泣きながら必死に、私の事をどれだけ好きかを言ってくる二人を見て、思わず笑ってしまった。

笑ったら駄目だと分かっているけど、いつも冷静で、同年代の子より強くて、自信に満ち溢れた二人が、私の事で必死になっている事に少し嬉しくなって、怒りがどっかに行ってしまった。

それだけ私は二人に愛されているんだなぁ。


「うん、知ってるよ…! 二人が私の事を愛してくれている事…! 私も二人の事、大好きだから…!」


「「メル…っ!」」


「うん! 私もメルの事大好きだよっ!」


「僕もメルが大好きで大事だよ!」


「私も二人の事、大好き…!」


本当はもうちょっと上手く出来るようになってから、二人に教えたかったけど、教えたおかげで二人の気持ちが聞けたから、教えてよかった。


これから二人と一緒に強くなる事が出来る。そういえば二人はもうモンスターとか、討伐しているんだよね…?

ならモンスターの素材集めとか手伝ってもらってもいいかな…?

今度聞いてみよう。


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