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15、彼らの名は。

暫く書いていなかったので、少し書き方とかが変かもしれませんがご容赦ください。

本当にすみません。

少しスランプぎみなんです⋯⋯

あと、ブックマークが10件になってました!

ありがとうございます!


路地裏に入ってから十分程。

イアンくんを先頭に私たちは路地裏の奥深くへと進んでいた。

路地裏には沢山のものがあった。脆くなり崩れかけている四角い空き箱や、元の色が分からなくなっている沢山の布らしきもの。

そして。



「へぇ〜凄い量だねぇ」


「⋯⋯⋯はぁ」


「ほぁー⋯⋯」



路地裏の色んな所から私達を警戒する、沢山の人達の気配。


姿は一切見えないし、気配も普通の人相手だったらバレることなんてないとは思う位には上手に隠せているが、ここにいるのは強いのを通り越した激強の二人とそんな二人に鍛えてもらった私だ。


リンナちゃんもイアンくんも勿論普通に気付いていると思う。

二人より弱い私でさえここまでハッキリと分かるのだから、多分二人は私よりももっと精密に気配の人達の事が分かっているだろう。


だって私でも、気配の相手がどこにいるのか普通に分かるし、どの気配の人がどんな感情を私達に向けているのかも簡単に分かった。


その証拠に、気配達に対してリンナちゃんはワクワクと楽しそうな様子で気配の人達にバレない程度に目を動かして周りを観察しているし、イアンくんはイアンくんで心底面倒くさそうに、はぁ⋯と溜め息を吐いている。


リンナちゃんのあの無駄にウキウキとしたテンション具合は少し気になるが、まぁリンナちゃんのことだ。

何か理由があるのだろう。多分⋯いや、完全に気分だろうけど。

テンションの高さは間違いなく気分や知らない場所によるものだろうけど、それとは別に何か別のことも関係している気がする。

まぁでも今は、その別のことは気付かない振りをしておく。多分、少年の元に行ったら分かることだろうから。


まぁそれは置いておいて、私は先程からここまでの実力を持つここの人達に感心しながらも、周りの人達の情報を得ることに集中していた。


私がここまで強くなるのに三年位かかったのに、ここの人たちは誰にも教えを請わずに自力で、しかも独学でこの強さになったのだ。

ここまでの強さを得るのにとても頑張ったことだろう。それは生半可な覚悟じゃできることじゃない。それは私が一番よく知ってる。

私はあの地獄のような訓練を続けて、ようやくここまで強くなれたのだから。


だからそれだけの覚悟を持って強くなった人達が、気配の人達の住処にズカズカ入ってきた私達をそう簡単に逃がしてくれるとはとても思えないのだ。


先程から私の中にいるアンジュも気配達を警戒しているのか、密かに魔力を私に送り続けて来ていた。

それだけでも警戒するのもおかしくないだろう。


他の子がどんなのかは分からないが、アンジュはとても警戒心が強い子だ。だがらアンジュは邪な感情を持つ者が近付けば、すぐにそれに気付く。


今までもアンジュのこの警戒心に助けられたことが何度かある。もちろんそれはリンナちゃんやイアンくんも例外ではない。

だからアンジュが警戒するということは、彼等は警戒するに値する者、ということだ。


私の魔力に混じり始めたアンジュの魔力を、イアンくんは感じ取ったのだろう。ほんの少し、それもリンナちゃんと私しか気付けないように小さく頬が痙攣した。


それにリンナちゃんも、周りにいる気配達が警戒するに値する者、と気付いたのだろう。ほんの少しリンナちゃんの空気が、纏う気配が変わった。

先程と同じように見える二人でも、明らかに今の二人は警戒状態、いつでも動くことが可能な状態だった。


ちなみにアンジュが私の中にいるというのは、揶揄(やゆ)とかじゃない。本当に私の中にいるのだ。


どうやらアンジュがいうには、妖精や精霊達が人が契約すると、契約した者の中に契約した妖精や精霊達が入れる専用空間が作られるらしく、妖精や精霊は契約者が望む時以外は、契約者の中にいる時が多いらしい。


どこか焦る様な気配を纏う人達もいるのを感じながら、足を止めることはせずに奥へと進んでいく。


そしてどうやら気配全てがこの路地裏に暮らしている人達のようで、迷いなく路地裏を進む私たちを見て時折気配をゆらりと揺らして動揺する者も多くいた。


だけど二人がそれを気にするわけがなく、私達はそれらを横目に迷いなく奥へと進んで行った。そして暫く経った頃、イアンくんが突如ピタリと足を止めた。

奥の方にはあの男の子と他の数人の少年達がいた。どうやらあの男の子の元のへと着いたようだ。



「二人とも、着いたよ。」


「な⋯⋯っ、なん⋯っ!」



イアンくんの声に男の子達は弾かれたようにこちらを向き、驚いているのか目を見開いていた。

あの男の子は少し開けた空間に少年達と共にいて、男の子も他の少年達も驚いたように私達を見ていた。

どうやら男の子の方も私達を覚えていてくれていたようだ。


驚く男の子達の姿を見て苦笑する。まぁあの素早さを見るにあれは日常茶飯事のようだし、他の人にバレたことなんてなかったのだろう。驚くのも当たり前か。


私達でなければきっとバレなかっただろう。


いや、むしろわざとなのかもしれない。分かるように取っておいてから取ったものを追いかけて路地裏に入ってきた人達の身ぐるみを剥ぐつもりだったのかも。

それか両方か。

スリに気付いて路地裏へと着いてきた人は周りの人達が身ぐるみを剥いで、気づかない人達にはそのままスったものを貰う、という作戦なのかもしれない。


あのこちらを伺う人達の量を見れば後者の方が可能性は高いとは思う。

まぁどちらにしても驚いている理由は、私達が路地裏を迷わずにこの場にたどり着いたことか、路地裏の人達に身ぐるみを剥がされた状態じゃないことのどっかだろう。

もしくは両方。


イアンくんはとてもピリピリとした気配を纏っており、男の子達に殺気を放っているし、男の子達もその殺気に怯えながらもいつでも逃げられるように構えていた。


男の子達のその行動に、私は素直に凄いなと感心した。

だってイアンくんが本気ではないにしろ、イアンくんの殺気にも似たものを受けているのにも関わらずまだ動くことが出来るんだから。


二人に鍛え上げられた私でさえ、イアンくんやリンナちゃんの殺気じみたものを受けた時は怖くて動くことさえ出来なかったのに。


そんなことをかんがえながらも、一瞬の隙も許さないかのような両者の雰囲気に私は動かないように気を付ける。

だって多分これ、私が少しでも動いたら両者の行動が始まってしまう。


動くに動けない私はどうしようかと悩んでいた中、リンナちゃんが動いた。



「とうちゃーく!」



少しの油断も許されないピリピリとした空気の中、リンナちゃんの楽しそうな声が辺りに響く。


まるで旅行でもしているかのような明るい声に、男の子達はポカン、と口を開けて(ほう)けていたし、イアンくんも手で顔を覆いながら、呆れたかのように「はぁ⋯」と溜め息を吐いた。


だがそのすぐ後にイアンくんは「まぁリンナだもんね⋯」と、諦めた様子でリンナちゃんを見てもう一度溜め息を吐き、男の子達と向き合った。

顔は面倒臭さのあまり般若のような顔になっているけど。


イアンくんに見つめられた男の子達はピリリ、という空気を出して警戒していたが、イアンくんはそれすらも面倒臭いのか、警戒している男の子達を無視して話し出した。


「要求は一つ。メルの財布返せ。」


イアンくんはもの凄い淡々とした声で男の子達に告げると、男の子はビクッと肩を震わせて、怯えたようにジィッと上目遣いでイアンくんを見つめた。


男の子は気付かれていたという怯えと驚きの後に、これからどうなるのか想像しているのか、ふるり、と体を震わせた。


もしかしたら一度、警備隊に捕まっているのかもしれない。

なんていうか、これから起こる事に対して怯えているんじゃなくて、捕まった時のことに対して怯えているような気がする。


スラムの人達にとって捕まることは、とても危険なことなのかもしれない。それか警備隊から暴力を受けることもあったのかも。

まぁそれは置いておいて。イアンくんをどうやって落ち着かせよう。


どうしよう⋯と、じぃ⋯とイアンくんと男の子達を見ながら考えていれば、突然イアンくんからブワッ、と冷えたような何かが辺りに広がり、空気が冷たくなった。イアンくんの殺気だ。


手加減している殺気だとしても、急に殺気を出し始めたイアンくんに意図が分からなくて困惑していると、イアンくんは男の子達をもっと強く睨んだ。


何故か今のイアンくんは隠すことさえしない殺気で、威嚇する猫のように怖い顔をしながら男の子達を警戒している。


男の子達はイアンくんの殺気を受けてイアンくんには敵わないと思ったのか、冷や汗を流しながら大人しくその場に正座して、両手を上げた。凄い素直。


とりあえず今は、イアンくんが殺気を出し始めたのは何故なのかなどは一旦置いといて、何故か少し暴走しているイアンくんをどうやって止めるのが正解かを思案する。


リンナちゃんは未だにテンションが高くて辺りをキョロキョロと見回しながら、色んな所にフラフラと行っちゃうから、今は駄目。


今のリンナちゃんにイアンくんを止めることをお願いしたら、イアンくんを煽って更に暴走させちゃうか、イアンくんとリンナちゃんが喧嘩しちゃう。


なかなか見つからないイアンくんを止める方法に唸っていると、怯えたような視線を感じた。


思わず俯いて考えていた思考を切って顔を上げれば、私を見ていたのはあの男の子だった。


他の少年達がイアンくんから目を離さないのに対し、あの男の子はイアンくんに怯えながらも私に何かを言おうとしている男の子は何かを言おうとして口を開く。

だが結局は数度口をパクパクと開閉しただけで、なにも言うことはなかった。


多分、イアンくんが怖かったんだろうなぁ⋯。


あの顔を見るに、多分罰せられると思っているんだと思う。

確かに普通ならそうするし、そうじゃなくても悪いことをしたのなら罰してもらった方がいいと思う。


だけど男の子が取った私の財布は、フェイク財布だから中身は空っぽで何にも入っていないし、男の子が盗んだものは何もない。

盗まれたのは、ただアイテムボックスの中からお金を出す時にカモフラージュをするために必要な財布なだけだ。しかも多分その財布は返ってくる。

結局盗まれたものなんてないから、別にそこまでする程じゃないと私は思う。

なので私は財布を返してくれたらそれで終わりにしたいと思っている。そう、思っているのだが⋯⋯。


「⋯⋯⋯⋯⋯」


今の状態ではそうすることは出来ない。だってイアンくんが珍しく暴走しているから。


とりあえずイアンくんをどうにか出来たら穏便に事を終わらせる事が出来るのだが⋯。


だけどそれは多分無理だ。

イアンくんは一度暴走すると、イアンくんのことを力づくで止めるか、イアンくんが納得しないと暴走状態が解除されない。


前者はリンナちゃんなら出来るかもしれないが、今のリンナちゃんにお願いしたら大変なことになるのでまず無理。

私はまず勝負にもならないので以ての外。


となると、前者は絶対に無理。そうするとなると後者しか選択肢が無くなるのだが⋯。

多分後者のこっちも無理。

イアンくんを納得させられるようなことを考えられる知識なんて持ってない。


イアンくんを納得させられるなんてこと考えられるのは、イアンくんよりも頭が良くないと出来ない。だけど私はイアンくんより頭が良いわけじゃない。


どうしよう、詰んだ。穏便に済ませたいのに、穏便で終わる想像が出来ない。


というか何故イアンくんはあんなに怒って、暴走しているのだろう?

そこまでの怒るようなことなかった気がするけど⋯。


まぁとりあえず、当たって砕けろ精神で行こう。それしか方法はない。直球じゃないと多分駄目なやつだから。


「あ、あの⋯えっと⋯イアンくん⋯?」


「どうしたの、メル?」


少しでも間違えたら男の子達が犠牲になってしまう。そのため恐る恐る慎重にイアンくんに声をかければ、イアンくんは男の子達を警戒しながらも、笑顔で私の方を見た。


さっきまでのイアンくんは、負の感情を詰め込んだと言わんばかりの般若のような怖い顔をしていたのに、私を見る今のイアンくんの顔には負の感情など一ミリも浮かんでいない。

それどころかイアンくんの顔には、歓喜などの喜びのような感情が浮かんでいる。


何故だろう、多分良いことしか思っていないと分かっているのに、何か怖い。イアンくんから少しサイコパスじみたものを感じる。

今のイアンくん、笑いながら男の子達に向けて魔法を放ちそうで怖い。もしそうなったら私が何とかしないと⋯。


とはいっても、どうやってイアンくんの魔法を防ごう。多分私じゃ防ぎ切れないとは思うけど⋯。


リンナちゃんは何でか異様にテンションが高いし、イアンくんは異様に怒って暴走しているし⋯⋯。

今この場でまともなのは多分私と男の子達だけだ。


なんか少し当たって砕けろ精神は駄目な気がしてきたが、それしか方法はないので、大人しく決行する。

大きく息を吸って、吐いて。そしてまた息を大きく吸って、気合いをいれる。

恥ずかしいけど他に手はない。覚悟を決めろ、私!


「あのね、イアンくん」


「うん、なぁに?」


ニコニコと微笑むイアンくんに気圧されそうになりながらも、イアンくんを見上げて気合いを入れる。


(私なら大丈夫! 頑張れ私!)


「⋯⋯怒らないで?」


上目遣いでイアンくんを見つめ、甘い声でイアンくんにお願いする。

どうなるのかは分からないけど、二人の言う私専用の必殺技だ。


(上手くいって⋯っ!)


私は固唾を飲んで想像通りにいってほしいと願った。









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