12、答えは既に決まっていた。
少しだけ書き方を変えてみました!
文の前や間に広い隙間がある方が読みやすいと思いまして⋯。
もし読みにくかったらすみません!!
でももしかしたら私の書きやすさで、この書き方に変えるかもしれません!
「ねぇメル、見てこれ! 凄くかっこいい!」
「なぁに?」
普段滅多に感情を乱さないリンナちゃんの興奮した声に何だろうと不思議に思いながら振り向いた瞬間、リンナちゃんが興奮した様子で手にしていたものを見て、私は固まってしまった。
「ね、かっこいいでしょ!?」
リンナちゃんが手にしていたのは棘のような装飾がされた巨大な大槌。
明らかにその大槌はリンナちゃんの倍の大きさがあって絶対に重いはずなのにリンナちゃんが軽々と大槌を私の前に持って来るものだから、一瞬でも軽いのかな、と馬鹿なことを思ってしまった。
恐らく軽いことはないのだろう。
なんたって武器屋の店主さんが大槌を持つリンナちゃんを見て驚いた顔をしていたのだから。周りにいるお客さん達も目を見開いたりしてリンナちゃんを見ていた。
だというのにリンナちゃんは周りの視線を気にする様子を見せず、私に自分が持っている大槌のどこが良いか、どこが使いやすいかを楽しそうに熱弁してくれる。
視線が痛いほど突き刺さっているはずなのに、リンナちゃんは全く気にした様子を見せず、巨大な大槌を買おうか買わまいかを頭を抱えて悩んでいた。
その一生懸命な姿が小さい子供のように見えて、必死に大槌の良さを喋るリンナちゃんが可愛く見えて、思わずリンナちゃんの頭を撫でてしまった。
人が沢山いる中でリンナちゃんを撫でてしまい、直ぐに我に返りリンナちゃんの頭から手を離したが、これには流石のリンナちゃんもポカン、とした顔で惚けていたが、直ぐにふにゃ、と口元を緩ませて微笑んだ。
私に向けられたその表情があまりにも幼くて、昔を思い出すのと同時に自然と庇護欲を抱いた。
小さい頃はよくリンナちゃんはああやって笑っていたが、成長するに連れてどんどんと大人びた笑い方をするようになってしまった。それに私は少し寂しさを感じていた。
だが時折、リンナちゃんは昔と変わらないこの笑い方をする。
だから私は寂しさと同時にリンナちゃんが成長したという嬉しい事実があるからこそ、私はこの寂しさを自然と受け入れられているのだ。
時折見せるこの笑顔をリンナちゃんが今も見せてくれなかったら、私はきっと小さい頃よく考えていた、私はリンナちゃん達に必要だろうかという考えをまたしていたことだろう。
だが今は、リンナちゃん達は私をとても大事に思ってくれている事も分かっているし、私もリンナちゃん達の事を家族のように大事に思っている。
今なら小説の中のリンナちゃん達が何故メルルを置いていったのかがよく分かる。
危ない目に、辛い目にあって欲しくないから。
だからきっと小説の中のリンナちゃん達はメルルを置いていったのだろう。
メルルを危ない目に合わせるくらいなら、メルルを置いていこうと。それで置いていったことで嫌われてもいいからと。
リンナちゃん達は色んな事が出来るけど、それ以外はきっと不器用で怖がりなんだ。
だから今回もきっと何かを心配して、二人してリンナちゃんの胸にあるあの痣の事を隠してる。
リンナちゃん達が私の事を大事に思っていることも知っているし、私がリンナちゃん達の事を大事に思っていることもリンナちゃん達は知っている。
リンナちゃんは間違いなくあのダンジョンの中で痣の詳しい事を知っただろう。そしてそれをイアンくんにも伝えた。
それを伝えたのは多分、私があのダンジョンから出た後気絶するように眠った時だろう。
(痣の事を詳しく知っているリンナちゃん達が痣の事を私に隠そうとするのは、私に知られるとリンナちゃん達にとって悪いことが起きるから?)
もしそうなんだとしたらなんとなくだが、隠そうとする理由が思い浮かぶ。
多分私が痣の事を知ったら、私が二人を見送ると思ったのだと思う。それか私が二人の元から離れていくか。
まあこれは私が考えたことだから間違っているかもしれないが、どちらにせよ二人の考えは二人にしか分からない。
今度二人にその答えを聞いてみよう。私の疑問の答えは二人しか知らないのだから。
二人が痣を私に隠す理由が何となく分かっても、先程よりは多少モヤモヤはなくなったが、まだ胸辺りが少しモヤモヤする。だがそれらを全て心に押し込んで、目の前でふにゃふにゃと笑うリンナちゃんを見た。
リンナちゃんは頭を撫でられるのが好きなのかふにゃり、と嬉しそうな顔して、それを見た私も嬉しくなりさらにリンナちゃんの頭をもっと撫でる。
リンナちゃんも恥ずかしそうに頬を赤く染めたが、やはり頭を撫でられるのは好きなのか、大人しく頭を撫でられながらさらに嬉しそうに顔を綻ばせた。
やっぱり私はリンナちゃんのこの、心の底から笑ったような甘えるような笑顔が大好き。
この笑顔が見られなくなるぐらいなら私は二人が隠し事をしている事に気付かない振りをする。いつか二人が隠し事を教えてくれるその時まで。
心の底から私はそう思えた。
その時何となく私の周りに穏やかな空気が漂っていると感じたのもつかの間、イアンくんの落ち着いた声が聞こえた。
「メル」
声が聞こえた方に顔を向ければ、イアンくんが二つの小さな小刀と医者が持ってそうなメスのような箸のような細長い物を、三十本以上腕に抱えていた。
使い道は全く分からないがイアンくんには必要なものなのだろう。イアンくんから「絶対に買う!」という強い意思を感じるぐらいなのだから。
「え、えっと⋯⋯」
だがイアンくんは細長い物をその腕に沢山の抱えながら、珍しくソワソワしながら私の傍に並んだ。
滅多にはしゃいだりしないイアンくんが珍しく落ち着かない様子で私の傍にいることに不思議に思いながらもリンナちゃんの頭を撫でていれば、イアンくんはほんの少しだけ俯いた。
それは落ち込んでいる時の俯きじゃなくて、何かを待っているかのような俯き方だった。
イアンくんのそれを見て私は直ぐに気付いた。
イアンくんが撫でられるのを待つかのように、少し頭を俯かせた事に。
イアンくんはクールで落ち着いたように見えるが、実は凄く甘えたがりだ。だから昔からリンナちゃんが私に甘えてくるのを見ると、リンナちゃんと競うかのように自分も、と甘えてくる。
リンナちゃんは素直に甘えてくるのに対し、イアンくんは甘えられる理由がなければ滅多に甘えて来ない。いや、甘えて来れない。
そんなイアンくんも可愛いと思うけど、イアンくんは隙を見せるのが嫌みたいで、人がいる時には絶対に甘えて来ない。
なのに今イアンくんは人がいる所で甘えてきた。
イアンくんが人前で甘えてしまうほどの事があったのだろう。
もしかしたらそれはリンナちゃん達が隠していることについてかもしれない。
だとしても二人が教えてくれるのを待つだけだが。
二人を撫でるのと同時に色々なことを考えていると、突然リンナちゃんが顔を上げて、煌びやかな大槌をずい、と私の目の前に持ってきて「買っていい?」と真剣な表情で言ってきた。
恐らくこんな人が多いところに来たのは久しぶりだから興奮しているんだろう。
よくある田舎の人が都会とかに来ると、田舎に無いものがいっぱいある都会に思わずはしゃいでしまうようなあの感じだ。
だがあの大槌を買っていいか私に聞くあたり、リンナちゃんは自分でも浮かれているのが分かるのだろう。
リンナちゃんのあまりの剣幕に流石に私も驚いて思わず、「リンナちゃんが買いたいなら⋯」と、どもりながらオッケーしてしまった。
嬉々として会計しに行くリンナちゃんを何とも言えない気持ちで見送っていると、次はイアンくんが腕いっぱいに持つメスのような箸のような不思議な細長いものを買っていいかと聞いてきた。
手のひらサイズのそれがあまりにも鋭すぎて、それを腕いっぱいに持つイアンくんの腕が切れたりしないかが凄く心配。
会計した後はちゃんと自分のアイテムボックスに入れるだろうから安心だが、それまでイアンくんの腕が切れないように願うばかりだ。
リンナちゃんにオッケーを出してしまった以上イアンくんだけに駄目と言う訳にはいかないため、イアンくんのそれにも頷いてオッケーを出せば、イアンくんも直ぐに会計しに行った。
まぁ二人がもっていたものは一応武器と言えるものだし、リンナちゃんとイアンくんがあんなに欲しいと言っているものだから何かしら役に立つものなのだろう。
昔から二人は何かしらいいことを起こす強運の持ち主だから。
二人が会計し終わるのを端の方で待っていると、カランカランというベルの音を立てて扉が開き、金髪の男女が入ってきた。
男性の方はツリ目がちの緑の目と、腰まである金髪の髪を結い上げるという、いわゆるポニーテールにしていた。
女性の方は、ツリ目ともタレ目とも言えない真ん丸なパッチリした緑の目と、腰まである金髪の髪を結わずに下ろしている。
男性はクール系で女性の方は可愛い系。
そして男性の方は《勇乙》で出てくる、リンナちゃんと共に旅をするエルフの“エルク・ヴィヴィ”だ。
そして女性の方は、“エミル・ヴィヴィ”。彼の妹だ。
エルクさんは途中から旅に加わる剣を得意とするエルフで、弓を得意とするのは妹のエミルさんだ。
エルクさんが《勇乙》のリンナちゃんの一行に加わる理由は、妹のエミルさんが街に襲来してきた上位魔族との戦いの最中に、その上位魔族が使う毒に犯され倒れたから。
エミルさんは、上位魔族を倒すことは出来なくとも追い返すことは出来た。
だが毒に犯されながらしばらく戦ったせいか、エミルさんの体の奥深くまで毒が侵食し、しかもその毒は上位魔族の特別な毒であったために普通の解毒薬では効かず、魔法使いやら、薬師やら、毒を軽減する術を持つ者達が力の限り尽くして何とか命を繋いでいる状態だった。
エミルさんが死ぬかもしれないという恐怖に、エルクさんは自分の命を削りながら、がむしゃらにエミルさんを、毒を解毒する方法を探していた。
そんな中、リンナちゃん達がエルクの前に現れ、エルクさんはエミルさんの毒を解毒する方法を知った。
その毒は上位魔族しか解毒方法が分からないため、それを知るためにエルクさんはリンナちゃんの旅に同行し、そしてその魔族から解毒方法を聞き出して、エミルさんのいる場所へと帰って行った。
《勇乙》には、エルクさんが解毒方法を持ち帰ったその後の描写はないが、最終話でリンナちゃん達が自分たちの子供を連れて村に里帰りした後、王都へと帰る途中にリンナちゃんが、「エルクにあんな所で会うなんて思わなかったなぁ。ちゃんとエルクにも手紙をださないとね。それにしてもエルク何か嬉しそうだったなぁ」って。
だから恐らくエミルさんは治ったと思う。いや、絶対にそうあってほしい。
「⋯⋯ん?」
「⋯⋯っ!!」
ヴィヴィ兄妹が漂わせるあまりの美しさのオーラに思わず見惚れていれば、エルクさんがこちらを振り向こうとする気配を感じてすぐさま、エルクさんがこちらを振り向く前に会計カウンターにいるリンナちゃん達を見つめた。
「⋯⋯⋯」
「(視線が⋯っ)」
入口から感じる痛いほどの視線を体全体で受け、冷や汗をかきながらも私は絶対にそっちを振り向かないと決意した。
そのため私は意地でもリンナちゃん達から視線を外さなかった。
エルクさんは数十秒私を見てから、ようやく私から視線を外し弓が売っている奥の棚へとエミルさんと共に歩いて行った。
それを横目で見送ってからようやく心の中で溜め息を吐いた。
もちろん私がヴィヴィ兄妹を見ていないふりをしたのは理由がある。
その理由というのが、エルクさんはエミルさんのためなら命すらかけてしまうほど、エミルさんの事が大好きなシスコンだからだ。
それも妹のエミルさんの事を見ている人に決闘を申し込み、ボコボコしてしまうほどの。
しかもエルクさんの剣の実力は、勇者の乙女として覚醒したリンナちゃんに楽しめたと言わせるほどの腕前を持っているのだ。
そんな人に未だ二人とまともにやり合えていない私が抵抗出来るわけがない。
そのためあのエルクさんと絶対に目を合わせないようにしたのだ。目を合わせた途端決闘申し込んで来るから。
ギリギリで危機を避けられたことに安堵しながら、会計を終え戻ってきた二人と共に店を出た。
弓コーナーの棚あたりから痛いほどの感じる視線を無視して。




