10、交易の街ギルル
少しお金の間違いがあったので、修正しました!
すみません!
「へ〜。じゃあ君達は故郷の村から出てきたんだ。なんて所?」
「ハーブル村って所です。」
「あ、あそこか〜。あそこの村って結構森に近いから、モンスターがかなりの頻度で森から出てくるよね。しかも村人がそういうモンスターを退治するのが多いから、結構強い村人も多いし。」
「そうなんです! リンナちゃんとイアンくんも村を出る前はその討伐隊に勧誘され続けていたんです!」
「え、凄いね。あそこの村、強い人が結構いるから並の強さじゃその討伐隊に入ることなんて出来ないかったよね? という事は、相当強いんだねあの二人。」
「そうなんです、二人は強いんですよ!」
⦅赤色の牙⦆の皆と共にギルルという街へ向かっている間、私はベイルさんとお話をしていた。
ベイルさんの第一印象は破天荒で好奇心旺盛な人だったが、話してみるとその第一印象は随分となりを潜め、私が感じた第一印象はベイルさんが作っていたものだと言うことが分かるぐらいには物凄く落ち着いて話していた。
どうやらベイルさんとレイルさんは六歳差の姉弟らしく、ベイルさんが十一歳の時にモンスターに襲われ亡くなった両親の代わりに、ベイルさんが十六歳までの間冒険者のクエストをこなしてずっと一人でレイルさんを育ててきたらしい。
だがそれも少しずつ限界が来ていた頃、当時三人しかいなかった⦅赤色の牙⦆のベータさん達に出会って、育児を手伝ってもらったり、同じパーティを組んでクエストを手伝ってもらったりと随分と助けられたらしい。
それでようやくここまで弟のレイルさんを育て上げたのだと言う。
ベイルさんのハードな人生を聞いて、何故ベイルさんが第一印象を明るく見せている理由が何となく分かった。
きっと弟のレイルさんを落ち込ませないためだ。
ベイルさんはきっと、自分に迷惑をかけていると思っているレイルさんが自分を卑下してしまうと思って、わざと明るく振る舞っているのだろう。
だからたまに明るく振る舞うことで、レイルさんにあの人生があってこその自分で、自分は今楽しいとから、迷惑をかけたと思わなくていいと思わせるためにやっているのだ。
だがレイルさんもベイルさんのその行動の意図に気付いているみたいだから、尚更迷惑をかけていると落ち込んでいるように見える。
しかも二人の雰囲気や考えが周りにもバレているから、周りがどうにかしようとパーティの皆が焦って、クエストにも支障が出るようにもなってるという、悪循環だ。
多分これは、一度二人が本音で言い合わないと解決するのは一生無理なやつだ。
ベイルさんと話しながらそんなことを考えていると、ベータさんと共に先頭を歩いていたリンナちゃんが感嘆したような声を上げた。
「着いたよ」
ベータさんの声とリンナちゃんの感嘆の声に顔を前に向ければいつの間にか森を抜けて開けた草原に出ていて、少し遠くの方に大きな壁に囲まれた大きな街があった。
「あれが交易の街、ギルル。」
ギルルの門の前には門番が二人立っていて、門の前にいる人と街へ入ろうとしている人達が少し話しては街へと通していた。
恐らく悪い人とかが入って来ないようにだったり、何か起こっても直ぐに犯人が分かるようにするための検問というやつだろう。
「なんか凄い荷車がいんね」
「今日は木の日だからね。金の日と土の日と日の日は、休みの人が多いから稼ぎ時なんだよ。」
なるほど。だから荷車が多いんだ。
稼ぎ時である金の日の前に街に入っていれば混んで入れなくなることはないからだろう。
本当に商人というものは色々と凄い人だと思う。
辺りを見渡しながら門へと続く道を歩き門の前に着くと、門の横に立っていた二人がベータさんを見て「おお!」と、嬉しそうに声を上げた。
「ベータに⦅赤色の牙⦆の皆じゃないか! 久しぶりだなぁ。一ヶ月ぶりか? お目当てのフォレットピークは捕まえられたのか?」
「うん、やっと手に入れられたよ。君達も元気そうで安心したよ」
「あったりめぇよ! そんなすぐに元気をなくすほどやわな鍛え方はしてねぇし、してたら団長に怒られちまうぜ!」
門番の人ととても楽しそうに話すベータさんと、その様子を穏やかに見ている⦅赤色の牙⦆の人達。
そしてその様子を、リンナちゃんとイアンくんは笑いながら見ていた。
暫くしてようやく門番の人と話し終わったのか、⦅赤色の牙⦆の人達は首にかけていた銅色の板みたいなものを門番の人達に見せ、最後にベータさんが私達を呼んだ。
「お三方、こちらへ」
言われた通り三人でベータさんの側に行くと、一人の門番さんがこくり、と頷き、私達に紙を三枚渡して来た。
「申し訳ありませんがこの書類に記入して頂けませんか。ベータの連れて来た人なら悪い人ではないと分かっているのですが規則なので⋯」
「だ、大丈夫です。ちゃんと分かってますから!」
申し訳なさそうな顔をして書類を渡して来る門番さんに慌てて気にしてない事を伝え、渡されたその書類を受け取って二人に渡す。
そして記入した書類と入場料の銅三枚、300Gを門番さんに渡せば、渡した書類と交換でこの街での滞在期間が書かれた紙を渡された。
「その紙に書かれている日数までがこの街にいていい滞在期間になります。それらの日数期間を過ぎる時は街にある役所へ更新しに行ってください。もしその滞在期間を過ぎても更新せず街にいたのを発見した場合、捕まるのでそこの所ご注意ください。あと、日数期間以内だとしてもその紙を持っていないのを発見した場合も捕まるのでそういう場合は役所かここの門へと再発行しに来てください。再発行には300Gかかるので無くさぬようにお気を付けください。」
門番さんの説明のあと、ようやく⦅赤色の牙⦆の人達と共にギルルの街へと足を踏み入れた。
ちなみにこの世界でのお金の価値は、鋼は十円、銅は百円、鉄は千円、銀は一万円、金は十万円、小白金は百万円、白金は、千万円、大白金は一億円だ。
平民などの一般人が使うのは大体銀までで、お金の価値が高い白金になると、王族や貴族、稼いでいる商人やランクの高い冒険者などしかあまり持ってない。
大白金になるとお金を沢山持っている王族などしか持てないため、あまり作られない程に価値がある。
だから大白金を一枚持つだけで大金持ちに分類される程の価値があるためそれを持つ人はよく狙われる。それためほとんどの人は金か白金に細かくして持っているらしい。
あと、お金を数える時は、銅何枚、鉄何枚、と言う他にも、Gと言い方もある。100G、150Gという感じで。曜日も呼び方が地球と違うだけで、ほぼ一緒。
「お三方、ついたよ。」
十分程街を歩いていると、このギルルの街にある貴族の住むお城の半分ぐらいはあるであろう、屋敷と言っても過言ではないぐらい大きな建物に着いた。
私はその大きさに声も出なかったし流石のリンナちゃんとイアンくんも「おぉ〜!」と驚いたような声を上げていた。
中に入れば、広場と言えるような大きな空間に受付が六つぐらい連なってあって、少し位置を開けその更に横の方ではモンスターの買い取り場の受付なのか四つの受付に、冒険者達が受付の人と話しては息絶えたモンスターや素材をカウンターに置いていた。
そして大きな空間の行き止まりの左右の壁には、扉二枚分の高さと扉四枚分の幅が扉のように空いていて、その空いている穴のその先は別の建物へと繋がっていた。
その穴の上の方には酒場と宿泊と木の板に書いてあり、それぞれの扉のような穴が酒場と宿泊施設に繋がっていた。
更に二階に貼られているクエストは、冒険者ギルドに認められた高ランクの冒険者達が受けれる高ランクのクエストなのか、一階にいる冒険者達が二階にいる人達を羨ましそうに見ていたり、二階を見て瞳に炎を燃やしていたりと二階への憧れが見て取れた。
「うわ〜冒険者ギルドってこんな凄いんだ。」
「僕も少し驚いたよ。でもさっきのメルの凄く可愛い顔で驚いていた顔の方が目についたよ。」
「えっ!?」
「えっ、嘘見たかった! どんな顔してた?」
「言葉で言うなら⋯、頬を染めながらキラキラした目で見てた、ていう感じかな?」
「え、可愛い〜! 何それ見たかったっ!」
「まぁしょうがないよ。リンナ、メルの前にいたんだから。」
「え〜、あ、そうだ。ねぇメル、さっきの顔もう一回やって!」
「⋯⋯えっ?」
⦅赤色の牙⦆の人達と共に冒険者ギルドの中にはいれば、最初の内はリンナちゃんとイアンくんも楽しそうに辺りを見渡していたが、イアンくんが冒険者ギルドをみていた私の顔のことを言うと何故かリンナちゃんがそれに興味を持ち出し、話しが可笑しくなって、しまいには冒険者ギルドを見ていた顔をもう一回やってと言われ始めた。
それに驚いてどうやって話しを逸らそうかと考えていれば、冒険者ギルドに入った瞬間受付へと歩いて行った⦅赤色の牙⦆の人達に置いていかれたベータさんが助け舟を出してくれた。
「お三方、冒険者登録しに行かなくていいの?」
「そうだった!」
それにハッと我に返ったリンナちゃんとイアンくんは私に一声かけてから受付の方へと歩いて行き、私もベータさんに頭を下げてお礼を言ってからリンナちゃんの元へと走った。
「すみません、冒険者登録をしたいんですけど」
「はい、冒険者登録ですね。ではこの紙にご記入ください。」
受付にいる二人の元へと着くと、既に二人は受付嬢さんの人から紙を貰っており、リンナちゃんとイアンくんは私に気付くと持っていたもう一枚の紙とペンを渡してくれた。
それを受け取り紙に記入していると、職業と書かれている空欄と職種と書かれた空欄があり、どう書けばいいのか分からず受付嬢の人に聞こうと顔を上げれば、すぐ目の前に受付嬢さんの顔があり、反射的に体が跳ねた。
何も言えないまま静かに驚いている私を見て、受付嬢さんは「困っているご様子だったので⋯」と照れたように笑って、職業と職種の空欄に指を置き、説明してくれた。
「職業というのは、ある人の元で仕事を得ている仕事のことですね。例えば商人が経営するお店で働いている店員だったり、街を守ったりモンスターを倒したりする街や王都の騎士だったり、学園の教師だったり⋯。何かに従事していたり、誰かの元で働いていたりとする人達の仕事を職業と言います。」
「ふんふん⋯」
「それで職種というのが、それらの仕事以外をやっている人の使っている武器の種類、が職種です。職業は誰かに雇われたりしているのに対し、職種は自らで仕事を得て、それをこなしている人達の使っている武器の種類のことです。職業の人は与えられた仕事をこなして定期的に報酬を得るじゃないですか。それに対し何かに縛られることのない人達や冒険者は、自らで受ける仕事を探し、それをこなして報酬を得ますよね。その報酬を得るために使っているものは何か、というのが職種ということです。分かりやすく言うならば、職業は雇われている人達の仕事の名前のことで、職種は得ている仕事を何でこなしているかということです。」
「へぇ、そうなんですね。教えてくれてありがとうございます!」
「いいえ〜」
職業と職種の違いが分かり、受付嬢さんの言っていた通りに職種の方の空欄に⦅錬金術士⦆と書いて渡せば、受付嬢さんは笑顔でそれを受け取り、水晶のような物にその紙を三秒くらい貼り付けてから剥がし、さっきとは別の水晶玉とカードのような物を私達の前に置いた。
「そのカードを持ったまま水晶玉に手を翳して頂けばお持ちになられているカードに冒険者登録がされます。」
リンナちゃんが受付嬢さんに言われた通りに水晶玉に手を翳すと、リンナちゃんが持っている薄いカードに文字が自動で書かれていった。
「おぉぉ! 本当に書かれた!」
「凄いね!」
その光景にはしゃぐリンナちゃんと私を優しい目で見ながらイアンくんも水晶玉に手を翳して冒険者登録をして、リンナちゃんとはしゃぐ私に声をかけた。
「ほら、メルも冒険者登録をしなきゃ」
「あ、はい!」
水晶玉の凄さに驚き過ぎて冒険者登録のことをすっかり忘れていた私をイアンくんは手招きして、イアンくんの側に行った私の手を掴み水晶玉の上に乗せれば、私の持っていたカードに文字が自動で書かれていった。
何度見ても凄いそれを驚きながら見ていれば、受付嬢さんがふふ、と微笑みながら⦅赤色の牙⦆の人達が首にかけていたのと同じような銅の板の首飾りを、三つ差し出した。
「これは簡易冒険証です。其方のカード型の冒険証は再発行するには鉄三枚必要なので、無くさないようにしてください。こちらの簡易冒険証は再発行には銅五枚必要です。普段は冒険証をしまい、簡易冒険証を身に付けている事をおすすめします。」
鉄三枚は三千円で、銅五枚は五百円。
うん、高い。無くさないようにしないと。
リンナちゃんもイアンくんも鉄三枚は高いと思ったのか、冒険証と共に簡易冒険証をアイテムボックスの中にしまい、私も両方の冒険証をアイテムボックスの中にしまった。
それを見た受付嬢さんがほんの少しだけ目を見開いて、驚いていた。
「おぉ、もうアイテムボックスが使えるんですね。」
「えぇ、まぁ。あとこの三人でパーティを組みたいんですけど」
「はい、分かりました。ではこの書類にパーティ名とパーティメンバーの名前をご記入ください。」
微笑みながら書類を渡して来た受付嬢さんに、笑顔でイアンくんはお礼を言って受け取り、その書類を書き始めた。
パーティ名は何にするのかなと楽しみにしていれば、全て書き終えたのかその書類を受付嬢さんにその書類を出した。
そして次の瞬間、聞き覚えのある単語が出てきた。
「…はい。パーティメンバーは、”リンナ・ロードル“さん。“イアン・リリース”さん。“メルル・ハニーライト”さん。パーティ名は⦅勇者の乙女⦆で、間違いありませんか?」
「(…えっ?)」
勇者の乙女。
それはこの世界と同じような世界の小説の名前入っている名前だ。
勇者の乙女なんて言葉はすぐには思いつけない言葉だ。
だけどイアンくんは書類に書く時に考える様子は見られなかった。
しかもリンナちゃんとイアンくんは普段ならば、勇者、なんて名前をつけないし、名前をつけるにしても名に縋るような名前をつけることをあまり好まない。
自らの実力を見て呼ばれ始めたならば受け入れるが、こうなりたい、という気持ちで名に縋るような名はつける事が無い。
だから前から考えていたなんて言われて納得出来るようなパーティ名じゃないし、考えた様子がないことからそんな言葉をぱっと思い付きパーティ名にするとなれば、その言葉がイアンくんの身近にある言葉だと言うことになる。
そしてその言葉をイアンくんが知るのは、リンナちゃんが勇者に見初められた乙女になって胸にその証である痣が浮き出た時に、リンナちゃんにそれを聞かされた時に初めて知る言葉だ。
ていうことはリンナちゃんはもう胸に勇者に見初められた乙女の証である痣が浮き出ていて、イアンくんはそのことをリンナちゃんから聞かされている?
「はい。間違いありません。」
「分かりました。それではこれで登録完了致しました。《勇者の乙女》の皆様。ご武運を。そして冒険者になられた御三方、これからどうぞ宜しくお願い致します。」
「はい、こちらこそよろしくお願い致します。」
「じゃ、二人共行こ。⋯⋯メル?」
色々と考えているうちに気が付けばいつの間にか冒険者登録とパーティ登録は終わっていて、受付嬢さんに頭を下げたイアンくんとリンナちゃんが数歩歩き、動き出さない私を「どうしたの?」と不安そうに見ていた。
不安そうに私を見る二人に、何でもないよ、と笑顔で返し、胸に生まれたモヤモヤとしたものに蓋をして、二人の元へと走った。




