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7、一緒に

皆さんこんにちは、メルルです。

私は今、自分の部屋で正座している最中です。


そして両隣りには私を囲むようにして正座する二人。


というのも、旅に出る宣言したあの後、二人に引き止められないように逃げようとした私は、二人によって捕まり自分の部屋に連行された。


二人が大好きな私は、二人に止められれば旅に出る意思を簡単に変えてしまうのを自分でも分かっていた。


だから、少しでも意地を通すために二人から逃げようとしたのだが、それを二人が許してくれるはずも無く。

気が付けば私は二人に両手を握られ、二人の真ん中に座っていて逃げられなくなっていた。


「メ、メルっ? ど、どうしてそんな考えになっ、なったのっ?」


いつの間にか二人に囲まれていた私は、頭にハテナを浮かべながらも、震えた声で私に詰め寄るリンナちゃんとイアンくんに目を合わせ、二人に言った。


「私は今まで二人に守られっぱなしで、二人に迷惑ばっかりかけてた…。だけど、二人が大怪我をして帰ってきたあの日、弱い私のままじゃ駄目だと思ったの。このままじゃ、いずれ私が二人の足を引っ張って、二人を邪魔しちゃうって……」


「そんな事……っ!」


「あるの…。今だって私は二人から色んなものを貰っているのに、私は何も返せてない…。」


「メル! 僕とリンナは、メルから沢山のものを貰ってる! むしろ僕達の方がメルから沢山のものを貰っているのに少しも返せていないよっ!!」


「そうだよっ!! むしろ私達の方がメルに守られてるの!」


二人は必死に私の良い所を沢山言って、二人に助けてもらってばかりの弱い私を必要だと言って励ましてくれる。

それに思わず涙ぐめば、二人は私の目尻から零れそうな涙を拭った。


「ねぇメル。その旅、私達も一緒に行きたい……」


「え、いや、でも…、二人は旅に出るんじゃ……」


「うん。だけどそれは三人で一緒に行くつもりだったんだ。だけど」


それにメルを誘う前にメルが旅に行くって言うから、と言ってしょんぼりと落ち込む二人に、私は慌てて二人の手を握れば二人は私の手を握り返した。


もしかしたら私は、二人の強さの基準をクリアして、二人の旅に着いて行くのを許されたのかも知れない。

なのに私は二人のお誘いを断ろうとしたから二人は悲しんだのだろう。


二人に謝ろうと顔を上げたのと同時に、二人は握っていた私の手のひらにキスを落とした。


「っ!?」


それに驚き固まった私を、二人は手のひらにキスを落としたまま、悲しそうな苦しそうな顔で私を見つめ、二人は壊れ物を触れるかのように、私の頬を優しく包み込むようにして触れた。


「だからお願い。僕達からメルという宝物を奪わないで。」


「メルにとってはなんてことの無い普通のことでも、私達にとっては、喉から手が出る程に欲しかったものをメルはくれたの。」


「ひぇ……っ」


捨てられた仔犬のような目で見てくる二人が可愛くて、思わず小さく悲鳴を上げると、二人は更に顔を近付けてきて首を傾げた。


「「ねぇメル……。駄目……?」」


その時の二人が、仔犬や子猫、赤ちゃんのような庇護欲を(そそ)るような可愛さで、二人の事で頭の中がぐちゃぐちゃになっていた私は頭が上手く働かず、頷いたその先の事を考えられず、もうどうにでもなれ、と頷いてしまった。


二人が帰ったその後、私は一緒に旅に行けるのは嬉しいけど、今更ながら二人の使命を邪魔しまったかと、複雑な感情になりながら、子犬のような二人の可愛さを思い出しては悶え苦しんだのだった。












月が輝き、辺りが静まり返る時間帯。

森奥の更に深い場所で、モンスターの死体を手に、二人は話し合っていた。


「メルは優しいから、他の人達に騙されないかちょっと心配になるよ。」


「ん〜でも、メルの流されやすさは私達限定だから、大丈夫でしょ。」


「うん、まぁ、そうなんだけどね……。」


「まぁ…それも、今だけの話だけどねぇ。それに、メルのあの流されやすは信頼の証だからねぇ……」


「でも、メルが甘くなるのは信頼している人限定だから、まだいいよ。分かりやすくて守りやすい。」


「確かに」


あはは、と二人は笑い合い、メルが寝ているであろう家の方向を見て、ここに来る前にメルの部屋の窓から盗み見たメルの可愛らしい寝顔も思い出した。

どこか幸せそうな顔で目を瞑る二人を、キラキラと月は照らし続けている。


しばらくしてようやく目を開いた二人は真剣な表情で、互いに見つめ合った。


「いいの? それ(・・)、メルに言っておかなくて。」


以前はなかった、突然リンナの胸元に出来た痣をチラリと見たイアンに、リンナは気にした様子もなく「うん」と返した。


「いいの。言っちゃえばメルは優しいから、笑顔で私達を見送るよ。それにぶっちゃけ言うと、私は世界よりもメルの方が大事だから、メルに我慢をさせるぐらいなら世界なんて滅んじゃえ、って感じだし。」


「ははは、そこは同意。やっぱりリンナは最高だね。あの時はリンナの事嫌いだったはずなのに、メルといるようになってからは、リンナの考える事がよく分かる。」


「やっぱ、メルのおかげだね。私もあの時、イアンには嫌悪感しか抱いていなかったのに、メルと一緒にいるようになってからは、イアンの事とっても頼もしく思うようになったしね。」


昔の事を思い出し、クスクスと笑い合う二人は、一瞬だけ目線を合わせるとどこかへと歩き出した。


「にしても、メルが自分の願いを言ってくれるなんて珍しいね。」


「確かに。でも、メルがあんなにハッキリ願いを口にするなんて、初めてだと思うよ。」


「あんなにハッキリ言ったのは初めてだね。もっともっとワガママを言ってくれてもいいのにさぁ……」


そうして和やかに話しながら、二人は闇の中に消えていった。












あの宣言をしてから二人の行動は早かった。


私が旅に出る発言をした次の日から、二人は旅に出る準備をいつの間にか終えていた。

各々の両親達に旅に出る事を伝え、旅に出るための持ち物を準備し、ある程度行き先も決めたなど、諸々の準備を終えたと、二人に報告を受けたのが昨日。

二人に旅に出る宣言をしてから僅か二日後の事である。


その準備の早さと、いつの間にか一緒に旅に行く事になっていた事に、夢かと思い反射的に自分の頬を叩いた事は仕方がないと思う。


ちなみに、お母さんは私が旅に、というか家を出る事に賛成らしく笑顔で了承し、泣きながら私を引き止めるお父さんを、お母さんは片手で引き剥がしていた。


というのもお母さんとお父さんが出会ったのは、お母さんが冒険者だった時、モンスターに襲われていた一般人のお父さんを助けた事で親しくなったらしい。


だからお母さんは、旅に出る事(イコール)新しい事を知り、新しい出会いが出来る良いもの、と思っているので、「大きくなったわねぇ〜」と、とても喜んでいた。


そして大泣きするお父さんに「もしかしたら帰って来た頃には恋人が出来てるかもねぇ〜。もしかしたら恋人を連れて来るかもしれないわ!」と、「きゃー♡」と、可愛く騒ぎながら言って、お父さんを二重で落ち込ませていた。


どこの世界でも、お母さんというのは強いんだなと思い知らされた事件でした。











「メルーーっ!!」


お母さんからの了承が出た次の日、珍しい事にリンナちゃんが一人で来たので、出迎えた私はとても驚いた。

常にイアンくんと一緒にいるリンナちゃんが一人で来たことにも驚いたが、何より驚いたのが、リンナちゃんが顔を赤くしてもじもじと照れていたからだ。


いつも冷静で強気な態度のリンナちゃんが、困ったように笑いながら顔を赤くしながら私を上目遣いで見ていたのだ。


リンナちゃんのその様子に、可愛いと思いつつも驚いた私は、無意識に〖鑑定士〗のスキルを発動させてしまって、照れながら慌てた様子でリンナちゃんに目を塞がれてしまった。


「もうっ! そのスキルは無しだよ!」


「あわわ……ご、ごめんね?」


「んもー…、……いいよ!!」


照れながら怒った表情で許してくれたリンナちゃんに「ありがとう」とお礼を言って微笑めば、リンナちゃんは一瞬驚いたように目を見開き、嬉しそうに笑って私の手を握った。


「あのね、メルル。私達のワガママに付き合わせてごめん。でも私ね。メルルと一緒に旅に……というか村を出る……だね。メルルと一緒に村を出れる事がすっごく嬉しいの。」


「だからね」と、キョロキョロと視線を彷徨(さまよ)わせたリンナちゃんは、視線を彷徨(さまよ)わせたりチラチラと私の方を見たりしながら、一息吐いた。


そして真っ赤な顔で私を見て言った。


「ありがとう」


「これからも宜しくね」と、笑うリンナちゃんを見て、私は今までの頑張りが報われた気がして胸がギュウ、と熱くなった。


「……っ! う、うん……っ!」


鼻がツン、と痛くなり、目に涙が溜まる。

だが、それよりも、二人と一緒に旅に行ってもいいと言われた事の高揚感が凄まじく、私は顔に熱が集まった事も全部無視して、リンナちゃんに満面の笑みを返した。


「うん…っ! これからもよろしくね…!」







この四日後、私達は村の皆に見送られながら、村を出て旅に出たのだった。




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