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2、ダンジョン

「…ねぇメル。…ここ、どこ…?」


「…ごめんね、分かんない……」


「やっぱかぁ…」


ただいま私達は、謎の洞窟に迷い込んでおります。


あの後あのグロ集団から逃げ切れたのだが、逃げ切れたと同時にこの洞窟に迷い込んだ。

逃げ切れたと言ってもこの洞窟に入って来ないだけで、入口の前でウロウロしているんだけど。


この洞窟は地下に生成されるダンジョンのようで、洞窟にある道は全部地下へと続いていた。

しかも珍しい事に、リンナちゃんもこのダンジョンを知らないらしい。


この森にあるダンジョン全て知っているリンナちゃんが知らないとなると、新しく出来たダンジョンか、リンナちゃんでさえ認識できないくらいの高レベルのダンジョンのどっちかだ。

正直に言えば、前者であって欲しい。

後者であった場合、リンナちゃんにとって私はお荷物にしかならないというのを、自分でも自覚しているからだ。


昔より強くなったとはいえ、その強さはリンナちゃんやイアンくんには到底及ばない。


唯一私が誰も持ってないものを言えるとしたら、それは《錬操(れんそう)》だけだ。


《錬操》というのは、錬成したものを操る技術の名前だ。

無言で錬成したものを操るより、これからこうする、って認識してから操った方が操りやすい事に気付いてからはそうやって操るようにした。

そしてその時二人に、名前があった方がもっとやりやすくなると、《錬操》と言う、錬成したものを操る時の名前を貰った。


使う時は《錬操》の後に使いたい錬成したものを付ける。

例えば武器、剣を操る時は、「《錬操》・剣」といった感じだ。


一つではなく沢山の種類の武器を使う時は「《錬操》・武器」になるが、こういう風に大雑把になると、使う武器によっては、扱いにくくなる。

だから、面倒くさくても一個ずつ「《錬操》・剣。《錬操》・槍。《錬操》・斧。《錬操》・鎖。《錬操》・盾。」と操って行くものを増やして行く方が一気に言うよりは楽で簡単なのだ。

こう見ると《錬操》は強そうに見えるが、メリットも大きい分、デメリットも大きい。


デメリット

一つ、自分が錬成したものしか《錬操》出来ない。


二つ、《錬操》する回復薬なども同様で、自分で作ったものでないと操れない。


三つ、自分のレベルに合わない錬成したものを《錬操》する場合、レベル差の分だけ魔力消費が大きくなる。


四つ、《錬操》する場合、《錬操》する者のステータスによって《錬操》する物の耐久性や効果が変わる。


五つ、一度手放した物は錬成したものから外れる。


六つ、《錬操》する物の中には自分が錬成したものでも、回数制限のある物もある。


七つ、自分に使うアイテムなどは、自分が錬成したものか使えないし、市販のアイテムなどは効果がない。


と言ったように、結構なデメリットがある。


四つ目と六つ目、七つ目が結構きつい。

三つ目のやつは、使い方によっては魔力量を増やす手段になるのだが、四つ目と六つ目のはどうにも出来ない。


三つ目と四つ目もそうだが、三つ目と四つ目と六つ目。

この三つが重なると、もう損しかしなくなる。


三つ目と四つ目は、三つ目のレベル差がある程に強い物を《錬操》しても、魔力消費が早いのに武器達の強さは私のステータスに左右されるから魔力消費がただ多くなっただけ。


三つ目と四つ目と六つ目。

この三つが重なったらもう最悪しか言えなくなる。

同じ威力で魔力消費が多くなって、ただ回数制限が付いただけ。

もう私に合う普通の物を《錬操》した方が色々と良い。

そして私に貴重な武器やアイテムなどは関係なくなるのだ。

装備などは関係ないけど、武器やアイテムは自作でないとほぼほぼ意味無い。


七つ目に限っては、もう死ねと言っているようにしか思えない。

だって自分に使うアイテムなどは自作のアイテムでないと効果がなくなるのだから。

魔法であれば例外だけど。


錬金術を使えて良かったと思う反面、錬金術のデメリットがちょっとデカくて、普通の職業がよかったなと思う今日この頃です。


「それにしてもさぁ……。メル、何かこのダンジョン、可笑しくない?」


「うん、何かちょっと変」


「二人とも感じてるなら変なのは間違いないね。」


この洞窟型ダンジョンに入ってから感じる違和感。

最初は勘違いだと思っていたが、このダンジョンを進むに連れて、その違和感は勘違いじゃないと気付いた。


このダンジョン、モンスターが一体もいないのだ。

姿は勿論気配すらも感じない。

だが、それは別にいい。

モンスターがいないダンジョンは少なからずある。

崩壊寸前のダンジョンはモンスターがいない事が多い。

だから別にこのダンジョンも普通なら可笑しい事は無い。

そう、普通ならば。


「このダンジョン、凄く綺麗。壁や床も、私達の痕跡以外、人の痕跡を感じない…。まるで新しく出来たばかりのダンジョンみたい…」


「うん。その時点でこのダンジョンは可笑しい。ダンジョンは新しく出来た瞬間、モンスターを生み出す。だからこのダンジョンは新しく出来たダンジョンじゃない事は確定だけど…。このダンジョンが崩壊寸前のダンジョンだとしても、綺麗すぎる。しかもこのダンジョン、魔力の密度が他と比べ物にならないし、こんな魔力濃度の高いダンジョンが、崩壊寸前まで誰にも見つからないって事が可笑しい。」


確かにそうだ。

このダンジョンの魔力の密度が有り得ないぐらいに高い。多分このダンジョンの中で魔力を使い切っても一瞬で魔力は回復するだろう。

だからこそ可笑しいのだ。

こんな魔力濃度の高いダンジョンが、誰にもバレずにいる事が。


ダンジョンの発生地点や未確認のダンジョンを探す力を持つ王族や、王都にいる研究者がなどがこういうダンジョンの存在すら知らない事が可笑しい。

王族や王都にいる研究者達が認識したダンジョンは必ず、王族やそれに連なる者達が、王族に代々受け継がれている魔法で、そのダンジョンの詳細を入口ら辺に残して行く。


そうすれば王族の認識したダンジョンだと皆攻略しに来る。王族が認識していないダンジョンはどんなダンジョンなのか分からない。だけど冒険者達は詳細が分からなくても我先にとダンジョンへと進んで行く。

と言っても王族達より早く未確認のダンジョンを見つけるのは難しい為、詳細の分からないダンジョンというのはあまり見つかってないけど。


このダンジョンを隠していたとしても、こんな魔力濃度の高いダンジョンを隠すにはかなりの魔力がいる。

それこそ遥か昔にあったとされる古代の魔法か、神によるものじゃないと出来ない。


「「あ、」」


それに気付いたのは同時だった。

流石に、これは、マズイ。


お互い一瞬だけ目を合わせた後、ほぼ同時に入口へと全力で走った。


古代魔法か神様にしか出来ない事でこのダンジョンを隠していたのだとしたら、それは、このダンジョンが、この二つの力を持つものが、隠さなきゃいけないものだと認識したと言う事。


そんなダンジョンが普通のダンジョンであるわけ無かった。


このダンジョンが、金銀財宝があってそれが世に出たら駄目だと言うものならまだいい。

もしこのダンジョンが何かの生物が眠るダンジョンだとしたら…。


間違いなく私達は生きてこのダンジョンから出られない。数秒も経たずに殺される。


凄い力を持つ存在達がこのダンジョンを隠すべきものと認識したのだから、それ程このダンジョンはヤバいものなのだろう。


「…っ!」


「は、?」


このダンジョンの入口に着いた私達は絶句した。

このダンジョンの入口、私達が入ってきた入口が壁になっていたからだ。



ああ、これは…。


閉じ込め、られた…。


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ありがとうございます!!



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