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プロローグ

「メルー! お誕生日おめでとうー! 今年もいっぱい遊ぼうねー!」


「メル、お誕生日おめでとう。メルが今年も幸せでありますように。」


「えへへ。ありがとう、リンナちゃん、イアンくん」


ニコニコと笑う大人達と、リンナちゃんとイアンくん。

そして私の前には7本のロウソクが刺さったショートケーキ。

ショートケーキに刺さっているロウソクには火はついていない。先程私が息を吹きかけて消したから。


お母さんはショートケーキに刺さった完全に火が消えたロウソクを抜き、人数分に切り分ける。私とリンナちゃん、イアンくんのは大人達より少し大きめに切られている。

それを私とリンナちゃん、イアンくんと一緒に食べる。甘くて柔らかくて、美味しい。


リンナちゃんとイアンくんは、弱い私と違って強いのに、私と遊んでくれる。それどころか、弱い私を守ってくれる。それが凄く嬉しいけど、面倒をかけているようで少し嫌なの。


ずっとこの時間が続いて欲しいなぁ…。


旅に出たら寂しくなっちゃう…。


二人は旅に出たら、二度と戻って来ないから…。


二人が旅に出る前に強くなりたい…。


……? あれ…? 私今、何でこんな事思ったの…?


旅…? リンナちゃんとイアンくんが…? 何でそんな事思ったんだろう…?


「メルー? どしたのー?」


「どうしたの、ぼー、として。」


「うぇ? あ、うぅん、何でもないよ…! この幸せな時間がずっと続いて欲しいなって、思っただけなの…」


「あっ、メルもー? 私もだよー!」


「うん、僕もだよ。ずっとメルと、リンナと一緒にいたいな。」


「ねー、約束しよっ! 何処に行っても、どんな事があっても、必ず私達は助けて合うって!」


「そうしよう! メルもいい?」


「うんっ!」


「じゃぁ行くよー!」


「「「何処にいても、どんな事があっても、必ず私達は助け合うこと!!!」」」


リンナちゃんとイアンくんと手を合わせ、せーので上へ、ばっ、と手を掲げた。


「これで、ずっと一緒だね!」


「うん、ずっと一緒…!」


「うん、そうだね。ずっと。」


リンナちゃんとイアンくんと一緒に笑い合う。

それからしばらくして、お開きになり皆帰って行った。私は何故か胸がモヤモヤして眠れず、ベットに腰掛け窓から月を見ていた。


さっき、何で私はあんな事思ったんだろう? 旅とか、旅に行ったら二度と戻って来ないとか……。


それに私、あの光景知っている気がする。何処かで見た事ある気がした。

何でだろう…?

何で知っている気がするの…?


「いっ!」


うーん、うーん、と唸っていれば、突如、バツンっ! と音がして、凄まじい痛みと共に、沢山の記憶が流れ込んで来た。


思い出した…。

私の前世を…。

私は前世、日本人だった事。そして死んでしまってこの世界に生まれ変わった事。

この世界は前世、私が読んでいた小説《日が昇る頃〜勇者に見初められた乙女〜》の世界だって言う事。


これから魔王が復活するため、世界に数々の異変が起きる。

そして幼馴染みのリンナちゃんは、8年経って、16歳になったら勇者の証である痣が浮き出て来て、旅をする。イアンくんと共に。勿論私は弱いのでお留守番だけど。


あぁ、何で思い出したのだろう。二人は旅に出たら二度とこの村に戻って来ない。王都の方で二人は結婚して幸せになるからだ。いや、一度だけ村に戻って来る。子供を連れて来るだけで、その後は二度と村に戻って来ない。


小説にも「その後二人は結婚し、子供を連れて村に戻り、親に報告をしてから王都で末永く幸せに暮らしましたとさ」と書かれていたし、作者さんだって「二人は多分、子供を連れて村に行った後はずっと王都で暮らしたと思います」と言ってたから。


このままじゃ、私は二度と二人に会えなくなる。

そんなの嫌だ。

私が一緒に旅に行けず村に残る事になったのは、私が弱かったから。


なら、強くなればいい。役に立てるようになればいい。


皆の、そして好きな人の役に立てるように頑張ろう!



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