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加藤良介 エッセイ集

聖地巡礼のすゝめ

作者: 加藤 良介

このエッセイは、コロナ禍での不要不急の外出を推奨するものではありません。念のために。

 皆様、聖地巡礼に行ったことはございますでしょうか。

 もちろん、メッカやエルサレム、ローマにガンダーラのようなガチの宗教的聖地ではなく、アニメや漫画の舞台に使われた土地を廻って楽しむタイプの巡礼です。

 このタイプの聖地は、神社、仏閣、絶景にショッピングなどという特色を持たない地方都市でも、何かしらのコンテンツの人気に引っ張られる形で、ワンチャン観光資源をゲットできます。

 その結果、多くのファンの方がその町や地域を訪れるでしょう。

 次世代型の観光旅行ですよね。

 次世代型と言いましたが、この手の観光旅行の形式は昭和の御代から存在していました。代表的なのは「伊豆の踊子」の伊豆でしょうか。

 ただ、この時代のコンテンツ型の聖地は、元からの歴史の積み重ねが厚かったり、風光明媚だったりして、その作品専属の聖地という感じは薄いものが多いでしょう。

 しかし、今起こっている聖地化は少し違います。

 昔のアニメや漫画は、ここではないどこかが舞台であることが多かったのですが、最近のコンテンツは地続き感を大事にしているようなので、現実に存在する町や地域が舞台になります。

 そのため、聖地になりうる候補が激増いたしました。

 そして、それらはありふれた地方都市であったりしますが、気が付くと、日本中に数多くの聖地が誕生いたしました。中には住んでいる住人が知らない内に聖地化し、沢山の熱心な信者たちの巡礼風景に、首を傾げるという愉快な現象も起るようになりました。 

 さて、今回は私の聖地巡礼話を書かせていただきます。

 ではでは。スタート。



 前振りで、偉そうに聖地巡礼について述べましたが、実は私が行った聖地巡礼は一回しかありません。

 もう何年も昔になりますが、東京のお台場に等身大のガンダムが現れました。

 一般のニュースになるほどの話題をかっさらいましたが、私は関西人ですので、わざわざ東京まで見に行く気はありませんでした。しかし、友人の熱心なガンダムファンのお誘いを受けて、お台場に向かいました。

 東名ダッシュの日帰りで。

 これもある種の聖地巡礼かも知れませんが、私が主体的に動いたわけではないので、巡礼とは言い難い。

 巡礼とは誘われて行くものではなく、自分の意思で行くものだと考えております。

 そして、お台場ガンダムが大成功したさらに数年後、その会場の近くのショッピングモールに今度はユニコーンガンダムの等身大模型が展示されることとなり、同じ友人から観に行こうと誘われました。

 しかし、一回目のガンダムの時とは違い、いくらユニコーンと言えども、それは二番煎じで目新しさも無く、今度も日帰りだったため行く気がいたしませんでした。

 それは、友人も同じだったようで、近くの展示場で東京モーターショーもやっているから、それも一緒に見ようというプランを出してきました。

 私も車やバイクなどのガジェットが大好きなのですが、時代はエコカー全盛期。

 見なくてもモーターショウは環境重視のエコエコ・コンセプトカー祭りに違いありません。申し訳ありませんが、今一つ盛り上がらんのですよ。

 バイクはツーサイクル、車はロータリーこそ至上という環境破壊な私。



 気が進まない私は、この事態を解決する方法を思いつきました。それは、私の聖地巡礼を組み合わせてやろうという事です。

 丁度、ピッタリの場所がありました。

 私の行先は東京都中央区佃、その中でも最も行きたかったのが佃公園です。

 なんの、作品か思い当たる方がいらっしゃるでしょうか。

 もったいぶっても仕方ありません。

 私が聖地巡礼した作品は、当時ドはまりしていた、羽海野チカ先生著の将棋漫画「3月のライオン」です。

 東京に行くのなら、桐山君や川本三姉妹が登場する舞台を見てみるのも悪くないと思ったわけです。

 モーターショウは予想通りの残念な感じで終わり(何を見たのか思い出せません)、昼飯を味気ない吉野家で済ませた私たちは、予定通り佃に向かいました。

 カーナビがあるので迷わずサクサク目的地に着いたのはいいのですが、大都会アルアル。駐車場が見つけられない案件が発生。

 何分か付近をうろうろした後、なんとか車を止めることに成功。念願の佃に降り立ちました。

 佃は東京の中でも相当に古い地域で、徳川家康が江戸の住民の食料確保のために大阪から漁師を移住させたという漁師町。今でもその残影のような物が残っていました。

 私たちが真っ先に向かったのが中央大橋、通称ハープ橋。

 原作でもアニメでも印象的に使われていました。ここは絶対に外せないスポットです。

 桐山君の真似をして、いい歳したオッサンがハープ橋を全力ダッシュなどをやってみたりしました。

 友人らとハープ橋を渡ると(他のメンバーも3月のライオンのアニメを見ていました)、川沿いの佃公園で橋の下の鉄柵にもたれかかって、香子姐さんと同じポーズで写真を撮ったりしたわけです。

 後は、ひなちゃんが泣いていたのはあの辺りだとか、桐山君が住んでいるタワーマンションはあの辺りに違いないなど言いながら、写真を撮りまくり。

 更に原作再現しようとか言って「お前ちょっと隅田川に飛び込んでよ。背中からね。俺が歌うから」などという、オタネタで盛り上がったりしておりました。

 そして、公園からは隅田川を挟んでスカイツリーが見えました。

 すげー高い。

 インパクトは十分でしたが、なんとなく東京の街に馴染んでいない感がありましたね。二学期の途中から転校してきた少年少女がクラスの輪に入れず、少し離れた場所からクラスのみんなを見守っている的な。

 まぁ、パリのエッフェル塔も作られた当時はパリのにつけられた傷だとか言われていたわけですが、今ではパリ最大ののシンボルです。50年もたてばスカイツリーも東京の顔になるでしょう。んなことを考えながら、うろうろしたのです。

 正直、佃公園は何の変哲もない殺風景なベイサイドの公園で、何も知らない関西人が、日帰り強行軍でわざわざ行くような所ではありません。(佃の皆さんごめんなさい)

 しかし「3月のライオン」のお陰で特別な場所、正に聖地になったのです。

 思い入れのある作品の舞台と言うだけで、ありふれた風景も色鮮やかに輝くのです、

 コンテンツの力は偉大ですよね。

 人の視覚情報は、心象によっても大きく影響されることを見せてくれました。

 知識があると、同じ風景も違って見えるんですな。やはり、知識は大事ですね、それが例え漫画の知識であったとしても教養足り得るのです。

 いゃーえがった。

 そこから東名をぶっ飛ばし帰宅。家に着くころには、夜中になっておりました。

 私の東京遠征&聖地巡礼は大満足の大成功で幕を下ろしたのでございます。 



 結論。


 聖地巡礼に成功しましたが、今にして思い返せば佃の町でお昼ご飯を食べればよかったですね。 

 土地勘のないため手近で済ませたのは、もったいなかったです。私たちが佃で落としたお金って、駐車料金とコンビニで飲み物を買った程度でしたからね。どうせならお昼ご飯ぐらいは食べて佃の経済に貢献したかった。

 もう少し、下調べしてから行くべきでした。

 コンテンツによる観光資源も、地域経済と結び付ける努力が必要です。

 漫画やアニメで話題になった町や地域の自治体の方は、積極的に観光客を誘致すべきだと思います。はるばる関西からやって来る物好きもいることですし。

 皆様、お気に入りの作品の舞台に行ってみてはいかがでしょうか。周辺の下調べをしっかりしていけば、予想以上に満足できると思います。

 

 オラが街も大人気漫画の聖地にならねぇかなぁ。

 もしかしたら、どこかの自治体がアニメの聖地を目指して活動しているかもしれません。



               終わり

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


「3月のライオン」での羽海野チカ先生は、光の描写とが素晴らしいと思います。

目には見えるのに、漫画で描くのが一番難しいのが光りだと思うのです。

羽海野チカ先生の光の描き方がとても柔らかく温かい。

あとは、鬼の描き方が最高。

あの作品には数多くの鬼が出てきますが、それのバリエーションが豊富でカッコいい。

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