祝ランキング上位! 御礼小話・職場と酒場と男と女 1
皆さまのおかげでランキング上位に入ったので、御礼小話を書いてみました!
感想、評価、ブックマーク、そして誤字脱字報告も本当にありがとうございます!
*連載再開の前後で隣国の名前が変わっていたので、『ディシェンド王国』に統一しました!
ご迷惑おかけします!
今日もまた、ナナセは粛々と仕事をこなす。
いつも通り後輩達の午後の業務の割り振りを考えていると、エレミアが発言した。
「ナナセ。来月には、ディシェンド王国の第三王子殿下がまた来るわよね。今から内装なんかは手配しておいた方がいいと思うわよ」
今までの彼女ならば、楽な仕事がいいとか出会いが多い区画がいいとか、自分の主張ばかりしていた。建設的な意見を言うようになったのは最近だ。
「以前にお使いいただいた調度のままじゃ駄目なの? ご本人も喜んでいらしたけど」
秋口の逗留になるから防寒関係は入念に準備すべきと思っているが、今から手配をしなければならないほどの手間ではない。
ーーインテリアを秋色にした方がいいとか、そういうことかな?
不思議がって首を傾げるナナセに、エレミアは呆れたとばかり嘆息する。
「馬鹿ね。前回はディシェンド王国初代国王が好んだと言われているインテリアを取り入れたでしょ。でもヴァンルートス殿下はまだ幼いのだし、今のディシェンド王国内の流行を反映させた方がいいんじゃないかってことよ」
なるほど。
確かに最先端のものを採用した方が、より歓迎の心が伝わるかもしれない。
以前は事前情報も限られていたが、今回は二度目の逗留だ。専属侍女を務めていた後輩らならばヴァンルートスの好みを押さえられるだろう。
「でもエレミア、隣国の流行なんて分かるの?」
「フンッ! ダサ帽子を流行らそうとしたあんたと一緒にしないでよ」
「えぇ……普通に傷付くんですけど……」
愚痴をこぼしたところで、ナナセは我に返った。
ついいつもの調子で話してしまったが、今は業務の割り振りの真っ最中。後輩侍女達もいるのだ。
彼女達のほとんどは貴族家の子女なので、礼儀を欠くような振る舞いはしない。今も嫌な顔一つすることなく指示を待っていた。
ただ、口角が微妙に引きつっている。
「みんな……もう少し楽にしていいからね……?」
陰でも日向でも『ダサい』と言われ続けたのだ。
後輩達はナナセを気遣ってくれているのだろうが、いっそ笑ってもらった方がいい。
何なら遠巻きにされることが多いため、これをきっかけにもっと仲良くなれればと思っていた。
けれど教育の行き届いた後輩達は、首を振って微笑むばかりだ。
「恐れ入ります。ですがわたくし達のことは、どうかお気になさらず」
「そうです。壁か何かだと思っていただければ」
「というかごちそうさま……ゲフンゲフン」
「ご、ごちそうさま……?」
何を言っているのか分からなくて訊き返すも、誰一人として目を合わせてくれない。
エレミアに助けを求めてみても、彼女は訳知り顔で肩をすくめるだけだ。事情を把握しているふうなのに、なぜナナセには話してくれないのか。
ーーやっぱり私、みんなに嫌われてる……?
「ナナセ、いる?」
ネガティブ思考に陥っていると、遠慮がちに名を呼ぶ声が届いた。
この控えの間は専用のスタッフルームのようなものなので、ここまで来る者は限られている。
扉の向こうから覗いているのは、予想通りリオルディスだった。
「何かご用でしょうか、副団長様」
「忙しい時にすまない。午後の割り振りが済んだら、少し話せる?」
一線を引くようにあえて堅苦しい態度をとって見せたのに、彼はあくまで親しげ口調を変えない。
どうしても気持ちが浮き立ってしまうし、顔が勝手ににやける。職務中なのにリオルディスのことしか考えられなくなる。だから職場では同僚として接してほしいと、何度も頼んだのに。
「……火急の用件でしたら、すぐに伺いますが」
「あぁ、心配しないで。今夜の予定について話したかったのと、ただ顔を見たかっただけだから」
リオルディスは甘やかに微笑んだ。
最近はきっちり公私を分けて振る舞っていたはずが、ここに来てどういった心境の変化があったのか。むしろ格段に糖度が増しているような。
後輩侍女達が、声にならない悲鳴を上げている。
一緒に叫び出したい衝動に駆られながらも、ナナセは必死に表情を保ったのだった。
続きは明日更新する予定です!




