グールと買い物
よろしくお願いします
「……はぁ」
……いつもの景色。
今日ログインしてから三回目の死に戻り。その内二回はクリティカル攻撃によるもの。
運が悪過ぎる!運営、これはおかしいでしょ!
……心の中で叫んでいて段々虚しくなってきた。
そもそも、今日のレベル上げは元々おまけみたいなもので、本来の目的は夜への準備。
グールは昼のステータスが下がる代わりに、夜はステータス少しだけ上昇するから狩りが簡単になるだろうと思ったからだ。
攻略情報を見るに、普通なら日が落ちてからの活動は厳しいらしい。夜は視界が悪く一部モンスターも凶暴化するためだとか。グールにはスキル【夜目】があるから大丈夫だと思うが念のためにアイテム等を買って準備しておいた方が良いだろう。
用意するのはHPポーションとMPポーション、このゲームでの基本セットだ。どちらも街の中の売り場で買えるものである。
「取り敢えず、売り場に……」
この街は基本いろんなところにアイテムが売ってあるけど、その中でも街の中心に向かって通っている大通りのところを『生産通り』って言うらしい。
名前の由来はβテストの時に生産職の人が集まった売り上げを争ったからだそうだ。
そこでは沢山の店があるから自分にあった良い商品を選べるんだとか。
「ここか……人多いな」
思ってたより人がいる。
さすがにリアルの都会の通勤ラッシュ程では無いけれど賑わっているようだ。
「いらっしゃい!」
「こっち、こっち!薬草有るよ!」
「お得だよ!ポーション類、安いよ!」
改めて思う、賑やかだ。
いたるところから声が飛んでくる。
買いに行くのはHPポーションとMPポーションだけのつもりだけど面白そうな物なら買ってみよう。
「──ん?」
なんだこれ?アイテム名は……『ゴブリンのよだれ』?
名称 ゴブリンのよだれ
レア度 2
効果 一定時間【INT】-2
重量 1
ゴブリンのよだれ。ゴブリンの必死に生きようとする意志の表れである強い胃液を含んだもの。飲んだものは余りのまずさに思考力が低下する。菌やウイルスも多く含んでおり、毒物。一説にはアンデッドのような死と深く関係があるものは飲んでも平気だったらしい。理由は味覚がないためや、既に死んでいるから病気にならないなどと考えられている。
「これゴブリンのアイテムじゃん」
(死と深く関係があるものって書いてあるし俺が使ったら何か効果あるかも?)
「これは売り物ですか?」
俺のその言葉に返ってきたのは店員の凄い顔。
「……」
何だその顔。まるで信じられない、みたいな顔は。
「……あ、ああ。売り物だけど、買う人がいるとは思わなかった。ダメもとで置いたんだけど……」
「……買って良いですか?値段は?」
「確か10ゼニーだよ。そんな値段しか付けてない……ほぼゴミだし」
「10ゼニー……」
──値段低っっ!……でも確かに普通のプレイヤーはこんなのいらないか。
(それでも俺は買うけど)
「じゃあ、これで、ありがとうございます」
「……ありがとう」
店のプレイヤーは未だに戸惑いから抜け出せてないみたいで、言葉が返ってきたのが少し遅かった。
「……あ」
……ポーション類買うの忘れた……今から戻るのもなぁ。
「──別の店で買おう」
他にポーション売ってる店は……。
「あそこだな」
そこにあったのは左から、MPポーション、HPポーション、毒薬、痺れ薬、冒険者のフード、冒険者の小手、鉄の剣、鉄の防具、革鎧、ゴブリンの腰布
───ゴブリンの腰布?
名称 ゴブリンの腰布
レア度 1
効果 【AGI】-1
重量 1
ゴブリンが巻いていた腰布。当然汚い。逃げ遅れて死んだゴブリンの思いが乗っているためか装備者の素早さを低下させる。人間には使い道などない。
(腰布ってアレか?)
あの腰に巻いてる奴だよな。
ゴブリンのアレがついてたってことか……。
使い道はないって書いてあるけど俺はグールだし取り敢えず買ってみよう。
「これいくらですか?」
店員の反応がさっきと同じ。
「これ買うの?……本当に?」
「はい、いくらですか?」
「15だけど……もう一度聞くけど本当に?」
そんなに信じられないか?ゴブリンシリーズ
「本当です、お願いします」
「……わかった。どうぞ」
驚いているお姉さんにお金を渡す。
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます。またどうぞよろしく」
戸惑っているお姉さんとお別れの挨拶をしたとき大事なことを思い出した。
「またポーション買ってない……」
でもまた戻るのもなぁ、格好悪いし。
「仕方ない次の店で買うか……」
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