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「マリー。何か問題があるか?提案があるなら、どんなことでも良いから言ってほしい」
「悪くない案じゃが、決定打が無いと思うてな」
マリーの言いたいことはわかる。俺がエリュシオンを撃てるのかどうかで勝敗は大きく違ってくるだろう。
キマエラと戦闘になり、キャロルやミアが危険な状態になれば、きっとエリュシオンを発動できる。そう、ナツメは信じていた。しかし——次のマリーが放った言葉に、その考えは打ち崩された。
「わらわがおぬしらと一戦交えた時のことを覚えとるか?わらわのディオーネが生み出す紫煙でキャロルとミアは行動不能に陥ったじゃろ?あれは、煙に眠気や麻痺を与える毒をわらわが付加しておったからじゃ。もし、あの煙が致死性の猛毒だったらどうしていた?」
「……猛毒を付加することも出来るのか?」
「仮の話じゃ」
ナツメの背筋に冷や汗が流れる。
マリーが言いたい事の本質。それは俺がキャロルやミアの危険を感じた時点で彼女達が死んでいるかも知れないという事だ。その状態になってエリュシオンが発動し、仮に敵を倒せたとしても意味がない。意味が無いどころか俺は——正気を失うかも知れない。
「まあ、そうヘコむでない」
ナツメの強張った顔を見ていたマリーが口を開く。
「毒の話をしたのは、キマエラの尾である蛇の牙に強力な毒があるからじゃ。しかし、それが分かっておれば心構えも変わるというもの。そして、ナツメ。おぬしがきっちり〝仕事〟をすれば問題はないはずじゃ」
「ああ」
「くれぐれも外すでないぞ」
「分かってるさ」
外せば一巻の終わり。上等。死んでも外すものか、とナツメは腰に下げたエリュシオンを見やる。
「ねぇ、まだ話は続くの?僕、早くパンドラの箱見に行きたいんだけどな」
キャロルは若干、退屈した様子でナツメとマリーに訴えてきた。
「お前な……観光に来たんじゃ無いんだぞ!」
ナツメは呆れてものも言えなかった。この先に待ち構える存在は俺たちの生死を決定づける。万全を期さずして、生き残ることは出来ない。
しかし、そんなナツメを尻目に、マリーは広角を上げ愉快そうに微笑を浮かべている。
「ふふ、キャロルのいう事も一理ある。作戦をいくら立てようが実際に敵と対峙しなければ視えぬものもある。最悪、勝てそうになければ逃げればいいだけじゃ」
ナツメは「ふぅー」と息を吐き出すと、その場から立ち上がった。
「よし、作戦会議はこれで終わりだ。キマエラと遭遇した際の対応はさっき言った通りだけど、トドメは俺のエリュシオンで決めるつもりだ。マリー。念の為、聞いておくけどパンドラの箱を手に入れるにはキマエラとの戦闘は避けられないんだよな?」




