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報奨金を受け取るには、ロザリアにあるトレジャーハンター本部に出向しなければならないこと。
ただし、ポトラ村の住民から損害賠償を求められていることは伏せた。キャロルはきっと「なんで僕達が責められないといけないのか」と激昂するだろうし、ミアにも要らぬ気遣いをさせてしまうと思ったからだ。
「ロザリアかぁ!行くの久しぶりだよね。ロザリアにあるお店のアップルパイ美味しいから好き!」
「お前は食うことばっかりだな」
「そんなことないもん!」
プイッと、そっぽを向くキャロル。
横からミアが「私は大丈夫です!」と言いながら頷いた。
「じゃあ決まり。出発は朝の九時。トラブルがなければ、徒歩でも一時間ちょいで着けるし馬車は手配しない。ぶっちゃけ報奨金がどのくらい貰えるか分からないから、少しでも節約のが本音だけどさ。あ、節約と言えば部屋……一室だけにしちゃったけど、ミアは平気、かな……?嫌ならもう一部屋とるけど」
「そ、そんな……私にそんな気遣いは不要です」
ミアは首を横に振る。
「ミーちゃん!大丈夫だよ。ナッちゃんが変なことしようとしても僕がとっちめるから」
「何もしねーよ!てか、二人は二段ベッド使って良いから。俺はソファーで寝るし」
「私こそソフィーで寝ます!」と言ったミアにキャロルが抱きついた。
抱きつかれたミアが「ふにゃっ!?」と奇妙な声を上げた。多分「ひぃ!」と言う、叫び声の可愛い版だろうとナツメは解釈した。
「ミーちゃんは気兼ねしなくていいんだよ。女の子なんだし!うちのお兄ちゃんは頑丈だから床でも寝れるって」
「いや、俺も本当はベッドで寝たいけど、今はジェフから貰った前金しか無いしな。先のことも考えて常に節制しないと駄目だ。特にキャロ。お前もロザリアに行ったからってアップルパイ食えると思うなよ!!」
「えぇ!それはやだ!絶対ヤダ!」
嘆きの声を上げるキャロルを無視し、ナツメは「明日も早いし、そろそろ寝ようか」と呟いた。
ベットの軋む音に、ナツメは目を覚ました。瞳を開けるとベッドにミアの姿がない。
——さっきのはドアを開閉する音か。
ナツメは寝ぼけ眼でソファーから起き上がる。窓から青白い月光が差し込み部屋をほんのりと照らしている。
下段のベッドでスゥスゥと寝息を吐いているキャロルを尻目にナツメは室内を出る。
宿の正面玄関を開けると、木材で出来たテラスにミアがいた。彼女は夜空いっぱいに宝石のごとく輝く星を見上げていた。
絵になる光景だな、とナツメは思いながらミアに声をかけた。
「ミア、寝付けないのか?」




