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あの火球はエレメントを触媒にして生み出しているのだ。
詳細は知らないが、エレメント原石に特殊な加工を施すことで、火・水・土・風などといった様々な自然エネルギーを任意で発生させることが出来るらしい。
いわば魔力変換だ。
ならば誰にでもエレメントの力が引き出せるかといえば、そうではない。
宝具と同じく、エレメントの力を引き出せる資質が必要とされるのだ。
「フレアボール!!」
ジェフがロッドを振りかざすと、火球は正確無比に異形種めがけて飛翔し直撃した。ゴーストは、苦悶に満ちた金切り声をあげる。
「トドメ!」
アゲハが鞘から両刃のロングソードを抜き、ジェフの火球で弱り切ったゴーストを切り裂いた。ゴーストを構成していた黒煙は霧散し、消え去っていく。
「一丁上がり!」
アゲハは得意げな表情を浮かべながら、剣を鞘に収める。
「キャロル!」
ナツメは彼女のそばへ駆け寄って行った。
「バカ!無闇に突っ込む奴があるか!」
「えへへ。ごめんね……ナッちゃん」
ナツメの真剣な表情に気圧されたのか、キャロルは少し反省したように舌を出して謝罪する。
「木偶の坊みたいに、突っ立てるだけの人よりはマシじゃない?」
「悪かったな。木偶の坊で。お前もジェフがいたからこそ、ゴーストを倒せたんだろうが!」
「私の剣さばきを見てなかったの?ゴーストにトドメ刺したんは私だから。あなたこそ、腰にぶら下げてる短剣とリボルバーは飾り?」
「その通り。飾りだよ。俺は異形種退治の戦士でも無ければ、パラメリア軍の精鋭兵士でも無いんだよ!」
——そうだ。俺が腰に差しているスティレットは、武器として携帯しているわけでは無い。護身用ですら無いかもしれない。
発掘調査する際、遺物の泥を取り除くなどの用途に使用するのだ。リボルバー式拳銃『エリュシオン』に至っては〝お守り〟に近い。
護身用には、リュックに近年開発されたボトルアクション式のショットガンを入れていた。
「二人とも落ち着いて。ナツメの言う通り、俺たちはトレジャーハンターであって怪物狩りの専門家じゃ無い。よって異形種と遭遇しても、極力戦闘は避けるのが最善策だ。キャロルも、そこのところ分かるよね?」
ジェフが三人を順に見ながら、抑制した口調でたしなめる。
「……ごめんなさい」
キャロは素直に自分の非を詫びた。殊勝なことだとナツメは思ったが、同時に先ほどアゲハに言われた皮肉を反芻して、内心へこんでいた。
彼女が言うように、自分はゴーストに対して何の対処法も持ち合わせていない。
アゲハの所持しているロングソードは、特殊な金属で作られた剣で、エレメントの力が付加されているらしい。
だからゴーストに対しても、ダメージを与えることが出来たのだ。
「ゴーストも退治出来たことだし、そろそろ休憩はおしまいにして先を急ごう」
ジェフの言葉に、ナツメ達は気持ちを切り替え、ヤギウの大木に向かい歩き出した。




