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 翌朝の八時、身支度を済ませたナツメとキャロルは宿を引き払い、ジェフと落ち合うべく街の東門に向かった。

「ナツメ、キャロル!」

 すでに東門に来ていたジェフが俺たちに手を振る。隣にはアゲハが、ぶっきらぼうに突っ立っている。

 ジェフは革製のズボン、細身のチュニック、褐色かっしょくのウール製マントを羽織り背中にはナツメと同じく発掘道具を入れたリュックを背負っていた。腰からは金属製の短いロッドが見える。

 アゲハはというと、おへそが見えそうなタイトなシャツに、太ももが見えるデニム地のハーフパンツ、腰には剣のさやが掛かっている。

 ——寒くないのだろうか?とナツメは思ったがリュックに外套を入れているのかも知れないと思い直した。

 俺とキャロルは昨日と同じ服装だが、一点、キャロルはスカートの下に、膝丈のレギンスを履いていた。

「ジェフ、おはよう。待たせたか?」

「いや、俺たちもさっき来たところだ」

 そこにアゲハが割って入ってきた。

「私には挨拶なし?」

「おはよう……アゲハ」

「おそ!挨拶遅い!」

「今、しただろ……」

「なんでジェフよりワンテンポ遅れて挨拶するの?いの一番にでも私に挨拶すんのが常識でしょ」

「いつから常識になったんだよ……」

「まぁ、なんでも良いじゃん。挨拶なんか。それより早く出発しようよ!」

 二人の口喧嘩にキャロルが間に入る。

「なんでキャロルが仕切ってるの?キャロルのくせに」

「仕切ってないじゃん!僕はつまんないことで言い争っても、しょうがないと思って言っただけだよ」

 その時、ジェフが手の平を叩いた。

「はいはい、みんなそこまで。馬車を待たせてあるんだ。もたもたしてたら置いていくぞ」

 彼の言葉にナツメ達は一斉に口を閉じる。アゲハも渋々といった様子でそっぽを向いて黙り込んでいた。ジェフは場を取り仕切ることが上手い。ナツメはそうしたことが苦手だった。

 ジェフはナツメにとって憧れの存在であり、同時にトレジャーハンターとして目指すべき目標である。彼に少しでも近づけるように、今回の仕事を通じて多くを学びたい。

 ナツメは湧き上がる高揚こうよう感を抑えながら、ジェフが手配した馬車に乗り込んだ。

 ヴィエジャの森はキーロフの街から馬車で一時間ほどの距離にあった。しかし森の中までは馬車を駆る業者も入るのを嫌うため、森林地帯は徒歩での移動となる。

 業者が森に入りたがらないのは、平野部に比べてヴィエジャの森林地帯の方が遥かに異形種のエンカウント率が上がるからに他ならない。ナツメ自身、ジェフたちが居なければこの森に発掘調査しに来ないだろう。

 森の入り口周辺で馬車を降りたナツメたちは、ジェフの地図とコンパスを頼りにヴィエジャの森にわけ入った。

 ヴィエジャは隣国と接するように広がる原生林で、落葉樹であるオークの樹々が辺り一面を鬱蒼うっそうと埋め尽くしていた。

 地面はビッシリと緑の草が生い茂り、岩石はコケに覆われている。

 羊皮紙ようひしに描かれた地図を見ながらジェフがナツメ達を先導する。

 ここに来る途中で聞いた話によると、目的地であるヤギウの大木までは徒歩で二時間程度らしい。

 大木の近くにポドラという村があり、発掘に時間がかかるようなら、その村で宿を借り遺跡調査の拠点にする予定だという。

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