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 ——いや、違う。俺は明確な目的があってトレジャーハンターになることにしたんだ。弱気になってどうする?

 ナツメはネガティブ思考に陥りそうになっていた自身にかつを入れた。

 アルバの食堂に到着すると、店内はすでに人でごった返していた。食堂は広々とし、二階建てで半分が吹き抜けの構造になっている。

 天井からはランプが吊るされ、店内を明々《あかあか》と照らしていた。

「ナツメ!」と俺を呼ぶ声が、奥のたく側から聞こえる。

 木製で出来た円形の卓から、キャロルがこちらに手を振っている。彼女の隣には二人の男女が座っていた。

 男の方はジェフだ。俺がトレジャーハンターになる際、世話になった人物であり先輩でもある。

 彼はナツメと違い、整った顔をした爽やかな好青年で、人当たりも良かった。

 もう一人の橙色の髪をミディアムに伸ばした女性はアゲハ。彼女も同じトレジャーハンターだったが、正直、俺は彼女が苦手だった。

「あら、ナツメ。相変わらず辛気臭い顔してるわね」

 三人の元にやってきたナツメに、アゲハが冷めた視線を投げかけた。

「辛気臭くて悪かったな。てか何でお前がいんだよ、ここに」

「何で、私が居たらいけないわけ?あなたにとやかく言われる筋合いはありません」

 会った瞬間からイライラしてきた。——そうやって突っ掛かってくるとこが嫌なんだよ!

「まぁまぁ、二人とも。ナツメ、今日もリバ山で遺物発掘してたんだろ?お疲れ様。とりあえず、みんなで乾杯しよう」

「そうだよ!ボク、お腹と背中くっつきそう。早く夕飯食べよ!」

 ジェフとキャロルが二人を仲裁し、席に着かせる。テーブルには、すでに肉料理やビールなどが並んでいた。

 ジェフがとう製のジョッキに入ったビールを掲げ「乾杯」と音頭を取る。

 アルコールが飲めないナツメとキャロルは、無糖の紅茶をちびちびとすすった。

「ねぇ、ビールって美味しいの?」

「美味いよ」

 キャロルの問いにジェフが答えた。

「ふーん」

「お子ちゃまには分からない味よ」アゲハが毒づく。

「別に分かりたくないし良いもん。アルコールの匂い……嫌いだし」

「あと、四年経てば、キャロルちゃんにもビールの美味さが分かるようになるかもね」

 ジェフは穏やかな笑みを浮かべる。

「なぁ、ジャフ。確か、イエラ砂漠に残された古代遺跡の発掘に行くって言ってたよな。収穫はあったのか?」

 ナツメはライスをほうばりながら、ジェフに尋ねた。

「いや……実は、その件なんだが。中止になった」

 ジェフの顔が急に険しくなる。

「……中止?何でまた」

「もともとは俺も他のトレジャーハンター達に誘われて、合同発掘隊の一員としてイエラ砂漠の遺跡発掘に参加したんだが、途中でとんでもない異形種に遭遇してな」

 ジョッキの残ったビールを飲み干すと、ジェフは「発掘隊の半数以上が殺された」と付け加えた。

「……なっ」

 ナツメは絶句した。ジェフは俺より三年も歴を積んでいるトレジャーハンターで、二級ハンターでもある。

 俺のように、誰も発掘作業などしないリバ山でコツコツ遺物を漁っているド底辺のハンターではない。

 ジェフと合同で発掘調査していた連中も、ほとんどが二級以上のトレジャーハンターだろう。

 それが、ほぼ壊滅に近い状態に追いやられ撤退するなんて……。

「まぁ、砂漠地帯での発掘に際して、準備不足だったのも要因ではある。だが、異形種たちが以前より勢力を増しているのは間違いない。そこで話は変わるんだが、ナツメに頼みたい仕事があるんだ」

「頼みたい仕事?」

「ああ、ヴィエジャの森にヤギウ王の大木と呼ばれる遺跡があるんだが……。その遺跡発掘をナツメに手伝ってほしいんだ」

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