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プロローグ

 二十一世紀から数十年が過ぎた地球。人類は繁栄の代償に、水、石油の枯渇こかつによるエネルギー問題やオゾン層の破壊、人口爆発、北極圏の融解ゆうかいによる水位上昇など様々な環境問題にぶち当たっていた。

 そうした問題に対し人類は、リサイクルはもとより、電気や水素、風力、太陽光などの自然エネルギーを上手く活用し、世界各国が地球と共存しようと努力した。

 結果、徐々にではあるが地球は致命的なダメージを回避しつつあった。


 数年後、一人の考古学者がとある古代遺跡で『箱』を発見する。箱の名は『パンドーラー』。

 発見した考古学者は歓喜した。彼は、以前、自身が発掘した遺物が捏造品ねつぞうひんと指摘されたことで、考古学会から追放された経歴があったのだ。

 この箱が、かの有名なパンドーラーの箱だとすれば、私はまた世間から賞賛を浴びるだろう。

 伸びきったひげをさすりながら、男は狡猾こうかつな笑みを浮かべた。

 豪奢ごうしゃな装飾が施された箱に、手を伸ばし触れた瞬間、妖艶ようえんな女性の声が鐘のように脳内に鳴り響く。

〝さぁ——箱を開けよ〟

 冷や汗が滝のように流れ、全身を湿らせる。

 ——なんだ?このおぞましい感覚は。傲慢ごうまん貪欲どんよく・嫉妬・怒り・色欲・大食・怠惰たいだといった、人間が持つ負の思念が一斉に襲いかかってきたかのよう。

 男は震える両手で、箱のふたに手をかける。

 もし蓋を開けたら——全てが終わる。

 そんな予感が脳裏をかすめるが、飽くなき探究心、好奇心が恐怖を凌駕りょうがした。

 蓋を開けた瞬間、漆黒の光が、次から次へと天高く飛び出し始める。

「……こ、これは」

 男が呻く。と同時に先ほどの声が、再び鼓膜を震わせた。

 〝我らを解き放ってくれたこと、礼をいう。褒美に汝の望みを叶えてやろう〟

「望み……?」

 〝そうだ。お前の望みはなんだ?なにを願う〟

 妖艶な声色で、自分に語りかけるモノは、焦るでもなく頭の中にとどまっている。

 男は乾ききった喉から、絞り出すように叫んだ。


「私の……私の願いは——っ!!」


©️綾瀬まひろ2020.

この小説に掲載されている文章の著作権は作者綾瀬まひろに帰属いたします。許可なく無断転載、使用、販売を禁止します。

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