ガラクタ姫の国
私の治める国は、最初は真っ白で何もない場所だった。
今ではガラクタの山がうず高く積まれて、果ては見渡せない。ここが私の【ガラクタ王国】。私の中の不要なものが、ここには捨てられていく。だから、感情という名のガラクタは日々増えるばかり。
ほら、また空から落ちてきた。
腕が取れかけた人形が私の上に降ってきた。
私は【ガラクタ王国】の姫として、彼女を迎え入れなければならない。
ようこそ。よく来てくれました。今まで頑張ったね。ありがとう、と。
ここは必要なくなった感情の吐き捨て場。けれどこの感情たちが頑張らなければ、外の私は、今存在していない。
【ガラクタ王国】に屹立する山々は、すべて【私】。すべて私が積み重ねたもの。今の私を形作るもの。
無碍にはできない。
「ようこそ。はじめまして私。私はガラクタ姫よ」
「はじめまして、ガラクタ姫の私」
彼女はなんの感情だろう。何を思った私なのだろうか?
私は、腕が千切れそうな彼女に問いかけた。
「あなたは誰?」
「私は嫉妬。友達が羨ましくて生まれた。でも私は受け入れるために私の心を割いたの」
「そう。だから腕が千切れているのね。こっちへいらっしゃい、治してあげるから」
きっと痛かったでしょう。つらかったでしょう。この痛みは私にしか理解できない。そして、私にしか癒せない。
私は彼女を抱き、ガラクタの山から裁縫箱を取り寄せた。
少し時間が要りそう。治っても歪な形になってしまうかもしれない。この傷口は凄く深くて、広いから。
だから【ガラクタ王国】の民になれるまで、ゆっくり治そう。
「もし治ったら、ここから出ていけるかもしれないわ」
彼女は確かに嫉妬だった。
でも、嫉妬は正しくあれば、目標を追うための力にもなってくれる。
「本当? だったら、私、ここで頑張るよ」
そうよ、頑張れ私。
【ガラクタ王国】とガラクタ姫としての私は、そのためにあるのだから。