第6話〜おっぱいとマシュマロはどっちが柔らかいのか〜
えーと、ちょっと整理しまーす。
まず、昼間の厨二おっぱいでか女がしでかしやがったこの俺の右手の紋章が、あいつが言ってた通りマジの契約の証で、なんか知らないうちに神様の戦争みたいなのに俺が巻き込まれてて、今目の前にいるこの厨二野郎がマジの能力使いで、話の流れから察するに、契約者同士で殺し合いみたいなのしてる〜、俺死んじゃう〜。
うん、わけわからん。
とりあえず逃げないと危ないってことがわかった。
ここはうまく隙を作るしかねえ!
「よしよし、話は分かった。
お前も神の代理者なんだな、あああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!
あんなところにとびきりかわわいい妹がいるううううううううう!!!」
俺はいきなり男の背後に指をさして大声で叫んでやった。
フッ、我ながら完璧だ。
誰でも背後に妹がいると言われれば振り向くに決まっている。(バカ)
よし、今のうちだ!!!
ダッシュで左手にある公園に走る!
家に帰るにはこの道を走るのが早いのだ!
が、
「あっつ!!」
突然世界が真夏になった。
夏というよりもサウナのようなそんな暑さ。
それもそのはず、一瞬で目の前を炎が塞がれたのだ。
「残念だったな。
我が邪悪なる炎からは逃れることはできない」
男が右手を横に薙ぐ。
すると俺の目の前に現れた炎の壁の両端が伸び、公園内を円を描くようにして、俺と男を囲った。
逃げることができなくなってしまった。
「我が名はジン。
我が魔眼を持って貴様を裁く」
「ち、ちょっと待った!タイム!!後ろに妹がいるって嘘ついて悪かった!謝るからこの炎解いてください!」
「いや、あんなものに引っかかるわけがないだろう」
「え?」
バ、バカな!
こいつまさか妹が好きじゃないのか!!?
本当に人側なのか!?
く、どうやら逃げる前にこいつに確認しておくことができたようだ。
俺は男の動きに注意しながら、おそるおそる口を開く。
「なあ、ジンだっけ?
あんたに一つ書いておきたいことがある」
「なんだ?」
「お前、妹に「おにいちゃん♪」って呼んでほしくないのか?」
「…………」
「…………」
あれ?
なんか世界の時間が止まった気がする。
なんでだろう。
男は思考しているのか、目を見開いたまま、黙り込んでいる。
やがて、
「残念だが、俺にそんな腑抜けた願望などない」
「……っ」
俺は絶句した。
うそだろ……そんな……
妹に「おにいちゃん♪」て呼ばれるのは男共通の夢じゃないのか!!?(バカ)
俺は地面に膝をついて落胆した。
「なんでだよアンタ!妹好きじゃねえのかよ!妹だぞ!!妹のおっぱい揉みたいだろうが!妹とセ◯クスしたいだろ!!そう言えよ!!!妹とセッ◯スしたいって!!!」
「…………」
男が再び黙り混む。
「どうやら、貴様と会話するのは時間の無駄のようだ。
悪いが、貴様にはここで死んでもらうとしよう」
ジンが腕を天に上げる。
手には小さな火の玉。
野球ボールのようだった火の玉がどんどん巨大化していく。
そして、人1人を簡単に覆い隠せるほどの大きさになった瞬間、ジンはそれを俺に投げつけた。
あ、ダメだ。
これ死ぬやつだ。
なんで妹に「おにいちゃん♪」て呼んでほしいって思ってるか確認しようと思ったんだろう。
確実に他に説得したり、命乞いとか、そもそも自分は知らないうちに巻き込まれてたんだって言えばもしかしたら助けてもらえたかもしれないのに。
そもそもあの和服おっぱいでか女が悪いんだ。
勝手に俺の目の前に現れて、勝手に厨二くさい契約なんてしやがって。
ああ、おっぱい大きかったな。
密着された時のおっぱいの柔らかさは天にものぼる素晴らしさだった。
あれが俺の人生初にして最期のおっぱいタッチか。
こうやって死ぬならちゃんとおっぱい触っとくんだった。
肘に触れただけでマシュマロのようなあの柔らかさってことは、手で鷲づかみしていたらどんなにフワフワだったんだろうか。
いやいや、俺は妹を愛し、妹に生きる男だ!
あんなおっぱいと容姿だけが自慢の女なんか興味ないね!
でも……あの娘……
整った顔立ちに、雪のように透き通った白い肌、夜色の艶やかな黒髪ロング。
素直な性格なのか感情がすぐに顔に出てコロコロ表情が変わる。
怒ったり、笑ったり。
ほんの数分しか会ってないけど……
きれいだったな。
ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
灼熱の炎が呻き声を上げながら俺を飲み込む。
炎の中は灼熱地獄。
手足は溶けて、骨も溶ける。
自ぶんジシンさえもトケテいク。
燃エテ燃エテ燃エツクス。
じぶんノいしきサエモ、トケテイク。
アァ、ジブンガキエーーー
「しっかりしなさいよ、バカ!」
「……っ」
モウロウとしていたいしきから覚醒した。
あれ?俺は炎に焼かれてシンダんじゃ……
「ふざけないでよ!
アンタはあたしの契約者なんだからこんなところで死んでもらったら困るのよ!」
目の前に俺の胸ぐらを掴んで怒鳴っている和服美少女がいた。
どうやら俺は地面に倒れていて、それを和服美少女が馬乗りになっているようだ。
相変わらずキレイな顔をしているな。
思わず見惚れてしまった。
「なんで俺……生きているんだ……」
我に帰り、そう言いながら目線を動かす。
和服美少女の顔以外に目に映るのは炎。炎。炎。
たしかに炎に包まれているようだ。
でも、柵のようなものが地面から突き出ていて、上で交わっており、鳥かごの中にいるような状態になったいた。
炎はその鳥かごを囲うように燃えているため、中の俺たちには被害はない。
「よかった、意識はあるようね」
「ああ、なんとか。
キミが助けてくれたのか……?」
まだわけがわからないが、とりあえずはこの少女が助けてくれたのだとわかる。
「ええ、あたしのかごの中にいる限りは炎は防げるわ」
「そっか、一応ありがとう」
「お礼はいいわ。
それよりも、初めてだったらゴメンね」
和服少女の顔が近づく。
「あたしも初めてだからおあいこってことで」
え?何が?と聞き返そうとしたが、言葉が出なかった。
出なかったというよりも出せなかったという方が正しいだろう。
なぜなら、俺の唇は目の前の少女によってふさがれてしまっていたからだ。