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記憶のない英雄  作者: パシフィック0
11/13

6-3 @町で 娘の友達

ヒデオとシャンプトは町長の娘を探していた。


「シャンプトさんて、優しいんですね。」

ヒデオがシャンプトに突然言い出すものだから、シャンプトもどうしたものかと思っているようだ。


「どうしたんですか、急に?」

「いや、もし僕なら頼まれて探すことはあっても、自分から探しに行きますなんて言えないな、って。」

確かに作者的にもどうしてシャンプトがそう言ったのか不思議に思っていた。


「ヒデオさんて、どうでもいいこと考えるんですね。フフフ。」

シャンプトが昨日ぶりに笑いをこぼした。


「なんで笑うんですか!?」

ヒデオがシャンプトに抗議を申すが、シャンプトがそんな話に耳を傾けるわけでもなく、


「どこにいるのでしょうか、メイちゃんは?」

「(話、そらしたな!)」

作者とヒデオさんの意見が一致しましたとさ。



二人は町の中心からだいぶ離れたところまで来ていた。

「ヒデオ様、メイちゃんがいそうなところに心ありませんか?」

「さっきぶつかっただけでわかったら、それこそ俺何者なんですかw」


周りには寒冷地らしい針葉植物が増えてきた。

夏になりかけて過ごしやすくなってきたとはいえ、まだ風は冷気を含んでいる。

バリオンリンス邸でシャンプトに用意してもらったシャツに着替えてなければ、元から着ていた血なまぐさい半袖の服では風邪をひいてしまうかもしれない。


「それにしても、町の中心地で聞いた情報によると、メイちゃんって子は町のはずれに走っていったらしいけど……、こんなはずれまで本当に来たんでしょうか?」


中心地からだいぶ離れ、家も見なくなってきた。

町の一角というよりは、森の一部というほうがふさわしいところを歩く二人。

銀髪ロングの美少女と、そこまで悪くない顔立ちの健全だろう男子が2人で歩くナゾ!!

二人にその意思がないのだから、恨んでも仕方ないのだが。


とまぁ、そんな感じで、家なんておろか小屋や人工物まで少なくなってきた森の中、先ほどまでところどころに点在していたガジアルの切り株さえもなくなってくるほど奥地に踏み込んでいた。


「本当にここ、町なんですか? 明らかに人の気配どころか痕跡もありませんよ。」

心配になってきたヒデオがシャンプトにそう尋ねる。

「たぶん、もうずいぶんと前に町は出ていると思います。ここは町の近くの森の中というのがふさわしいかもしれません。」

冷静に答えを返してくれるシャンプトであった。


「シャンプトさん、メイちゃんほどの幼い子供が、こんな町から離れたところに走ってきたと考えるほうが不自然です。きっと、どこかで見落としたんですよ。もう一回町で聞き込みからし直すべきです。」

ヒデオがシャンプトに論理的最適解を提案するのだった、が、


「ヒデオ様、」


シャンプトが何か言いたげな顔でこちらをまっすぐに見つめた。


「なんですか?」


「私たち人間は知恵を持っています、力を持っています、動物の中では比較的大きい骨格を有したほうに入るとも思っています。しかし、それなのにどうして争いという非合理的手段をほかのどの動物たちの中で最も激しく大規模に行うのでしょうか?

私たちは、自分たちのすばらしさを過信してしまうからです。

私たちはその素晴らしさによって答えに最も近い答えを常に模索して見つけてきました。ですが、それは『近い』に過ぎない。決してその答えではない。

人間が見つける答えは確立的には最も高いのかもしれないが、それも確率でしかない。

いくら確率が百に近づこうと、百でないのならその通りになるかは運でしかない。


ヒデオ様、私たちにできることは目の前にある課題を一つ一つ解決していくことだけです。


・・・・・・

すいません、力がこもりすぎてしまいました。」


昨日からのシャンプトからは想像もできないような威厳を持った声でそうヒデオに諭すのだった。


「いやぁ、僕こそなんか悪いこと言っちゃったなぁって。

 それにしても、これからどうやって探せばいいんでしょうか?」

シャンプトに諭され、ここでこのまま探さないとシャンプトさんを怒らせてしまうと感じたヒデオは頭を抱えていた。


「祈ってみればいいのではないでしょうか?」


シャンプトは言った。


「へ?」


唖然となるのも仕方ない。この状況で祈って何になるというのか。まったくそれで世界が平和になるのなら神様だって苦労はしないのに。


「だから、私たちで祈ってみればいいのではないでしょうか。ほら、ヒデオ様も手を合わせて。」

シャンプトは何もおかしいことは言ってないよともごとく胸の前で手を合わせて握りしめた。これが、シャンプトの祈りのポーズなのだろう。

ヒデオも、それをまねするのかの如く手を胸の前で握りしめた。

「(こんなことでメイちゃんが出てきたら苦労はしないのに)」

当然現れるはずもなく、静かに時間だけが流れている。


……

ピヨ、ピヨ、ぴよ


どこで泣いているのだろうか。どんな鳥だろうか。彼はそんなどうでもいいことを考えていた。

「出てきませんね。」

「ヒデオ様の祈りが足りないのではないですか?ほら、手をほどかずに一心に祈り続けるんです。」

「でも…」

「できないんですか?」

ヒデオの言葉を遮るようにそういうシャンプト

「わかりました、できますよ。」

こうもせがまれたのではヒデオに対抗策はないのだった。


シャンプトに言われるがまま、ヒデオは再び手を胸の前で握りしめ祈るのだった。

先ほどと全く同じポーズだが、先ほどと違いそこには明確な願いがある。


“メイちゃん出てきて”


彼は必死に祈った。

たとえ、シャンプトに言われたからであろうとその行動に嘘は一つもない。

ほぼ純粋な願いで祈るのであった。


と、変化はおのずとやってくるのだった。


「ヒデオ様、右腕が光っています!?」


「え?」


「だから、ヒデオ様の右腕が光を発しています!?」


「そんなこと…ええええええええええええ!??!?!?」


言葉通りヒデオの左腕が突如走った線に沿って光っていた。



「なにこれ!?」


「私に聞かれてもわかりませんよ!?」


そんなことをぼやきながらも彼には見覚えがあった気がした。

昨日、自分を助けるために散っていった“癒し”の英雄、シューイがその左腕に刻んでいた入れ墨と似ていた。


二人はメイちゃんのことなど今は脳裏になかった。



だが、光は収まりを見せていた。

「え、光が消えていきますよ。いいんですか、これ!?」


「わかりませんって私には!?」


光は徐々にその輝きを失っていき、とうとうその輝きを失っていた。


「消えた…」

「消えましたね……」



ピヨピヨ

どこかで鳥が鳴いている声がする。こんな声の鳥は一体何であろうか。



「あんたたち、何してるのよ!」


さっきと変わらないはずのその場所に一つの変化が訪れた。

「メイちゃん、  だよね?」


いた。


いたのだ、探していたその子が。


「どうして私のことを知っているの。私の町の者ではないだろうに。」

メイは不思議そうにヒデオのほうを見たのだった。

「どうしてって、さっきカフェでぶつかったし、それに君を探してこんな森まで来たんだし。」

「そうか、さっきのあのぶつかった男だったのね。(* ̄- ̄)ふ~ん」

何やらエラそうな態度をとり続けるメイであった。

(つーか、作者的にもわがままな子供はあつかいづらいんですけど~)。


「メイちゃん、町に戻る気はないの?」

今度はシャンプトがメイちゃんに聞いた。


「お父さんが認めてくれるまでは帰らないんだからね。」

あくまで、メイちゃんは徹底抗戦のつもりのようだ。


「あのさ、お父さんも心配しているし早く帰ろうよ。俺は何があったかはよくわからないから的外れなこと言うかもしれない、

さっきは無理だったかもしれないけど、メイちゃんがお父さんに心の底からお願いしたらきっとお父さんもわかってくれるよ。」

ヒデオがとうとう攻撃に出た。

まぁ、この程度の攻撃でどうこうできるほど、少女は生半端な覚悟ではないらしいが。


「ふん、お父さんが“いい”っていうはずないもん。あのよそ者嫌いなお父さんがそんなこと言ったら、それこそ、この国に異世界人でも攻めてくる日だわ。」

語尾を強めて行ってくるそのたたずまいはさすがとういう言葉がふさわしいものであった。


ヒデオもこれ以降の攻撃手段は持っていなかった。

だから、また頭を抱えて悩むのであった。

そんな時は決まってシャンプトがフォローをしてくれるのだ。


「メイちゃん、じゃぁあなたの友達っていう子に合わせてもらえないかしら。」

シャンプトはそう切り出した。

なにか決定打を持っているわけでもない。しかし、何もしないでこのまま誰かを待っていられるほどシャンプトは我慢強くないのだ。また、それがシャンプトの強さともいえるのだが。


「どういうつもりかわ知らないけど、面白いわ。ついてきなさい。」



メイはそういうと森をさらに奥のほうへ進み始めた。

森もだいぶ奥地のほうまで来てしまった。

差し込んでくる光はほとんどなく、光の届かない木の下でコケがはびこっている。




歩き始めて10分といったところか、彼らの目の前には一つの家というには小さすぎる小屋が待っていた。

木で作られた外壁、森の木々のギャップからかろうじて差し込んでくる光はその小屋を少しだけ明るく上から照らしていた。


「入りなさい。」

少女に先導されるまま少年少女3人が入るには小さいのではないかと思われる小屋の中に。

「あなたが、メイちゃんの友達…。」

そこにいたのは、頭のうち目があるラインを横に包帯で3回ほど巻き付けて、体中から出血したのであろう擦り傷や切り傷を付けた少女であった。

服装はその傷から出たのか血の匂いをたっぷりと染みつかせ、ところどころ破れこの地で冬の寒さをしのぐことは無理ではないかと思わせるほどの損傷ぶりだった。


不思議なことにヒデオが血をしみこませた服と造りが似ていたことに気づいたのはシャンプトだけなのはヒミツである。


「ねぇ、名前はなんていうの?」

ヒデオがその少女にたずねる。


「ひゃっ!だれか、いるの!?」


予想外の反応にヒデオがたじろんだ。


「ヨーコ、落ち着いて。あなたの敵ではないといっているわ。」

「メイ、そこにいるのね。よかったわ。」

ヨーコといわれた少女はまるで目が見えていないのかのようにメイのその声に大いに安心を得たのだった。


「メイちゃん、ヨーコさん(?)はどうしたの?」

ヒデオが事の成り行きを知っているであろうメイにたずねた。



「ヨーコはね、目が見えないらしいの。」


先ほどの反応はそれによっておこったものだったのだ。


「それもね、昨日突然目が見えなくなったらしくて、今も恐怖におびえているの。お願い、ヨーコをどうにかしてあげて!」


ヒデオは悔しさで唇をかみつけていた。

少女の切実な頼みを真に受け止めても彼には何もしてやれることはない。

彼は自らの無力感を改めて実感したのだ。

昨日はシューイに、そしてシャンプトやバリオンリンスに、何かしてもらわなければ何一つどうにかすることもできない自分の弱さを。


「ヨーコさん、どこの町の出身なの。この町の人というわけでもなさそうよね。」

シャンプトがまだ少しおびえているヨーコにたずねた。

「あなたは‥‥」

明らかに焦点が合っていないヨーコの顔の向きに合わせてシャンプトが向かい合うようにしゃがんだ。


「私の名前は、シャンプト・リンス。この町の近くに住んでるバリオンリンス様のメイドだわ。私は今あなたの目の前にいるわ。大丈夫、あなたを苦しめたいのではない、あなたの力になりたいの。」

その対応は寒さにおびえる捨てられた猫を優しく抱きかかえるような温かさがあった。

その温かさに抱かれるかのように、ヨーコも気を許し始めたようだ。


「私は…、オーキ・ヨーコ。……日本っていう国にいたの、……でもここって私の国じゃないみたい。……お願い、どうすればいいか教えて。」

縋りつくようなお願い事をさせられるシャンプトだが、いやそうな顔をしても目が見えない相手ならばれないだろうに、そのような表情を一切作らずに優しく答えるのだった。


「ヨーコ、大変だったのね。…二ホンという国は聞いたことないけれど、あなたが元の国に帰れるように私も協力するわ。」


ヨーコはとうとう泣き出してしまった。

メイといい、シャンプトといい、見ず知らずの自分のことをここまで心配してくれる人がいるものかという気持であった。



この状況で一人波に乗れない青年がいた。

彼はどうしたものかを考えた。

突然話しかけたらさっきみたいに怖がられるだろうし、何もしなかったらメイちゃんの帰還作戦は未完成のままであろう。

ここは勇気を出すしか無いのだ。

行けヒデオよ、この中で唯一の漢を見せるのじゃ!


「ヨーコちゃん、おれ、ヒデオって言います。シャンプトさんと一緒に来たんですよろしく。」

「……」


ヨーコに反応はなかった、というよりは驚きで口を開けていたというほうが適切かもしれない。

目が見えないから表情を判断しにくいが、明らかに動揺を隠せない様子である。


だが、ヒデオにはヨーコに自分が引かれてしまったと勘違いをしたのだったw。


「えっと、聞いてるかな」

「……ヒデオさんなのよね。」

「えっ、俺がどうかしたの?」

「…私の仲間と声が似ているなって、…でもヒデオって名前じゃなかったから…他人の空似なんだと思う……。」

「そう、俺の声と似ている人がいるのか、ぜひあってみたいな。」




こうして、馴れ合いが済んだところでいよいよ本題である。

メイが町に帰るようにすることが目的であった。


「メイちゃん、町に戻る気は」

「無いわ! お父さんがいる限り私は町に戻らないんだからね。」

あくまでやっぱりの徹底抗戦のようだ。


「事情とメイちゃんの本気の気持ちを伝えればきっと町長さんもヨーコさんのこと許してくれるって」

「いやなものは嫌なの!」

あぁ~、頑固な娘なことだ!

(作者!イライラ!)


「……私からいいかな?」

ここで意外な選手が討論会にやってきた。

ヨーコが口を開いたのだ。


「…メイが、…私のためにそこまでしてくれるのはうれしいの。…でもね、…これは私がメイにかけてる迷惑だから、…メイは家に帰っていいんだよ。」

ヨーコからヒデオ側への思いがけない加勢であった。


「迷惑だなんて!」

「メイは迷惑だなんて思ってないかもしれない。…でもね、見てる、っていうか聞いてる私がメイに迷惑をかけたって思っているの。       …これは私が原因だから、

…私が自分からメイのお父さんに、…お願いしに行こうと思うの。」

メイの反論を受けることなくヨーコはメイを落としに行った。


「‥‥‥…ヨーコが、そういうならそれでいいと思うわ。

でも、ヨーコがお父さんにお願いしに行くなら私も一緒に行かせてもらうわ。せめて、それぐらいわヨーコの力にならせてよ。」

「…ありがとう、…メイ」

「…ヨーコ」

この二人いつかは二人で幸せになるんじゃなかろうか、とか考えてしまう作者であった。




「よし、これにて一件落着、と。 では、ここにいるみんな揃って町に戻りましょうか。」

「「うん、(はい)」」


ヒデオがそう締めくくった時であった。


カ~か~か~、森の木々に停まっていたカラス(?)が一斉に鳴き声を上げながらとびだち始める音がした。

不穏の予兆はこれだけでは終わらない


「なんなの?」

「俺に聞かれてもわからな、い、‥‥う、頭が痛い。く、う、……」



バタン、


ヒデオが小屋の中で突然倒れたのだ。


「ヒデオ様!?」

「ヒデオさん!?」

「ちょっと、あんた!?」

三人がヒデオに声をかけるが反応らしき反応はなく、頭を押さえてもがき続けている。


果たして、ヒデオは無事なのか、 この不穏な空気はどこまで続くのか、

まだ、分からいからクラス転移は面白いのだ。

これから、物語がまた傷を作るのであった。



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