エピローグ 魔族の侵攻
初投稿です!
小説を書き始めるのもこれで二回目で、これが初めての三人称視点の小説です。
気になったところや意見があれば、どんどん言ってください!
「最高神様! 最高神様! やばいですよぉ! 本当にやばいですよぉ!」
最高神の側近であるトロルが、いきなり最高神の部屋に入ってきたと思えばわぁわぁと叫び始めた。
「一週間ほど前に向かわれたヘンルン様とバルン様から連絡があって、もう耐えるしかない状況だって、いつ異世界が魔族の手に落ちてもおかしくないって! うぁわあああぁぁぁぁ! もうおしまいだあああぁぁぁぁぁぁ!」
「うるせえなぁもう! 見て! 俺集中してんの! 必死に考えてんの! お前もそんな口ばっか動かしてないで頭働かせろよ! それか出てけよ! あいつらからの連絡は俺の方にも届いてるから! もう出てけ! 来んじゃねぇ!」
「そんなこと言われましてもぉ! 異世界が魔族の手に渡ってしまえば次狙われるのは現実世界です! 最高神様の神の力を授けられない現実世界じゃあ魔族の進行を止められるはずもないから……そしたらもうあと残ってるのはここ神界だけですよ!? う……うわああああぁぁぁぁ! もうおしまいだあああああぁぁぁ」
「うるせええええぇぇぇぇぇぇぇ!」
最高神は焦っていた。
もう何日も前からずっと寝ず、飯も食わず、風呂にも入らずで、ただただ木の椅子に座り、木の椅子の上で、髪を搔きむしるか、頭を抱え込んで唸り続けている。
「あぁもう! どうしたらいいんだよ!」
―――――
……いつも通りの朝のはずだった。
最高神専用である、自身ふかふかベットで気持ちよく目覚めた最高神は、自分の世話係を呼ぶために手を叩いた。
「パール、パールや、わしのふかふかベッドが神物排出によって汚れてしまったから、後始末を頼んだぞ。わしはこれから二度寝する」
そういうと最高神は、目を閉じ、眠ったふりをして、パールが入ってくるのを待った。
いつも通り寝癖が悪いふりをして、シーツを取り換えに来たパールちゃんのあんなところやこんなところを触りまくるのだ。
今まで何回も触ってきたが特に何も言われていないからな。多分、俺に意思があってパールちゃんのいろんなところを触っているということは、ばれていないだろう、うん。
というかばれても最高神だからっていえばいいんだよ。……おぉそれいいじゃん。ナイスアイディア俺!
最高神最高! 俺最高!
最高神は、自分の行動をそう言い訳して、パールがやってくるいつも通りの朝を待った。
そう、いつも通り朝が来るはずだった……。
やがて、ドアをノックして、人が入って来た気配を最高神は感じて、顔をにやけさせた。
そして、
「ぐぅへへぇ、パールちゅゎぁん。俺今寝てるから起こさないように時間かけて……」
「最高神様! 大変です! 魔族が、沢山の魔物を連れて異世界を侵攻し始めました!」
部屋に入ってきたのは、エロくて可憐で豊満なムチムチボデーパールちゃんではなく、がりがりのやせ細った若い神だった。
「おい、くそトロル!」
「え、あ、はい。なんでしょうか最高神様」
「……死ね、さっさとここから出てけ」
「はいぃ!?」
「いいから出てけ! 俺は今機嫌が悪いんだよぼけぇ!」
「は、はい! すみませんでしたぁ!」
思えばあの時、さっさと起きて魔族の侵攻に対して適切な判断を下していれば、こんなことにはならなかったかもしれない。
最高神は、今更昔の自分の行動を反省した。
トロルを追い出した後、一日ずっと半目でパールを待っていた最高神は、結局パールが来ないまま、また寝ていた。目が覚めた時、ベッドのシミがさらに広がっていることを感じて、ようやく体を起こした。
それから最高神は、先日トロルが魔族が攻めてきたと言っていたことを思い出し、魔族の撃退結果を聞くためにトロルのもとへと向かった。
最高神が見たのは、
「もうだめだああああぁぁぁ、もうおしまいだあああああぁぁぁぁぁ!」
頭体全身をガンガン揺らしてそう叫ぶトロルだった。
「お、お、おい、どうしたんだトロル!? 何かあったのか?」
「……ぁぁぁぁぁあ、最高神様! ………………ズボンになんかシミついてますけどどうしたんですか?」
最高神は、トロルを蹴り飛ばした。
「あああぁぁぁ痛い痛い痛い! ごめんなさい最高神様! なんでもありません! ……あ、そうだ、最高神様! なんでもあります! 大変なんです!」
「あ? 何が大変なんだぁ? 俺は今お前を蹴るので忙しいんだが?」
「いや本当ごめんなさいです !痛いからそんなに蹴らない……はっ! そうじゃなくて! ……最高神様!」
「あぁん!?」
「異世界が! 現実世界が! 神界が! 魔族の手に落ちるかもしれないんです!」
―――――
最高神がトロルから現在の勢力図をもらった時には、すでに異世界の都市の3/1近くが魔族に占領されていた。侵攻初日に迎撃に向かったパール他、多数の神が異世界へ向かったが、戦況は一向に良くならず、魔族の圧倒的物量によって二週間後の今にはもう、残る都市は両手で数えられるほどになっていた。
「あぁもう! どうすんだよこれ! どうしようもないじゃん!」
「最高神様! 手はまだ浮かばないんですか!? ほら、例えば最高神様の神の力を使うとか!」
「いや、俺の力は神の力の一部を下界の二つの世界の人々に授ける力だから。というかお前の神の力の方が使えるじゃねえかよ。あれだろ? 指定した神・人を指定した場所に転移させる力だろ? それでどうにかなんねぇのかよ?」
「そんなこと言われましても一体どこに転移させればいいんですか!? 異世界はもう、見渡す限り魔物! 魔物! 時々魔族! 魔物! な状況ですよ!? 魔族の王、魔王を倒そうにもどこにいるかわからないですし、倒したところで魔族がそのまま魔物と引き返すとも思えませんし」
「まぁ……そうだよなぁ……」
最高神は、本当はもう、魔族を撃退する方法なら思いついていた。
簡単なことだ。魔族、魔物は、日光に異常に弱い。だからこそ、常に空には月と星が映る、常に夜しか訪れない異世界では魔族、魔物が活発に活動して、月と太陽の両方がでる現実世界にいる魔族、魔物は、地下深くでごく少ない数がひっそりと暮らす。ちなみに、常に太陽が出ているここ、神界には、魔族、魔物は一切いない。
それならば、異世界にいる人々を現実世界に、トロルの力を使って転移させる。そして、数多くいる現実世界の人々にも最高神の神の力を授ければ、今いる大量の魔族、魔物の群れだろうがなんだろうが、簡単に撃退できるだろう。ちなみに、神界には、神しか転移できない。
つまり、現実世界にて、異世界の者とともに魔族、魔物に立ち向かえばいいのだ。
しかし、最高神にはそれをすることができない。理由は二つある。
一つは、前最高神である母に、小さい頃から常に言われ続けていたことがあるからだ。
〈いいですか。あなたが次の最高神になったとき、絶対に下界の二つの世界の世界の理を覆させてはいけません。そう、例えば、最高神の神の力を異世界の人たちに与えなかったり、現実世界の人に与えたりです。ちなみに、現実世界の人を異世界へ神の力で転移させる場合、転移させた人に新しく神の力を与え、異世界の人を現実世界に転移させる場合は、転移させた人から神の力を剥奪させなければいけません。……どうしてそうしなければいけないのか……ですか……そうですね…………世界は、とても弱く、脆いのです。少しでも大きな変化が起きれば、たちまち世界は崩壊してしまいます。だから私たち神は、世界が崩壊しないように、世界の理を覆させないようにしているのです〉
なぜ、世界が崩壊するのか、それはまだ最高神に成りたての彼にはわからない。でも、彼は母親の言いたかったことを、なんとなく理解している。それに、最高神が現実世界で迎え撃つという考えを頭に浮かべた時、頭に激痛が走った。彼の中の本能が、無理やりにでも考えを捨てさせたのだ。
だから、できない。最高神もするつもりはないが、したくてもできない。
できない理由はもう一つある。
単純に、異世界の人たちが悲しむからだ。
たとえ、魔族、魔物を現実世界で撃退できたところで、彼らに異世界は、帰るべき自分たちの世界はない。
最高神は、そんな彼らに対して、簡単にこれから「ここ(リアルワールド)」に住めとは言えないし、言いたくもない。
そんな彼らを、見たくない。
「あぁもう! ったくいい案ねぇのかよっ!」
……それから、長い間無言でひたすら頭を働かせていた最高神は、ついに決心した。
『決して良い案とは言えないそれ』
『結局は、異世界の人たちは辛い思いをしなければいけないそれ』
決心してからの行動は早かった。
急いで異世界の世界地図を取り出し、条件に合った土地を探し出す。
「最高神様!? なんで異世界の世界地図なんて出してるんですか!? そんなことしてる暇なんて……」
「見つけた」
「へっ?」
「トロル! お前の転移のやつって、半年ごとに使える回数が決まってるんだろ?」
「え、そうですけど。神の存在は神界まま、意識だけを下界の二つの世界に転移させるのは何回でもできますけど、存在を転移させるのは、あと下界の二つの世界の人々十数人ぐらいと、荷物少々ぐらいなら」
その言葉に、最高神はにやりと笑った。
「ちょうどいい。トロル、頼む。少しの間だけでいいから、俺と一緒に意識だけ現実世界に転移してくれ」
『俺が最高神だったから。例えば母ならばもっと確実に多くを救い出せる方法を見つけ出せたかもしれない』
「そんないくらピンチだからって最高神様まで異世界に……ってえ!? 現実世界!? 何言ってるんですか!? こんな大事な時に最高神様が逃げるなんて……」
「頼む! 本当に頼む! 大丈夫だ、逃げるわけじゃない。すぐに戻ってくる。俺を信じてくれ」
『でも、今の最高神は俺だから。他の誰でもない俺だから』
「……せめて、何をしに行くのかだけでも教えてくれませんか?」
「人を……集めに行く」
「人……ですか……?」
『俺は、俺のできる限りのことをする』
「俺は、第二の異世界を創らせる」