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異世界落語  作者: 朱雀新吾
抜けドラゴン【抜け雀】
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抜けドラゴン【抜け雀】⑥

 サゲの台詞を言い、一福が頭を下げると同時に、ドンドンと太鼓の音が鳴る。

 酒場は大歓声と拍手で包まれた。


 更にこのネタには後説が存在する為、再び顔を上げ、一福は口を開く。


「この後、勇者ラッカは新たな若きドワーフ王ミギチカと共に、サイトピア軍を率いてドワーフ城に攻め入り、見事城の奪還に成功します。それがサイトピア歴1515年。今からちょうど百年前の出来事でございます。それから勇者ラッカと多くの冒険を経て、役目を終えたエンシェントドラゴンがどうなったかは、皆様よくご存知でありましょう。こちらの二階で二匹のドラゴンが寄り添うように鏡合わせで、住まっております。

『ドラゴンの住む酒場』として、あたし達のお笑い以上の観光スポットとなっておりますね。まさにこちら、先代店主の人徳の成せる業でございます。

『抜け雀』を飛び抜けた勇者ラッカの破天荒な風雲児ぶりを称え、初代楽々亭一福が作った噺。『勇者ラッカ=シンサ冒険譚』が一つ『抜けドラゴン』の一席でございました」


「よ!三代目!!」

「三代目!」

「サンプク!!」

「サンプク!!」


 そうして三代目楽々亭一福は、客席に向かって、再び深々と頭を下げた。


 ターミナルに落語を根付かせた創始者の、伝統あるその名をエルフが襲名するという事で、当時は様々な方面から叩かれた事もあった。だが、得意のドワーフ弄りを根気よく続ける事で自分のキャラを確立させ、今では誰もが認める立派な名人となっていた。


 初代楽々亭一福の常連客として、落語創世記から観ていた自分がまさか噺家になるとは、百年前は考えてもみなかった。長命であるエルフだからこそ出来る事である。そして、この後何百年、何千年と、後世に伝えていく使命が、自分にはある。


 客席には、共に常連だったドワーフが座っている。

 三代目一福が高座に上がる時にはいつも観にきてくれるのだ。


――あいつもすっかり爺さんになっちまったなあ……。いや、ドワーフだからよく分からんけど……。

 感慨深く、思わず笑みが零れる。


 時代が移り、歴史が変わっても、人々が共有した時間、共に笑いあった時間は繋がっている。

 それを彼は今日も、伝え続け、紡ぎ続けている。


「さて、この後は大トリ、本日めでたく二代目を襲名致しました『サイト家マドン』の『たちぎれファイアーストーム』でお楽しみ下さい!」


 一福がそう言うと、盛大な拍手が鳴る。

 その場所の名は極楽酒場。いつの時代も、極楽の様に笑いで溢れている場所である。

 その看板に、偽り無し。 


おあとがよろしいようで。

次回、「クランエ師匠のドキドキ☆ラブラブ大作戦【延陽伯】」でお会いしましょう。

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