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異世界落語  作者: 朱雀新吾
エターナル【寿限無】
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エターナル【寿限無】③

 大量のゴブリンを前に、ラッカが何を試みようとしているのかを察知し、魔族の魔法使いは馬鹿にしたように笑う。

「フハハハハハ!知っているぞ。それは今お前たちの国で流行っている『ラクゴ』とやらだろう。我々の諜報員が既に情報は掴んでおるわ』

『ほう、ヤツら、そこまでサイトピアに入り込んでいるんだな。こりゃ今回の戦争。魔族の圧勝かもしれん』

「そ、そんなあ……」

 オクラホマスタンピードの危機感のない冷静な言葉に、ナナセが泣きそうな声を出す。というか泣いている。

「サイトピアの流行、廃り、強み、弱点は十全に掌握しておるわ!!そして、この期に及んでラクゴだと!!??そんな芸事で、ハッタリで、本当に私を倒す事が出来るとでも思ったか。血迷いおって!」


 そう、芸である。

 ただの芸であり、落語。

 だが、ラッカには確信があった。

 つい先刻には、ナナセの例もある。

 落語とターミナル。

 その不思議な繋がりを、ラッカは信じた。

 奇跡を疑わず、ラッカはその言葉を唱える。

 異世界落語「エターナル」の一節を。


「エターナルエターナルシャイニングウィズダムブレイド神アクア神エミタル神モル神ケピネプ神ナアキ伸ゴンゴルプリプリ神チンチロピロピロ神チョンモネ神その他1787神の名の下に風の精霊ジン水の精霊ウンディーネ火の精霊イフリート土の精霊タイタン踵の精霊のぶをの加護を受けシュレディンガーガガーリンアルシンドピニャコラーダジンギスカンスフンフフンヤマダホフッフ我が刃は闇を斬りターミナルに光差す慈愛と創生の夜明け待つ人々の為立ち上がりし我こそ完全無欠なる絶対勇者栄光溢れるこの名に於いていかなる邪悪も許さぬ所存いざ喰らえ愛と正義と勇気と根性と欲望に満ちた曇りなき揺るぎなきやんごとなきこの秘剣その名も超絶滅殺必殺剣『ギガンテスファイナライズイリュージョンスマッシュ』」


 ラッカが一息で叫び、横一文字に魔剣を振るう。

 サン!!!!と神々しい音が響き、光の波状が放たれる。

 光が一瞬でその場にいる何万体ものゴブリン達を包み込む。

 何事かとゴブリンの動きが一瞬だけ、止まった。

 だが、しばらくしても特に身体に影響はなさそうだった。

 ゴブリン達は直ぐにキョロキョロと辺りを見渡し始め、今のは何だったのかと、首を傾げた。


「フハハハハハ!!なんだなんだ今の技は!こけおどしか!!ふん、まさにラクゴの技らしいわ!」 

 

 何も効果がないではないかと、魔法使いが笑う。

「さて、貴様も年貢の納め時だな、覚悟するが良い、勇者ラッカ=シンサよ…………ん?」


 ふと魔法使いが自分の手のひらを見る。

 すると、そこから――蒸気の様に昇って行く光の粒が。

 

「なんだ、これは?」

 見ると手のひらだけではない。全身からその光は、溢れ出ていた。

 まるで先程浴びた光が、体内を循環しているかの様に。


 その現象は魔法使いだけではない。

 ゴブリンの身体の中から、口から、目から、黄金の光が漏れ出し、いつの間にかゴブリンは苦しそうに喉を掻きむしっている。


「なんだ……これは、一体どうなっている!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!

 突如、地鳴りが響いた。地面を見ると、バリバリバリバリバリバリ!!!!!

「うおおおおおおおお!!!!」

 まるでパイ生地の様に、みるみる地面が剥がれて飛んでいく。

 ゴブリン達は地面もろとも吹き飛ばされ、そのまま体中から溢れる黄金の光を纏い、空へと消し飛んでいく。

 全てのゴブリンが、である。

 何千万ものゴブリン達が同時に、一瞬で、光と共に、地面と共に、吹き飛び、消え去った。

 

 その効果は当然、魔族の魔法使いにも届く。

「なんだこの光は……。ぐおおお、熱い、熱いぞ!!身体が浄化される……?おのれ勇者、よいか良く聞け。俺を倒してもまた第二第三のうんうぎゃあああああああああああああああああ!!!」

 そして、魔法使いは消し屑となった。


「きゃあああ」

 ラッカが悲鳴の方角を見ると、ナナセも地面が剥がれた風圧によって吹き飛ばされそうになっていた。

「ほい」

「うわあ」

 ラッカはナナセの小さい身体をひょいと抱えると、後方へと跳び、安全な場所で着地した。

 すぐに巨大な砂煙が襲ってきて、視界が遮られる。

 そしてしばらく経ち、目の前が開けて現れた光景に、流石のラッカも驚愕を覚えた。

「おいおい……マジかよ」


 大河の畔は巨大な隕石が落ちた後の様にごっそりえぐれていた。

 ゴブリンは愚か、魔法使いも、ワープゲートも、跡形なく消し飛んでいた。

「はわわ……はあ」

 ナナセは現状を目の当たりにした事と、長い死闘が終わった安堵とで、地面にへたりこんだ。


「なあオクラ、どう思うよ」

『どう思うよって、お前がバケモノだと思うよ』

「いや、そうじゃなくて……」

 現状を見て、考える事は、ただ一つだった。

「偶然、じゃあねえよな」

『まあ、二度も続けばな……』


 

 思わず、ラッカの口から言葉が零れた。


「ラクゴって……何なんだ」



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