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異世界落語  作者: 朱雀新吾
ダマヤ正道【ダマヤ問答】
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ダマヤ正道【ダマヤ問答】①

 そこはサイトピア国、謁見の間。

 玉座には国王が座り、隣には預言師が仕えている。


 そこで大臣は預言師から質問を受けていた。

「サイトピア問答で負けたらしいでんな」

「……は」

「ダマヤは視聴者に復帰したとか」

「……はい。ですが、ダマヤが偶然勝利しただけに過ぎません。私はまだヤツの復帰を認めていないのです」

 大臣のその言葉に預言師は大きく溜息をつく。

「大臣はん。あんたも強情でんなあ。もういいから、早くそのハナシカっちゅう異世界人を連れて来んかいな」

「いえ、ヤツは異世界召喚の失敗例です。連れてくる訳にはいきません」

 強情な大臣に、預言師はやれやれと首を横に振ると、強い口調で言った。

「国王がそれを望んでんのやで。ハナシカの力を使って魔族を駆逐するんや」

「……ですが、ヤツが宮廷に入り込んでしまった場合、この世界の秘密が、暴かれてしまう可能性もあります」

 大臣は必死に反論する。だが、預言師は頑として意見を曲げようとはしない。

「そんな事を言っている場合とちゃいまんねん。魔族との戦いに破れたら世界の秘密もクソもありまへん。何もかんも、全ておじゃんでんがな。魔族との戦いに勝利する為には、なんとしても異世界召喚の力が必要なんや。そんな事ぐらい、あんさんも分かっておますやろ?」

「…………」

 世界の秘密を盾にしても通じないか。

 国王と預言師ヴェルツは、焦っているのだ。

 言葉通り、このままでは魔族に負けてしまうという事が重大である。

 だが、それだけではない。

 ある秘密を守り抜く為に、早く魔族を殲滅したいのだ。


 だが、それなら尚更、意地でもハナシカを宮廷に連れてくる訳にはいかない。


 そんな大臣の決意を、預言師が軽い口調で破壊する。


「まあ、大臣が何と言おうと、こっちはこっちで手を打たせてもらいましたわ」

「……どういう事ですか?」


 預言師の嫌らしい口調に、大臣は訊ねずにいられなかった。


「そんなの決まっとりまっしゃろ?秘密部隊に命令して、ハナシカを捕獲して来るように言ったんですわ」

「……!秘密部隊!?何故そんな真似を」

 非難の目を向ける大臣に、預言師が言い訳がましく口を尖らせる。

「仕方あらへんわ。誰かさんがいつまでたっても連れて来んのやさかいな」

 そう言って大臣をキッと睨みつけたが、既に大臣の心はそこになかった。


――これはまずい事になったぞ。

 ハナシカが国王の手に渡ってしまっては、絶対絶命である。

 大臣は、とてつもない焦燥感を覚えた。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 同時刻、同宮廷内、視聴覚室。

 落語「ダマヤ問答」のサゲの、すぐ後の話。

 ダマヤは久しぶりの視聴覚室を満喫していた。


「うっひょおおお!!いやはや、色んな番組が増えてますなー。ええ!?ス○ちゃんが別人に!!??

あれ?ゆ○なちゃんがいなくなってる!?で、『わ○も』ってなんだよ!超面白いじゃないのコレ!」


 イケに殴られ、ボコボコに腫らした顔のまま、様々な番組をチェックする。

 

 そして、しばらくの時間、というか結構な長い時間、ダマヤはテレビジョンに齧りつき、至福の時間を堪能したのだった。


「いやあー、最高だった!やっぱりこの生活はやめられませんな!」

 大きく伸びをして、首をコキコキと鳴らす。



 そして、誰もいない壁に向かって当然の様に話しかけた。


「……さあて、そろそろ出てこいよ」


 すると、スッとその壁から、笑顔の若者が姿を現した。

「……あらら、バレてましたか。というか分かっててあんなに自分の時間を楽しんじゃうんですね。僕、結構待ってたんですけど……」

 若者が軽い口調でダマヤに言うと、ダマヤも軽く片手を上げて答える。

「ああ、すまんすまん。いや、こっちもかなり大事だったからな」


「まあ、構いませんよ。お邪魔してたのは僕の方なんですから。で、このテレビジョンって、どうやって持っていくんですか?なんだか結界が張ってあって、手でも魔法でも運べないんですけど……」

 若者の正直な発言にダマヤは笑った。

「うん、今お主が言った通り結界が張ってあるからな。当たり前だろう?本当は毎日の祈りを欠かしてなかったらもっと強い力で守る事が出来てたんだがな。イケもそれは知らなかったんだから、責める訳にもいかんし……」

「…………」

 ぶつぶつと呟くダマヤを若者は興味深そうに見詰める。


「貴方は一体何者なんですか?私はケス=シノと申します。マドカピア軍参謀です。シノと呼んで下さい」


「ふん、私は大した者ではない。主君に恵まれただけの、ただの変な男だ。全ては、サイケデリカ様の御遺志だよ」


 腕を組んで、口の端を持ち上げて余裕の表情。 

 歴史や落語では、決して語られる事のないダマヤの姿が、そこにはあった。


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