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理解

ミーティング以降、駆は週末に控える春季大会に向けて、練習をつんでいた。


あれから3日経ったー



牛尾との仲は相変わらず険悪で、2人はサポートどころか会話すら見当たらない状況であった。



主将の脇中も当然、その様子を間近で見ているため、2人はいつになったら会話を始めるのか、怪訝そうな顔をしていた。



「おっつ~!」


ーその日の練習を終えて、早速帰路につこうとする駆を、2年の田村が呼び止めた。


「おつかれっした。」


「なんだー?元気ねーなぁ!お前、今週春季出るんだよな!俺は5000だけどよ、お前の走り楽しみにしてるぜ!」


「あざす。では、失礼しま……」


「まー待てって!(にこ) 」


「?用事ですか?」


「いや、用事って程でもないんだけどよ……」


田村は、しきりにキョロキョロして、周りを気にしているようだ。


「どうしたんです?」


「まーなんだ。その……あ!おーい牛尾~!」


「(げっ……)」


田村が見つめる先にいたのは牛尾だ。


牛尾も「げっ……」ってという顔をしている。



牛尾「あ、おつかれーっす。」


「おつ!どうだ?途中まで一緒に帰ろうや。」


牛尾「俺寄るトコあるんで……」


「まーまーそう言うな!途中までだから!な?」


牛尾「……はい」



駆は、一体この先輩はなぜ自分を呼び止めたのだろうと疑問を抱いていた。


しかしいざ3人で歩き出すや否や、田村は「すまん、用事思い出した!」とか言って走り去ってしまった。


「あんのちんちくりん……」


駆は心の中で呟いた。田村は、駆と牛尾がこのまま仲直り出来なくて入部出来なくなるのを心配して、2人が話せる機会を作ったのだ。




二人になり、駆としては、先日相当罵声を浴びせていた為気まずい空気が流れていた。



ーしかし、静寂の均衡を破ったのは、意外にも牛尾だった。



「……調子どうなの……」


「良いけど。」


「へぇ、じゃあ俺がサポートするまでも無いね。がんばれよ。」


「それな。」


そう駆が答えた後、駆は微かに舌打ちが聞こえた気がしたが駆は敢えてスルーした。


「……あのさ。」

また牛尾が口を開く。


「俺、全国とかはあんま考えてないけど、陸上はしたいんだ。だから陸上部入った。多分、全国優勝とかした高道からしたら、その感覚は分からないだろうけど。」


「あぁ、全くわかんねぇな。」


「分かってくれなくていいよ。でもさ。皆が皆高道みたいな気持ちで陸上やってるんじゃないと思う。俺はお前の邪魔はしないし、お前も自分の考えを押し付けるのはやめて欲しい。」



「意味がわからん。試合に出る以上は、テッペン以外目指すところがないだろ?それに俺は押し付けてはいない。」



「押し付けてる。人のペースを乱してるよ。」


「俺は自分の主張を述べているだけだ。」


「それが押しつけだっつってんだよ!!中学チャンピオンが、初心者に対して持論を突きつける、これのどこか主張を述べてるだけになるんだよ!」



牛尾は激昴しすぎてぜぇぜぇと言っている。


「少なくともこのチームでは、初心者もいるし、そいつらも皆チームメイトだ。そいつらの事全く考えずに、よく都大路優勝なんか言えるな!だったら都大路じゃなくて、個人戦のインターハイ優勝を目標にしろよ!!迷惑なんだよ!」


牛尾はそう言うと、走り去ってしまった。



牛尾のその言葉は、駆に深く突き刺さった。


駆は中学時代、駅伝に出場したことは無かった為、個人戦でしか優勝経験がない。


それゆえに、個人主義の利己的な考え方になってしまっていたのかもしれない。


山滋高校の復活に向けて良かれと思って言った言葉が、実は山滋高校の衰退に拍車をかけたのではないかー



駆は一晩思い悩みながら、眠りに落ちた。





ー翌日ー


駆は、牛尾に話しかけた。

「(俺から牛尾に話しかけるのって、初めてかもな……)」


「牛尾」


「なに?」


「あの、悪かった。昨日までのこと。」


「いいよ別に。俺は俺でがんばるか……」


「やっぱり俺は、この山滋のユニフォームを着て都大路を走りたい。お前はお前の頑張りをしていたのに、それを全て否定して、俺は独りよがりだった。すまなかった。力を貸して欲しい。」


「……少なくとも……。」


「?」


「今回の付き添い料は高くつくぜ?いいのか?」


「……ふざけやがって。」



そう言って2人は、握手をした。


春季大会まで残り、2日ー

☆登場人物☆


高道(たかみち) (かける)

中学チャンピオンになり、鳴り物入りで山滋高校に入学したエリートランナー。

全国高校駅伝(都大路)に、全てを懸けている。


〇ベストタイム

1500m…3分55秒98



牛尾(うしお) 貴裕(たかひろ)

地元の中学から進学してきた1年生。高道と違い、持ちタイムなども平凡。


〇ベストタイム

1500m…4分25秒50



東谷(ひがしたに) 健吾(けんご)

高校から陸上競技を始めた初心者、1年。気が弱い。



脇中(わきなか) 健太(けんた)

山滋高校3年生で、陸上競技部主将。駆と同じく、強い山滋憧れており、再建を狙う。



田村(たむら) 龍一(りゅういち)

山滋高校2年。一見不真面目なヤンキーに見えるが、実は後輩の事も気にかけたり、結構いいやつ。


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