入部条件
ー2017年 4月中旬ー
駆たち1年生が山滋高校陸上競技部に入部して1週間が経った。
相変わらず、駆と牛尾のそりが合わず、2人は次第に口を利かなくなっていた。
そんなある日、放課後にミーティングが開かれた。
新入生を交えて改めて部員紹介と、今後の方針を話し合うものである。
「ー以上で部員紹介、説明が終わったな?では次の話だ。来週の京都府春季大会だが、1年生にも出てもらう。駆、お前は1500mに出場しろ。そしてその付き添いに牛尾、お前が付け。」
脇中が言った言葉は、駆と牛尾にとっては予期しないものだった。
「な、なんでこいつと……!」
2人は口を揃えて抗議したが、脇中は2人を制止するように言った。
「俺達はな、駅伝で全国を目指しているんだ。駅伝は、チームメイトとの信頼関係が非常に重要になる。いいか、この試合で、駆が優勝できるように牛尾はサポートしろ。もし駆が優勝を逃したら、お前達の入部を認めない。」
「!?」
駆は一瞬目を丸くして、その後
「もちろん優勝するつもりですが、こいつのサポートはそれに関係しな……」
「これは命令だ。」
脇中が制す。
「いいか、今のお前達には信頼関係など皆無だ。今回、共に一つの苦労を乗り越えて、信頼関係が築ける事を証明してみせろ。それを春季大会優勝という形で表すんだ。それがお前達の入部条件だ。いいな?」
部室を後にした駆と牛尾は、互いに顔を見合わせた。
春季大会まではあと6日。
俺は、本当にこいつと協力できるのだろうか。。
一抹の不安が駆の脳裏をよぎる。
「よ……よろしく頼む……。」
「え?聞こえない。」
「付き添い!!よろしく頼むっつってんだよ!!」
「もっと頼み方ってもんがあるでしょ。帰るわ。」
果たして、2人は無事に入部できるのだろうか。
☆登場人物☆
・高道 駆
中学チャンピオンになり、鳴り物入りで山滋高校に入学したエリートランナー。
全国高校駅伝(都大路)に、全てを懸けている。
〇ベストタイム
1500m…3分55秒98
・牛尾 貴裕
地元の中学から進学してきた1年生。高道と違い、持ちタイムなども平凡。
〇ベストタイム
1500m…4分25秒50
・東谷 健吾
高校から陸上競技を始めた初心者、1年。気が弱い。
・脇中 健太
山滋高校3年生で、陸上競技部主将。駆と同じく、強い山滋憧れており、再建を狙う。
・田村 龍一
山滋高校2年。一見不真面目なヤンキーに見えるが、実は後輩の事も気にかけたり、結構いいやつ。