夢への一歩
☆登場人物☆
・高道 駆
中学チャンピオンになり、鳴り物入りで山滋高校に入学したエリートランナー。
全国高校駅伝(都大路)に、全てを懸けている。
〇ベストタイム
1500m…3分55秒98
ー2016年 8月ー
「ー続きまして、全日本中学陸上競技選手権大会、男子1500mの表彰です。優勝はー」
全国各地から才能あふれる中学生ランナーが集う全国中学陸上競技選手権大会、通称「全中」。
蝉の大合唱の中、高道 駆の表彰式は行われた。
駆はこの年、1500mで全中に出場し、3分55秒98という大会新記録を樹立して、優勝を果たした。
「高校はどこに進学するのですか?」
「2020年の東京五輪も視野に?」
蝉の大合唱をくぐり抜けて投げかけられるスポーツ雑誌の質問の雨に駆は
「山滋高校です。僕はそこに入り、全国高校駅伝で優勝します。オリンピックのことは考えていません。」
という言葉を何度も同じように返す。
駆は、間違いなく中学アスリートとしてはエリートコースを歩んでおり、彼自身の夢に向かって順風満帆の実績を積んでいた。
「すごいじゃないか、大会新記録だなんて!」
「将来は箱根駅伝を走るのかな?」
全中を終え、彼の地元、京都での日常に戻ると、周りの人間から賞賛を多く送られる駆であったが、
彼は満足する事はなかった。
「俺は絶対に、山滋高校で全国優勝をする。」
駆は、頑なにその目標を曲げない。
駆の原動力は、5年前、地元京都の名門高校・山滋高校が全国高校駅伝で優勝したレースをテレビの前で見たことだった。しかし、その年の優勝以降のここ数年の山滋高校は府内で敗退、全国大会に出場すらできない状況が続いている。今や山滋高校は「堕ちた名門」
と呼ばれているのだ。
駆は、5年前に見た輝かしい濃紺のユニフォームを纏う山滋高校の選手の姿が誇らしく、当時の彼にとってそれはあまりに衝撃的であったため、強い山滋高校を取り戻すべく、山滋高校への進学を決意したのであった。
誇りを取り戻す。その想いを胸にー。