余がちゃんと育てるのだっ!それで良いであろう?
一発書きのため、お見苦しい点がある事を、ここに謝罪させて頂きます。
天使の赤子と目が合った瞬間、こらアカン……と魔王は思った。
純粋過ぎるのだ。地界の酸いも甘いも噛み締めた、魔王が産まれまばかりの天使の赤子に、ノックダウンされたのだ。
赤子の方も、先程あれだけ泣き叫んで居たのに、泣き止んでおり、大っきなキラキラの瞳で、ジィ~っと魔王を注視している。
「うぬぬぬ…。どうすれば良いのだ?城に連れて帰りたいのは山々なのだが、天使の赤子など拾って帰ったりしたら、あの二人に何と言われる事やら……アババッ…無理無理」
ベルゼとアストの悪魔の様な(いや、実際悪魔だが)口撃を思うと、城に連れて帰るのは断念せざるをえない。
赤子と視線を会わせながら、ゆっくりとその場に下ろすと、亀の歩み並のスピードでその場を後にしようとした瞬間、赤子がまたも泣き出した。
「ぎにゃ~~~~~~~ん!!!」
泉の周辺が、音波攻撃によりビリビリと揺れた。
その時、泉の中から一人の美しい顔に青筋を立てた女性が滑り出てくる。
「じゃかわしいっ!人が惰眠を貪っとるっちゅうのに、さっきからなんなんじゃいっ!!」
「ヒッヒィ……あの女は自称絶界の女神、独身のリーゼロッテだっ!奴の不興をかった男は、大事な場所を潰されてしまうという黒い噂の絶えない自称女神独身だっ!」
「おう、そこにおんのは……魔王じゃないかえ?このガキの親なんか?早よぉ泣き止ませんかいっ!」
「イッイエス・マムッ!!!」
最敬礼を取り、足早に赤子を抱き上げると、嘘のように泣き止み、静かになる。
「ほおっ?結婚したとは、聞かぬが……。親子の絆は本物のようじゃの?」
リーゼロッテはしたり顔で、ニチャニチャ笑いながら、とんでもない事を言って来る。
「違うっ!余の子供では無いぞ!決してな!!」
この発言を聞いて、先程までニチャニチャ笑っていたリーゼロッテの顔色がサッと変貌する。
「男は何時もそうじゃっ!俺の子じゃないなぞ言いおるからにっ!ええいっ!腹が立つぞよ!」
そうリーゼロッテが叫ぶと、泉の水がリーゼロッテの周りに無数の球状をとり、浮き上がって来る。
「いや、だって、見てみよっ!この赤子には白い翼があるぞっ!もし余と天使の混血ならば、翼の色は黒に染まっておる筈だっ!!寧ろ赤子を捨てた天使の方が数倍悪いであろう?」
正に今、攻撃に移ろうとしていたタイミングで、
「そのガキは捨て子かえっ?それは許せぬなぁ………確認するが、本当に貴様の隠し子とかでは、あるまいな?嘘であったら、酷い目にあわすからな?」
リーゼロッテに般若の形相で見据えられたせいでつい、
「神に誓ってっ!!!」
などと言ってしまった。すると、リーゼロッテが怪訝そうに、
「神に誓う…だと?魔王のお前が……か?冗談にしか聞こえぬが?」
破壊光線でも出してきそうな眼光で、探りを入れて来る。かなり執念深い。
「つ…つい、口から漏れただけです。余がちゃんと育てるのだっ!それで良いであろう?」
「うむ。しかと聞いたぞ?違えるなよ?じゃあな」
自称絶界の女神ことリーゼロッテは、そう言うと泉の中に戻っていったのであった。
残された魔王は内心ヤバイ事になった……と、思っていたのである。
例のあの二人に何て言い訳をしようか、頭を悩ませていたのであった。
リーゼロッテ……美人だけど、中身はオヤジ。
スルメと馬刺が大好物。賭け事と、エイジングケアが日課。