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01.プロローグ


「ララル、ララ」


 夜の底のような暗闇の中。ぽっかりと丸く空いた光照らされる場所へ、一人の少女が歩み出る。紺色の外套で全身を覆い、赤い水晶玉を両手に持った姿で。


「ララル、ララ」


 頭を覆う外套の影に隠れ、顔は確認できない。ただ、口周りだけが白く照らされている。その小さな口が動く時、少女の声で不思議な音色が奏でられる。


「ララル、ララ」と。


 聞く者を物語に誘う、呪文のような言葉が。


 少女はゆったりとした動作で円の中心に辿り着くと、一礼し、微笑を口元に湛えた。低い背丈に大きな存在感を背負い、誰にともなく告げる。



「これから皆様にご覧いただくのは、魔族の世界で魔王候補生として生まれた、エリオンの物語で御座います」



 確認出来る手と口周りの肌は人間族のように白いが、魔族のように魔力を身に秘めた少女。水晶玉を通じ、過去と未来を覗くことの出来る、稀有な力を持つ少女。



「人間族の歴史で、大陸を血に染める大規模な戦争を巻き起こしたとされる、血も涙も心もない、冷酷無比な魔王……エリオン」



 どんな感情もその語りに乗せず、淡々と彼女は物語る。

 時折、「ララル、ララ」と物悲しそうに、歌いながら。



「しかし、人々は知りません。人間族が語る彼の悪行は、一人の魔女を守ろうとするがために、なされたということを……。今こそ皆様に、その真相を……」



 そこまで言うと、全ての真相を知る少女は再びお辞儀をした。

 手に持った水晶玉をその場に置き、光の当たらない場所へと戻っていく。


 床に置かれた水晶玉は明滅し、何かに操られたかのように宙に浮かぶ。


 やがてそれは、眩いばかりの強く赤い光を周囲に放った。

 人々の脳裏に、過去の情景を届けるために……。




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