超忍界!響
周達を、敦盛が吹き荒ばせる竜笛『小枝』の夜嵐が襲う。
「ぬおおお!」
「来た!板額さんが!」
(こいつ戦闘中にもさん付けかよ!)
(周くんは、この任務の死命を決する貴重な戦力。余計な動きに巻き込んでしまうのは避けたい!)
「周くん!」
「あん!?」
「体を張れって言ったよね!」
「ああ!」
板額が、嵐の逆風をゆっくりと遡上し、聖鎌を振り上げて二人に迫る。
「ほほ!前後に虎狼の待ち構えたり!」
(ほほ。何とも恐ろしげなる陣である事よ!)
「まるで大魚の餌よの!」
「命を張るさ!『昭和』の、時代の精神を見せるよ」
響は抑え眉で微笑むと、風に乗って敢えて単車を横滑りに回転させて大鎌を避け、板額の単車の側面へ『昭和』ナンバーの『飛竜』を衝突させる。
響が周を一瞥する。
「喜びも怒りも、繁栄も戦いも祈りも、全てを飲み込んだ長い『時代の精神』を!見せるためにぼくは、ここに来ました!」
響が、板額と単車の軌跡を錐揉み合わせながら、周から遠ざかる。
「結果出せよ!」
『小枝』の嵐の間断を襲って、周を目掛けて南淡高校の番格達が殺到する。
「ほらほら!」
「「「「ぐわあーーー!!!」」」」
周は断続する窓硝子へ、機影を次々と切り写す様に映し換えさせながら、摩天楼の側で敵中を一点突破する。
周は番格達を一撃で眼下へ沈めながら思惟する。
(あの笛の曲、どこかで聴いたことがあるぜ?)
響と板額が、忍者刀と大鎌で、数合渡り合っている。
「ほほ!二手に別れて嵐の上下を取ろうとでも?」
「ふっ。ぼくは自由忍者。主持ちの者達とは違って、依頼の選り好みを出来る立場」
「だろうの」
「だからこそ!信用を保つ為には命を張るべき時があるんです」
「ならばここで!決着を!」
「とうっ!」
響は、板額が振り上げた大鎌に跳び掛かって、横合いに忍者刀の峰を叩きつけた反動で、飛び過ぎる『飛竜』の座席に降り立つ。
響は忍者刀の切っ先を板額に差し向けて、両つま先を中指を基準として正面へ向けると『飛竜』の座面を摩擦しながら靴底に足の指を噛ませて引き寄せ、軽く上げた踵に体重を乗せた。響の息が収まり、自然と肩の力が抜ける。この整息法により、公家や武家は長時間の激動時も静然と振る舞うことが出来た。響は忍術の中に、そうした操体法を受け継いでいる。
「百発百中の技前と謳われた『建仁』随一の武術の先輩にも、思う所はあるでしょうけれどもね。ふふ」
響が、穏やかな夜風に髪を揺らさせながら微笑む。
「ほほ、この聖鎌を前にして、その命を幾つ賭ければよかろうかの」
板額が聖鎌の石突きを単車の鐙に叩きつけると、刃と柄が二本に分かたれる。板額が両手にそれぞれの聖鎌を握る。
「この命、何度でも賭けましょう!」
「ほほ!総浚えよ!」
「超忍界の聖魔光月は、ヒビキカナタの呼び出しで戦嵐変幻する!」
「戦さ場に戯れ言を!」
響は、『飛竜』の座面に片膝と片手を付いて滑空したまま、向かう板額を見据える。
板額は手首を返し、二本の聖鎌を響の左右から挟んで斬り込ませる。響が単車を盾にしても、靴に仕込まれた刃を突出させて即座に蹴り込む構えである。
(凌げるものか!)
両手を上げて片足で跳び上がった響を、眩ゆい光が包む。
「やっ!?」
板額の聖鎌を、輝く人型が両前腕を立てて受け止めている。板額は咄嗟に跳び蹴りを放つ。白い人型は前進に合わせて掌を差し出し、空中ですれ違いながら板額を裏拳で跳ね除ける。
「きゃあああ!」
「光☆忍法!流星合!」
(今、大鎌が緩かった!?)
「ほほ!その通り!」
(次撃への余裕を残していたか!)
黒い仮面の番格たちが、風に乗って響を包囲する。
「「「建仁、卍拳!」」」
響の白い鎧に、番格たちが拳の鉤突き横胴打ちを一斉に叩き込む。
「とどめ!」
板額が響の鎧に、振り上げた大鎌を刺し込んで、断面を火花と炎色に縁取らせながら切り進む。
「ぐわああー!!」
「勝った!」
「光は貴女に忍び寄る」
「何っ!」
「空蝉の術。古典的な忍法です。そして!」
「「「うわあああー!」」」
響は、板額の単車の座席後部に立って、忍者刀で昴球を破壊し、峰打ちで白鎧を囲んでいる全員を叩き落とす。
「きゃあああー!」
「まぶしき朝も、伏し待つ夜も。光は貴女に忍び寄る」
【新生淡路高校】
執印 周 (しゅういん あまね):本編の主人公。あだ名はシュウ。単車の名前は赤鸞 (せきらん)
きよ:謎の女の子。メカフェチ少女ライダー
妙義 稀人 (みょうぎ まれひと):周の友達。あだ名はマレト。
源 綺子 (みなもと あやこ):周の友達。あだ名は元気。
響 彼方 (ひびき かなた):周の同級生?自称、光の忍者
【南淡高校】
平敦盛 (たいらの あつもり):南淡高校の生徒会役員。
伊藤七郎:南淡高校の総番長。響曰く平家最強にして侍大将の「藤原景清」
城板額 (じょう はんがく):南淡高校のスケ番。ゴシック少女。