表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しゃしょり座なのじゃ!  作者: 桜林路 はぴ
花津色の章
9/66

超忍界!響

 周達を、敦盛が吹き(すさ)ばせる竜笛(りゅうてき)小枝(さえだ)』の夜嵐が襲う。

「ぬおおお!」

「来た!板額さんが!」

(こいつ戦闘中にもさん付けかよ!)

(周くんは、この任務の死命を決する貴重な戦力。余計な動きに巻き込んでしまうのは避けたい!)

「周くん!」

「あん!?」

「体を張れって言ったよね!」

「ああ!」

 板額が、嵐の逆風をゆっくりと遡上し、聖鎌(せいれん)を振り上げて二人に迫る。

「ほほ!前後に虎狼の待ち構えたり!」

(ほほ。何とも恐ろしげなる陣である事よ!)

「まるで大魚の餌よの!」

「命を張るさ!『昭和』の、時代の精神を見せるよ」

 響は抑え眉で微笑むと、風に乗って敢えて単車を横滑りに回転させて大鎌を避け、板額の単車の側面へ『昭和』ナンバーの『飛竜』を衝突させる。

 響が周を一瞥する。

「喜びも怒りも、繁栄も戦いも祈りも、全てを飲み込んだ長い『時代の精神』を!見せるためにぼくは、ここに来ました!」

 響が、板額と単車の軌跡を(きり)揉み合わせながら、周から遠ざかる。

「結果出せよ!」

『小枝』の嵐の間断を襲って、周を目掛けて南淡高校の番格達が殺到する。

「ほらほら!」

「「「「ぐわあーーー!!!」」」」

 周は断続する窓硝子へ、機影を次々と切り写す様に映し換えさせながら、摩天楼の側で敵中を一点突破する。

 周は番格達を一撃で眼下へ沈めながら思惟する。

(あの笛の曲、どこかで聴いたことがあるぜ?)


 響と板額が、忍者刀と大鎌で、数合渡り合っている。

「ほほ!二手に別れて嵐の上下(かみしも)を取ろうとでも?」

「ふっ。ぼくは自由忍者。主持ちの者達とは違って、依頼の選り好みを出来る立場」

「だろうの」

「だからこそ!信用を保つ為には命を張るべき時があるんです」

「ならばここで!決着を!」

「とうっ!」

 響は、板額が振り上げた大鎌に跳び掛かって、横合いに忍者刀の峰を叩きつけた反動で、飛び過ぎる『飛竜』の座席に降り立つ。

 響は忍者刀の切っ先を板額に差し向けて、両つま先を中指を基準として正面へ向けると『飛竜』の座面を摩擦しながら靴底に足の指を噛ませて引き寄せ、軽く上げた踵に体重を乗せた。響の息が収まり、自然と肩の力が抜ける。この整息法により、公家や武家は長時間の激動時も静然と振る舞うことが出来た。響は忍術の中に、そうした操体法を受け継いでいる。

「百発百中の技前と謳われた『建仁』随一の武術の先輩にも、思う所はあるでしょうけれどもね。ふふ」

 響が、穏やかな夜風に髪を揺らさせながら微笑む。

「ほほ、この聖鎌を前にして、その命を幾つ賭ければよかろうかの」

 板額が聖鎌の石突きを単車の(あぶみ)に叩きつけると、刃と柄が二本に分かたれる。板額が両手にそれぞれの聖鎌を握る。

「この命、何度でも賭けましょう!」

「ほほ!総浚(そうざら)えよ!」

「超忍界の聖魔光月は、ヒビキカナタの呼び出しで戦嵐変幻する!」

(いく)さ場に()れ言を!」

 響は、『飛竜』の座面に片膝と片手を付いて滑空したまま、向かう板額を見据える。

 板額は手首を返し、二本の聖鎌を響の左右から挟んで斬り込ませる。響が単車を盾にしても、靴に仕込まれた刃を突出させて即座に蹴り込む構えである。

(凌げるものか!)

 両手を上げて片足で跳び上がった響を、眩ゆい光が包む。

「やっ!?」

 板額の聖鎌を、輝く人型が両前腕を立てて受け止めている。板額は咄嗟に跳び蹴りを放つ。白い人型は前進に合わせて掌を差し出し、空中ですれ違いながら板額を裏拳で跳ね除ける。

「きゃあああ!」

「光☆忍法!流星合(りゅうせいごう)!」

(今、大鎌が緩かった!?)

「ほほ!その通り!」

(次撃への余裕を残していたか!)

 黒い仮面の番格たちが、風に乗って響を包囲する。

「「「建仁、(まんじ)拳!」」」

 響の白い鎧に、番格たちが拳の鉤突(かぎづ)き横胴打ちを一斉に叩き込む。

「とどめ!」

 板額が響の鎧に、振り上げた大鎌を刺し込んで、断面を火花と炎色に縁取らせながら切り進む。

「ぐわああー!!」

「勝った!」

「光は貴女に忍び寄る」

「何っ!」

空蝉(うつせみ)の術。古典的な忍法です。そして!」

「「「うわあああー!」」」

 響は、板額の単車の座席後部に立って、忍者刀で昴球を破壊し、峰打ちで白鎧を囲んでいる全員を叩き落とす。

「きゃあああー!」


「まぶしき朝も、伏し待つ夜も。光は貴女に忍び寄る」

【新生淡路高校】

執印 周 (しゅういん あまね):本編の主人公。あだ名はシュウ。単車の名前は赤鸞 (せきらん)

きよ:謎の女の子。メカフェチ少女ライダー


妙義 稀人 (みょうぎ まれひと):周の友達。あだ名はマレト。

源 綺子 (みなもと あやこ):周の友達。あだ名は元気。


響 彼方 (ひびき かなた):周の同級生?自称、光の忍者


【南淡高校】

平敦盛 (たいらの あつもり):南淡高校の生徒会役員。

伊藤七郎:南淡高校の総番長。響曰く平家最強にして侍大将の「藤原景清」

城板額 (じょう はんがく):南淡高校のスケ番。ゴシック少女。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ