金の小枝
赤鸞の後尾が跳ね上げられ、板額は大鎌を弾き返されて、摩天楼の夜空に飛び残される。
(多少削られはしたが、刃筋を逸らせば斬撃もどうにかなるぜ)
(咄嗟!出番取られちゃったかな)
「響!言えっ!お前ら何やってる!?」
「語れば周くんの退路を塞ぐ事に!」
「言えっ!お前が何を抱えていようが、俺に何が降り掛かろうが!一撃に賭ければ、後から先行きに何かが見えてくる!言えっ!」
「ぼくらが賭けているのは『女王』!」
「取り合ってんのか!?」
「宇宙の為に!」
(フィーバー南淡町ー!)
(今夜も朝までグイグイはじけて、お楽しみ下さい!)
(ニイさんお強い!)
極彩色の照明が、薄明かりの店内を巡り差している。
「ふむ。動き出したか」
「寿永勢を中心として、平家が事を構えておる様子」
「景清の忠勤、天晴れ。されど我等は、彼奴等の戦をこそ利するべき」
「女王の力。手中に収めるのは我等よ!」
周は、夜気が巨大な呼吸に晒される感覚を覚える。
「何だ?急に追っ手が消えたぞ」
覇道を慰めるが如き、優しげな笛の音が街路上空に高鳴る。
周達の目路の先で、金襴鶴の直垂、萌黄匂の鎧兜を身に付け、金の太刀を佩き、金紗鎖が輪郭を象る綾透きの面頬を当てた、細身の若武者が単車の上に立ち、月光に照らし輝き出されて横笛を口許に構えている。
「あいつ!」
「あれは小枝!」
周は、敦盛が伏し目を上げて視線を合わせた刹那、響もろとも単車ごと烈風に吹き飛ばされる。
突風を遡上して、板額が周に大鎌を振り上げる。
周は横殴りに加速し、大鎌の襲来に先んじて赤鸞を板額の単車に激突させる。
(体勢を崩して、崩して、崩して、一撃!)
周が車体当たりでの数度の追い打ちの後、姿勢を崩した板額の単車を烈風の流れへ一挙に蹴り飛ばすと、狙いを逸れた大鎌が、響の『飛竜』を切り裂いた。
「おい!」
「なんとか!」
「嵐を起こして横っ面をはたきに来るか!」
敦盛が、横笛に粘り付く上唇を奥へ剥がして、涼しい目つきで周を見据える。
「これぞ虎狼の陣!さて、相手になるとは約したものの」
敦盛が横笛を構え直す。
「あの横笛。やはり小枝!」
「如何様、こなたまで来られようか?」
敦盛が『小枝』の唄口の縁を微笑む唇で覆う。
「腰が重てえな。お前の面にいい音させてやらあ!」
【新生淡路高校】
執印 周 (しゅういん あまね):本編の主人公。あだ名はシュウ。単車の名前は赤鸞 (せきらん)
きよ:謎の女の子。メカフェチ少女ライダー
妙義 稀人 (みょうぎ まれひと):周の友達。あだ名はマレト。
源 綺子 (みなもと あやこ):周の友達。あだ名は元気。
響 彼方 (ひびき かなた):周の同級生?自称、光の忍者
【南淡高校】
平敦盛 (たいらの あつもり):南淡高校の生徒会役員。
伊藤七郎:南淡高校の総番長。響曰く平家最強にして侍大将の「藤原景清」
城板額 (じょう はんがく):南淡高校のスケ番。ゴシック少女。