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作戦会議に入ります

 全身から血の気が引くのを感じ、思わず、一歩後ろへと後ずさってしまった。

 私の悪名はきっとこの王子様にも耳に入っているだろう、てか結構ひっつき回ったし……って、今はそんな事を気にしてる暇はない!


 媚び諂う事さえもできないまま、表情はどんどん崩れていく。口元は引きつり、ヒクヒクと頬が痙攣する。婚約者がいた事にも驚きだが、今私が問題視しなければならないのは、未来の事である。

 動揺を隠せないまま、狼狽えていると、割り込むように私と彼の名を誰かが呼んだ。


「フレディ……と、リディア様ではないですか」


 現れたのはなんと、王子様こと、フレディの付き人……嘘です、お友達、そして将来彼の片腕になる少年だ。言い忘れていたが王子様はメインヒーローに当たる攻略対象者様であり……また、お友達である彼も攻略対象者である。おかげで、王子様に匹敵するその容姿は美しく、儚くも見える。ーー中身は置いといてだ。……その事は後で話そうではないか。


 息をするのを忘れてしまいそうな美少年2人に、周囲からもどぎつい視線に、胃がもたれるような感覚がした。

 そんな視線を集められては逃げるものも逃げられない。なにぶん失礼のないような対応をしなければならないではないか。

 そう考えると、胃がギリギリと悲鳴をあげた。

 


「ご機嫌よう、陛下。そして、ジェド様も。大変申し訳ないのですが、私ちょっと体調が優れなく……少し席を外させていただきますね」


 返事を言うのが早いか、私は高速でお辞儀をしてから、駆け出した。

 もう流石に限界だ。ストレスで胃が痛い!!! 私は前世から記憶と一緒にすぐにストレスで胃痛を起こしてしまう体質を受け継いだらしい。

 今後が心配だ……。余計に胃が痛くなり、吐きそうになったのは言うまでもない。






 体調不良を使用人に訴えたところ、貸し出していた部屋の一室に通された。まだ、子供だから早く帰ってもいいんだが、それよりも心を落ち着かせる方が優先的だった。


「なんでよりによってこの世界なのよ……! いや、その前になんで私婚約なんかしたのよっ!!!」


 誰に言うでもなく、枕をベットに投げつけながら一人愚痴る。いっそ、このまま寝て忘れてしまいたい所だが、どうせまた胃痛に襲われるだろう。なら、今すぐに問題解決を優先したい。


「ここは確か私が生前やった……乙女ゲームの世界……」

 


 そう、ここは生前の私が死ぬ前にやっていた乙女ゲームの世界。タイトルは忘れたけど、内容はよくやりこんでいたから勿論覚えている。中世ヨーロッパ風、またを異世界を舞台にした物語だ。

 物語同様にキャラクター案やイラストがとてもとても綺麗だった。男の子も女の子も可愛かったのはよく覚えてる。

 ヒロインは平民生まれの美少女。しかし、あまりにも強い魔力を持っていた為、王都にたった一つだけある魔法学校に入学した。……まぁ、よくある設定で、そこからヒロインの物語が始まる。

 そして、数多くの攻略対象者を攻略して、恋愛エンド、友情エンド、ハーレムエンド、バットエンドを迎えるのだ。

 攻略対象者は合計で6人いる。先程言った通り、この世界の王子様であり私の婚約者様でもある、フレディ・ウィル・テストリティア。性格は王子様っていうよりは……、まぁまだ子供だから王子様らしい性格はしているはずだ。正直今までのリディアであった頃の彼の性格など気に留めてもいなかった。彼の物語エンドはヒロインからしてみたら、とてもいいものばかりだ。もう一度言おう、ヒロインからしてみたら、だ。


 次に、一緒にいたお友達のジェド・クライン。彼は将来、フレディの右腕になる存在で……まぁ、未来の宰相様になるような人だ。色素の薄いフレディとは正反対に燃えるように濃い赤い髪に、ダークブラウンの瞳。精悍な少年になると思われがちだが……、まぁできる男ではあるから何も言わないでおこう。

 勿論、彼のエンドもヒロインからしてみたら、とってもいいものばかりだ。むしろ、とろっとろに甘やかされるんだから。いや、ヒロインからしてみたらな?

 はた迷惑なエンドしか迎えないと言いたい所だが、まだそれは言わないでおこう。勿体ぶってるわけではない。予想はつくだろうが、私の今後が関わっているのだから、簡単に説明などできるわけがない。考えただけで、血の気が引く。余計に胃が痛くなった気がした。


 そして、迷惑エンドを迎える3人目は……まだあったこともない義理の弟。5歳になった頃にこちらの家に引き取られる。まぁ、姉や家族と仲良くなれないまま過ごして少し弄れちゃったまま学校に入り主人公に慰められる……、はいいとして、こいつもこいつで問題だ。私の将来を脅かす存在である。


 ここまで3人紹介したが、そのエンドに全て私が関わってきている。いや、まだるのだが、とりあえずは他はなんとかなる可能性が高いから紹介は省こう。

 

 さて、ここからは私が問題視している所だ。ヒロインがもし、この3人、もしくは逆ハーエンドを迎えたさい、私はどのエンドでも間違いなく死亡フラグが経っている。ちなみに私の死に方は色々あるが……まぁ、酷いものばかりで、令嬢だったのに奴隷まで格下げされて、自殺したり、打ち首にあったり、犯されて死んだり……他にもあったがここで考えるのはやめよう。


 私の死亡原因は主にヒロインに対する扱いである。私――リディアは、ただの平民の娘が強い力を持ち、自分の婚約者や他の美形に近づくことがとても気に入らなかったらしい。おかげで学校を追い出そうとし、いじめをしたり、嫌がらせをしたりしていた。おかげで攻略対象者たちの逆鱗に触れ、ジ・エンド。

 まぁ、普通に王子様からしたら、婚約者であった私が邪魔だったのだろう。義弟だってそうだ。トラウマである私が邪魔だった。ジェドは……王子様のために私を排除、ようは邪魔だったのだ。……あ、なんか泣けてきた。


 リディアの最後はひどいもので、ハッピーエンドなど存在しない。他の攻略者くらいだ。国外追放か身分剥奪など。いや、どっちにしろ辛いものなんだけどね。リディアからしてみたら。


 思わず、ため息が溢れた。なんてあっけない人生だったのであろう、リディア。それが自分の身に起こるというのだ。今から考えるだけで、胃がぎりぎりする。痛い。

 さすがに私はどんなに胃が弱くて、ストレスに負けちゃうような身体でも、自殺願望はない。ならば、私はこの未来を変えなければならない。

 そもそも私はリディアであってリディアではないのだ。そう簡単に私の人生を乙女ゲームにくれてやるわけには行かない。


 そうと決まれば、今から自分の未来を考えなければならない。

 そうして、今後の対策を練らなきゃいけないが、そこまでの向上心は……いや、命の方が大切なので立派な貴族令嬢になります。


 打倒! 攻略者! 私の胃に優しい生活を! 脂っこいものよりも質素なもので!


 そう自分を奮い立たせ、今からでも屋敷に戻ろうと思ったのだが、何度も言うとおり、胃が痛い。

 おかげで帰るのはゆっくり休んで行くことにした。


 ……とりあえず、王子様と宰相には当分合わないようにしよう。ばいばい、私、いや、リディアの初恋の人。



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