5 アカリ②
はあっ はあっ
深い森の中
ロナはエドを連れ去ったトロッコを追い、線路に沿って走り続ける。
はあっはあっ
何でこんなにも私は必死なんだろう…
確かにあいつらの役に立とうと決意したけれど、それまではあいつを敵だと思ってたのに…
…出会った時からあいつは親切で、刃まで向けた私を仲間と呼んだ。
なんなんだ。
焦る。 不安になる。
私を安らかにしてくれるあの笑顔は失いたくない…
ロナの息は荒くなる。
「…!
…洞窟?」
森が明けたと思うと、そこは絶壁であり、線路は洞窟の奥深くの闇に消えている。
─…エド…!─
「…!」
扉…?
洞窟を30分程歩くと、行き止まりとなっており、そこには扉が岩壁に埋まっているようにして取り付けられていた。
ここまでの間、二人は言葉を交わさなかった。と言ってもエドは話し掛け続けていたのだか。
「ここがお前の家なん?」
「…」
ワインをすべてエドに持たせていた男の子は、低い位置にあるドアノブに手を掛けガチャりとそれを開けた。
「おー…」
中に入ると、そこは洞窟とは思えないほど規則的な清潔感のある部屋であった。
しかし温かみがあり甘い雰囲気のそれは、エドにとってどこか懐かしいような気がした。
「お帰り、ヤオルク。
…何を連れてきたのかい?」
不意に部屋の奥から中年の女性のこえがする。
奥に進むと、一人の女がソファーの上で寝そべって、足を遊ばせていた。
「…あ、こんにちは。」
「こんにちは。……おや、久し振りかな?」
「…?いや…初めましてじゃ」
それを聞いた女は眉をひそめ口元に笑みを含み そうかい、じゃあ初めまして。 と挨拶をする。
いつの間にか男の子は女にしがみつき、こちらをジトと睨み付けていた。
「この子はヤオルク。…ちと訳合って喋れないのさ。だが優しい子なのだよ」
彼女は男の子を紹介する。
あ…だからずっと黙ってたのか
「どうやらヤオルクを手伝ってくれたみたいだけど、どういう了見でこんなとこに?」
「!…あーそれが、突然現れたトロッコに連れ去られて…」
「やはりな…
ヤオルク、お前まだまだだね」
ヤオルクは頬をぷうと膨らませる。
女はククッと笑いを零すと、その子の頭を優しく撫でた。
「?」
「お使いを頼んでたのさ。今日は大荷物が来るんだが、届くまでに時間が掛かるだろ?
なのに無性にワインが呑みたくなってね。
だからこの子にトロッコで取りに行かせたけど…
何せ人見知りだ。
止まりもせず勢いで取って、その上余計なもんまで連れてきてしまったみたいだねー」
またククッと笑う。
「え…、じゃあこのワインは俺たちが持ってきたワインで、その届け先はここだったってことですか」
「そうなるね。
残りの荷物は今どこだい?」
「俺の仲間が運んでると思いますけど…」
あいつらは俺を信じて、仕事を放棄することなんかないだろう。
「じゃあまだ時間が掛かるね。どうだい、一緒にワインでも呑もうじゃないか」
「いや、俺はあいつらを迎えに行かないと」
「この仕事の後にまだ何か用事でも?」
「無いで─」
「─ならいいじゃないか。
…お互い罪人同士、語らおう」
………………!?
「な…」
女は口角を僅かに上げ、ニヤリと笑った。




