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3 に気付く


ザザ…ン ザザ…ン


波の音がする…。

夜が明けたようだ。瞼の裏がとても明るい。


まだ眠いので、目を閉じたまま昨日のことを整理することにした。


自分の街の貴族の屋敷に盗賊が入って、そいつらを追ってみると実は海賊で、取り抑えることも出来ずに故郷との別れを決意して、海賊にご飯を与えられて、このふわふわのベッドで眠りに就いたと。


……ん?


ガバッと勢い良くロナは起き上がる。

見渡すとここは部屋の中で自分はベッドの上だった。


待てよ…?昨日は甲板の上で寝たんじゃ…?


考えを廻らせている所にガチャリとドアの開く音がして、奴が入って来た。


「お。おはようさん。良く眠れたかぶっ」


枕が顔面にクリーンヒット。


「貴様、ベッド!!」

「なんやいきなり…。俺はベッドじゃないけど?俺の名前はエド。まあ、これから長旅ですけど宜しゅう」


とまた、人懐っこい笑顔を見せる。


「何が『宜しゅう』だ!私は甲板の上で寝てた!!」

「…ああ、そこやと風邪引くと思ってな。俺が運んだんやけど。あ、ちなみにここ俺の部屋」

しかしまだ怒っている様子の彼女を見て、エドは悟る。


「心配せんで。俺はちゃんと別の部屋で寝ましたからー」


ヘラっと困ったように笑うと、投げつけられた枕をベッドに置く。


「………」

「昨日のことがあったから、当分あんたの街には寄れん。あんたはどうする?途中で船を降りるか、このまま俺らと旅するか」


小さな子供に話し掛けるようにエドは優しく言う。


「当たり前だ。このまま目の前の海賊を野放しに出来るか」

「…だから海賊じゃないって。まあ、いいや。決まりやね。そこ、朝食置いとるけぇ。適当に食ったらそこに居るディールにここの伊呂波を教えてもらいな」


いつの間にか、ドアの所にディールという男が立っていた。頭にはバンダナを巻いており、その下から茶髪の癖っ毛が顔を出している。

じゃあなとエドは立ち去ろうとすると、思い出したようにこちらを振り向く。


「そういえば、名前、あんたの名前聞いてなかった」

「海賊なんかに名乗る名などない」


それを聞くや否や、横で会話を聞いていたディールが文句を言う。


「おい。てめえ色々と世話して貰っといて、何様のつもりだ。兄貴の人の良さに付け上がってんじゃねぇぞ女!」

「ディール」


エドが怒るディールを宥める。

「もし貴様らが海賊ではないと証明出来たなら教えてやっても構わないがな」

「兄貴!!俺コイツと一生気が合わねぇ!!」

「ははは!…まあ落ち着け。その条件ならすぐ名前聞けそうやし、これから一緒に旅する仲間や。仲良ういこうぜ」


げぇと不機嫌な顔をする部下に苦笑しながらエドは二人残して部屋を後にした。


「誰が仲間だ」


ボソッと愚痴る保安官をキッとディールは睨み付けるが…


「…?てめえ何笑ってんだよ」

「この船の船長は可笑しな奴だな…?敵の私に何故こうまで厚くもてなしてくれるのか」

「兄貴は呆れるほどお人好しなんだよ。当分故郷に戻れねぇあんたに同情したんじゃねぇの?俺は少しもしねぇけどな!!てめえの自業自得だし!!…ほらさっさと食っちまえ。兄貴の頼みだから断る訳にもいかねぇ…船の案内してやるよ。勝手に船んなか探検されても邪魔だしな」



海賊の中にはああいう可笑しな奴もいるのだな…


ロナは一人感心していた。










「んで、この扉を開けると甲板だ」

ディールが扉を開けると下には甲板で忙しなく働く船員の姿があった。

「兄貴ー!」


そう呼ぶと、船員に指示をしていたエドが顔をあげ、こちらに気付くと階段を駆け上がってきた。


「丁度よかった。もうそろそろ次の街につくけぇ、ディールご苦労さん」


交代するようにディールは甲板へと降りる。


「どうだ、ディールに色々と教えてもらえたか」

「‘一日一笑顔’とかなんとか…ここは店屋か」

「うん。一応店屋だけど?」

「は?海賊船だろ」

「だから違うって…旗見てみろよ。商船のマークだ」

「旗を偽装して港に堂々と停泊する海賊船は沢山いる」

「俺らは違うの。まあ、ついてこいよ」


港に着くと、エドは部下を何人か連れて街へと向かう。



ここはコロナードという街らしい。

通りには店が建ち並んでいて、故郷では見たことのないものが売られている。

それにしても…人が多いな。とても賑やかだ。


「なんだ、こんな賑やかなとこは初めてなん?そんなキョロキョロして…」

「!!…悪いか。…故郷は人口が少なかったからな。それにここは珍しいものばかりだ」


いつの間にこんな話す仲になったんだよ。


自分でツッコミながら話を続けていると、あるものに目が止まり、ロナは立ち止まってしまう。


「どした?……ほぅ、綺麗な首飾りやなぁ」

貝殻や綺麗な石などで飾り立てている首飾り。

死んだ父さんが昔、異国の土産と言って母さんにあげたものとそっくりだ。


ロナが昔を懐かしんで首飾りを眺めている様子を見て、エドはニッ笑うと


「ほら、道草食っとる暇ないけ、行くぞ」


と足早に目的地へと向かった。








「ここが俺らの仕事場」


そう言われて、見るとそこはこの街の役場だった。


「!…貴様ら、役場を襲うのか…!!」

「……………あのさ、その考え方いい加減捨てない?」


中に入ると、エドたちは真っ先に何やら紙が沢山貼り出されている壁の前に立った。


「これは…」

「依頼用紙だよ。俺らは適当に街に立ち寄って、こうやって毎回仕事とってんの」

「海賊…が?」

「だから、俺らは海賊じゃないっつってんじゃん」

「じゃあ!何故屋敷に忍び込んだ!!あれも依頼だったわけか!?」

「あー…あれはごめん。こいつらの訳あり趣味」

「たち悪い趣味持つな!!」


…呆れた。じゃあ私はこいつらのただの船旅に参加しただけなのか?保安官としての役目も果たさず、家族にも会えずに間抜けに死んでいくのか!!

これじゃとんだつまらない喜劇だ。

くだらなさすぎて涙も出てきやしない…


明らかに絶望している様子の彼女を見て、エドは慌てて声をかける。


「自由気儘に旅するのもいいぜ!!今までの暮らしとは比べ物にならんくらい、面白く楽しいし!!なっ」


周りの船員に同意を求めると、皆が頷く。一人を除いて。


「……ほら、言わんこっちゃない。あん時兄貴の言うこと聞いてりゃ、こんなことにはならなかったんだよ」


「ディール…!」


ロナは何も言い返せなかった。今までの彼らに対する自分の態度を忌ましめ、羞恥に陥っている。何とも言い表し難い空気が立ち込める中 「…今回請ける依頼はどれ?」徐にロナが口を開く。

「へ?…ああこれやけど?」

「…」

「おい…?…!!」


突然キッとエドを睨んだかと思うとこう言った。


「こうなったら、私の全身全霊を尽くしてあなたたちのお役に立つまで!!これから宜しく!」「お……おう」


そう!もう過ぎたことにくよくよしていてはダメだ!これからは第二の人生として新しい道を歩んで行こう!!前向きに生きればきっと良いことはいつか起こる!!


そう自分を奮い立たせる彼女の瞳は輝きを放っていた。

そんな様子の彼女を見て、エドたちは笑いを堪えきれなかった。

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