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痴女と野獣の狂想曲《カプリッチオ》  作者: おうさとじん
序章、痴女と野獣の前奏曲《プレリュード》
2/12

第0話、またの名をプロローグ

注意事項

前もってお知らせ致しますが、王子は絶対に人の形になりません。


エタからの復帰を目指し、改稿からはじめました。

『夢破れて…るかもしれない』


 ビールは好きじゃない。あと、人工甘味料のうちスクラロースとアセスルファムKが一緒になっているカロリーオフの飲み物も苦手。最近は缶チューハイのほとんどに入ってるから、人工甘味料が入っていない、もしくはスクラロースとアセスルファムKじゃない組み合わせを探さないといけない。

 ワインは酸っぱいし、日本酒は辛い。焼酎も。だから基本的にお酒は好きじゃない。

 それでも、今日は薬局に行って、成分表を見ながらアルコール度数が高い缶チューハイを3缶買った。


 自分が世界一不幸だとは思わないし、悲劇のヒロインに酔っちゃってるタイプの人を見るとうわーって思うけど、でもだからって自分の不幸を嘆いちゃいけないわけじゃないし、いつもポジティブでいることが素晴らしいことだとも思わない。


 私は不幸だ。


 二十九歳独身、天涯孤独。

 先日、バイトから正社員になった印刷所が書籍電子化の流れに負けて倒産した。私はずっと営業補佐をしていたから、どんどん発注数が減るのを目にしていた。社長も、社員も、みんなでアイディアを出し合って、なんとか復活できないかって頑張ってきた。

 でも、だめだった。

 別に、私自体は本を滅多に読まない。どちらかというと映画とかドラマが好きだし、それらをみて面白かったから原作読も!とかも思わない。暇な時間は動画を見ている。それでも、数日前まで感じていた、工場から事務所まで漂ってくるあの紙の香りが恋しい。


 テレビでは大好きな映画の実写版が流れていて、心優しい野獣が今まさに息絶えようとしている。美女の愛の言葉に魔法が溶けて行く。私はチャプターを飛ばしてスタッフロールを眺めながら、アルコール度数九%のお酒を呷った。

 「お風呂、入ろ」



 私は陽気に歌を歌っていた。 


 反響して綺麗に聴こえるのはここがお風呂だからで、気分が良いのはさっきまで大好きな映画を見ていたからだ。もちろん、今歌っている曲はその映画で歌われる劇中歌。


 「××××~、××××~、×××、××××××××~×~」


 声真似すらできるほどに歌いこんだ歌をご機嫌に歌いながら、温ぬるくなった発泡酒を口に含む。喉を鳴らして飲み干すと、缶を湯船に沈める。ボコボコボコと気泡が浮き上がり、缶の中が水で満たされると、今度はその缶を頭の上に持ち上げ、飲み口を下向ける。コプッコプッコプッと、不規則に降ってくるお湯で頭を濡らすと、また缶を湯船に沈める。馬鹿な行動を何度も繰り返す。そう、私は盛大に酔っていた。


 酔いもする。持っているものなんてあと二か月なら何とかなる貯金ぐらいで友人たちはみんな子持ちとなり忙しく、もう何か月も連絡を取っていない。酔って夢想して気を紛らわす以外の手段を私は持っていなかった。


 あぁ、現実を思い出した途端に幸せな気分が吹っ飛んだ。ちょっと、心臓がちくりと痛む。友人には変人と言われている私だが、何気に小心者なのよ?いつか王子様が……とか思っちゃう乙女チックな女の子(三十手前)なのよ?ウフフ


 「ふふ、運命って何よ……?神様がいるなら、私の運命を教えてよ……」


 リアルにそんなことを呟けちゃうくらいの女の子(三十手前)だった。


 ジャボンと勢いよく、湯船に沈み込む。もちろん、年齢にふさわしく身についた脂肪の影響で浮いてしまうので、両手両足を駆使して、なんとか完全にその身を沈み込ませた。

 酔ってるの!酔っての行動だから許して!と、誰にとも無く許しを請う。それよりも、全身が水に浸かったことで悦に入る。酔っ払いとはこんなものである。


 そうして、鼻から息を吐き出したところ、一瞬息を吸おうとしてしまい、水が鼻腔を思い切り刺激する。その瞬間、口から大量の息を吐き出し、空気を求めて踏ん張っていた手足を離したのだが、浮き上がるはずの体が浮き上がることは無く、焦って水を掻いたと言うのに、空気は遠く、狭い湯船で足を掻けるはずが無いのに何故か水の領域は広がり、私は墜ちて行った……

不定期連載です。


2020/9/13 改稿

2020/9/21 追加・改稿

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