表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

執筆速度向上訓練1:ゴミ出しの男

作者: らてーる

遅筆改善のため30分以内に作品を一つ書き上げるという訓練を実施

内容に矛盾や改善点が多々あるが容赦されたし

 玄関のドアを開け、外へ出た。

 こうして毎週、ゴミ収集の日に重たい袋を抱えて、約200m離れたゴミ捨て場へ捨てに行くのが私の日課になっていた。ゴミ捨てだけではない。皿洗いや洗濯、果ては風呂掃除に至るまで、家事全般は私の役目であった。まさに「尻に敷かれた夫」というわけだ。

 ゴミ捨てが終わった後も、妻を起こした後、電車に揺られ出勤し、奴隷のように働かなければならない。

 私は舌打ちをして、汗でずり落ちそうなゴミ袋をもう一度握り直す。早朝とはいえ、起きたばかりの体に真夏の蒸し暑さは非常に堪えた。

ゴミ捨て場まで後30mと言ったところだろうか。突然足の裏を硬い、異質な感触が襲った。ぐり、と足首が曲がり、ゴミ袋を抱えたまま後ろへ倒れ込んだ。

 ごそごそと袋の中身が飛び出してくる。頭をしたたかに打ちつけた私は、後頭部を押さえたままその中身を茫然と眺めていた。

 なんだ、これは。

 そこには私の知らない、恐らくブランド物と思われる衣類が大量に散乱していた。それは私の目には新品同様に見えた。着古した物ではない。

 妻は、私の小遣いを切り詰め、こんな物を買って、ろくに着もしないで捨てていたのだ。

 頭がガンガンと痛む。真夏の日差しが、朝から泣き叫ぶセミの声が、私の心を酷く苛立たせた。

 こんな物を。こんな物を。こんな物を。

 頭の中で呪詛のように呟いていると、近くを車が通り、我に帰る。

 足元にしゃがみ込み、飛び出た中身を掻き集めた。と、衣類の間に何か固い物を感じた。取り出してみる。私は、あ、と声を上げた。

 これは、俺の、俺の集めていたフィギュアじゃないか。

 私が血眼になって探し回り、ネットオークションで少ない小遣いをはたいて買った魂の数々は、体をおかしな方向に曲げられたままゴミの中に埋もれていた。

 ちぎれて体から離れた戦隊ヒーローの首が、私を見つめてくる。

「必ず悪を打ち倒す!それが正義のヒーローだ!」彼の決め台詞が頭の中に蘇ってくる。

 ああ、そうだね。悪は倒さないと。

 私はゆっくり立ちあがった。太陽は明るく照りつけ正しい方向を照らし、セミは大声で、テレビの前でヒーローを応援する子供のように、声援を送っていた。

 家への道のりを引き返す。玄関の前まで戻ると、妻の声が聞こえてきた。

「あんた!何で起こさなかったのよ!どこに隠れてんのよ!早く出てきなさいよ!」

 ああ、妻ではない。怪人だ。妻を何処かへ隠して、悪さをしようというのだ。

「必ず悪を打ち倒す。それが正義のヒーローだ」

 ヒーロー達の誓いを胸に、私は玄関のドアを開けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ