執筆速度向上訓練1:ゴミ出しの男
遅筆改善のため30分以内に作品を一つ書き上げるという訓練を実施
内容に矛盾や改善点が多々あるが容赦されたし
玄関のドアを開け、外へ出た。
こうして毎週、ゴミ収集の日に重たい袋を抱えて、約200m離れたゴミ捨て場へ捨てに行くのが私の日課になっていた。ゴミ捨てだけではない。皿洗いや洗濯、果ては風呂掃除に至るまで、家事全般は私の役目であった。まさに「尻に敷かれた夫」というわけだ。
ゴミ捨てが終わった後も、妻を起こした後、電車に揺られ出勤し、奴隷のように働かなければならない。
私は舌打ちをして、汗でずり落ちそうなゴミ袋をもう一度握り直す。早朝とはいえ、起きたばかりの体に真夏の蒸し暑さは非常に堪えた。
ゴミ捨て場まで後30mと言ったところだろうか。突然足の裏を硬い、異質な感触が襲った。ぐり、と足首が曲がり、ゴミ袋を抱えたまま後ろへ倒れ込んだ。
ごそごそと袋の中身が飛び出してくる。頭をしたたかに打ちつけた私は、後頭部を押さえたままその中身を茫然と眺めていた。
なんだ、これは。
そこには私の知らない、恐らくブランド物と思われる衣類が大量に散乱していた。それは私の目には新品同様に見えた。着古した物ではない。
妻は、私の小遣いを切り詰め、こんな物を買って、ろくに着もしないで捨てていたのだ。
頭がガンガンと痛む。真夏の日差しが、朝から泣き叫ぶセミの声が、私の心を酷く苛立たせた。
こんな物を。こんな物を。こんな物を。
頭の中で呪詛のように呟いていると、近くを車が通り、我に帰る。
足元にしゃがみ込み、飛び出た中身を掻き集めた。と、衣類の間に何か固い物を感じた。取り出してみる。私は、あ、と声を上げた。
これは、俺の、俺の集めていたフィギュアじゃないか。
私が血眼になって探し回り、ネットオークションで少ない小遣いをはたいて買った魂の数々は、体をおかしな方向に曲げられたままゴミの中に埋もれていた。
ちぎれて体から離れた戦隊ヒーローの首が、私を見つめてくる。
「必ず悪を打ち倒す!それが正義のヒーローだ!」彼の決め台詞が頭の中に蘇ってくる。
ああ、そうだね。悪は倒さないと。
私はゆっくり立ちあがった。太陽は明るく照りつけ正しい方向を照らし、セミは大声で、テレビの前でヒーローを応援する子供のように、声援を送っていた。
家への道のりを引き返す。玄関の前まで戻ると、妻の声が聞こえてきた。
「あんた!何で起こさなかったのよ!どこに隠れてんのよ!早く出てきなさいよ!」
ああ、妻ではない。怪人だ。妻を何処かへ隠して、悪さをしようというのだ。
「必ず悪を打ち倒す。それが正義のヒーローだ」
ヒーロー達の誓いを胸に、私は玄関のドアを開けた。