王の猫に転生したらしいので、とりあえず寝る。2
陛下の人の猫になって二ヵ月くらいが経った。
なんだか大きくなっているらしい。
自分では分からないんだけどね。
「寝るぞ」
『はぁい!』
人間から猫に転生して、どうなるこっちゃと思っていたけど、まぁまぁ猫生を楽しめている。
陛下の人の枕元でぐるぐるぐるぐるグルグル回っていたら、早く座って寝ろと怒られてしまった。
『こう、いい感じの場所がないのー! バチコンときた場所じゃないと眠りづらいのっ』
「同じ場所で回ったところで意味ないだろ……」
陛下の人は分かってない。
ちゃんと、バチコン来るとこがあるんだよ! あ、ほらね、あったあった、ここだわ。
ふぃぃぃと座ったら、陛下の人が「何があってそこなんだよ。そこでいいなら何で何回も回転していたんだ」とかブツクサ煩かった。
陛下の人って、わりと独り言が多いし、大きい。
私が『にゃー』って返事してあげてるから、変な人扱いされずに済んでるとこ、あると思うよ?
私に感謝のナデナデをするといいよ。
陛下の人の枕の横でしっかりと寝て、朝方になったらウン動会の開始。
人間のときにはなかったんだけど、ウンチをする前とか、したあととかに、腸が動くせいなのか変なテンションになる。
――――とりあえず、走っとくか!
うぉりやぁぁあぁぁうひょぉはぉぅぅぅ!
おんどりゃあぁぁあぁぁぁぉぉおん?
全力で陛下の人の寝室を走り回って、キャットタワーに登ったり飛び降りたり、ベッドに飛び乗って跳ねてみたり。
『ハァハァハァハァ……うん、今日はこれくらいにしてやるか』
疲れ果てたので、陛下の人の横に戻ったら、顔面鷲掴みにされた。
「毎朝毎朝、お前はどうしてそうも暴れるんだ。昼も夜も遊んでやってるだろ」
『そんなこと言われても、習性だし……ごめん?』
「…………ったく。もうひと眠りする。お前も静かに寝ろ」
『はあぁぁい!』
「煩い。耳元で叫ぶな」
『ごめぇん!』
「……ハァ」
陛下の人が大きな溜め息を吐いて目を閉じた。そっと、私の頭を撫でてから。
陛下の人って、ほんとツンデレだし、猫の下僕よね。
これからも私を存分に愛するといいわよ。
ってことで、とりあえず寝る!
■■■
番は、子猫だった。
竜王の番が、産まれたばかりの子猫ルナ。
厩番から引き取って二ヵ月が経ち、色々分かったことがある。
『そんなこと言われても、習性だし……ごめん?』
コイツはたぶん元人間なのだろう。ひょんなことから前世の記憶を持っているとかの。
ただ、記憶や意識が猫本能に引っ張られてしまっているようで、時々変な文句を言っているのを聞く。
『なぁんでこんなにお魚が美味しいかなぁぁぁぁ。メンタル的にはお肉が食べたいのよぉ。高いお肉っ。陛下の人の美味しそうな高いステーキ! 私、お肉派だったのよぉ! なのになんでお魚の方が美味しいかなぁぁぁ。猫か、猫だからかぁぁぁ!』
そのステーキをよこせ! と煩かったから、シェフに味付けなしで肉を焼かせたものを細切れにして与えてみた。
そうしたら、バクバク食いながらも魚の方が好きだと判明したらしい。
猫だからというよりは、たまたまそういう舌だったんじゃないかと思うんだがな。
どうやら、ルナの前世では『猫は魚』という認識らしい。
「…………次は魚にするか?」
『うん! ってか、陛下の人って空気読むの上手いよねぇ。あ、だからこそ王様がやれるのか! 独り言は凄いし、猫に話しかけるイタいヤツだけど!』
「……」
ルナが何を言っているのか、当初から俺には分かってるんだが、ルナはそれに気付いていない。
面白いからそのままにしているが、いつバラそうかと悩んでいる。
一方的に話しかけるのは少し淋しい。だが、俺が色々知っているとバレしまったら、今みたいに自由奔放に騒いでいる可愛い姿が見れなくなるかもしれない。
……まぁ、コイツに限って大人しくなることはなさそうなんだが。
『ナデナデしろー』
ベッドで寝ていると、額を俺の頬にグリグリと押し付けてきて、そう言うことがある。
これもまぁ習性なのだろう。
ひとしきり撫でてやったあと、鼻の頭にキスをすると、満足そうに笑いながら俺を『下僕』と呼ぶ。ルナの世界では、猫の飼い主のことをそう呼ぶらしい。
まぁ、番と下僕は大差ないのだろうな。
ルナが何をしようとも、全てが愛おしく感じているからな。
まぁ、バレると面倒だから平静を装うが。
番とはままならないな。
―― つづく? ――




