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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
寂しがりや

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3/25

#3



今からずっと昔のこと……引き出しの奥の奥に仕舞われた薄暗い記憶が蘇る。


まだ中学生の自分が、親友と川沿いを歩いて帰る光景が途切れ途切れに現れた。繰り返し繰り返し、短い光景を何百回と見ている。

“彼”はとても優しい声で話してくれる。俺のくだらない愚痴を笑って聴いてくれる。

華奢なくせに頼りがいのある手で引っ張って、コンビニで必ず買う唐揚げを半分こしてくれる。アイスを買ってる時は夏だとか、肉まんを食べてる時は冬なんだとか、その姿で何となく季節を感じていた。

可愛らしい顔で微笑んでいることも分かる。

けど顔自体は思い出せない。モヤがかかった様に薄まって、視認できないでいた。

大切だったことだけを覚えている。後は全然だ。口癖も仕草も、何も分からない。


名前。────名前も思い出せない。


いつも大声で呼んでいたのに。あんなに大事な人だったのに、苗字も名前も思い出せない。それはどうして……。


考え抜いた末に浮上した答え。それは、俺は“彼”をわざと忘れようとしているのかもしれない。

けど忘れたいわけがない。未練がましくいつも思い出している。たった一言でいい、謝りたいんだ。「ごめん」って。そんなつもりじゃなかったんだよ、って。


彼の顔が分からないのに、頭のどこかで分かってる。彼は俺が放った一言で深く傷ついた。

絶望の一日。

あの日を境に彼は俺の前から姿を消した。どれだけ待っても学校に来なかった。卒業式も同様、何年待っても現れない。波に攫われ、沖に流され、存在ばかりが薄れていく。そして誰も彼のことを口に出さなくなった。


記憶が色褪せれば存在も消えていくんだ。


彼が消えたスクランブル交差点。

そこへ行かせてしまったのは、間違いなく俺なのに。





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