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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
行方知れず

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23/25

#6



「そういえば白露、ちょっと思い出したんだ。交差点ってのは危険な場所らしいぞ」

「へぇ、どうして?」

「十字路には怖い魔物が住み着いていて、やってきた人を迷わせるんだと」

自分で話していながら笑ってしまう。非現実的な話だけど、欧米では伝えられてる話らしい。白露は腑に落ちた様子で頷いていた。

「何かその感じ分かるかも。この世界にも魔物がいるってことかな!? 俺何年もここにいるけど、会ったことない……!」

「じゃあここにはいないんじゃないか? いたら、俺も全速力で逃げてるよ。オカルトだもんなぁ……でも信じてないと、ここには来れないんだろうな」

時間を合わせて十字路に入るだけなら、今頃何千何万という人がこの世界に来ているはずだ。しかしここにいるのは白露と自分だけ。一体、どんな条件が合致したのだろう。


…………。

大事なこともここにいれば忘れていく。

いつか、自分のことすら忘れてしまう。


「清心?」


動かない自分を不思議に思ったのか、白露は心配そうに近付いてきた。

俺は何がしたいんだろう。この先どうなりたいんだろう。

感情ほど不確実なものはない。目に見えない、信じられない。自分のことすら。

この世界の時間は止まっている。だから考えるよりも先に彼を引き寄せた。

「んっ!」

かける言葉が見つからない時は、そもそも口を塞いでしまえばいい。そんな愚直な発想が蠢く。


感覚だけ、何分、何十分と経過していく。深く、深く、暗い泥の中に潜り込んでいく。きっともう、這い上がることはできない。


────そう思って諦めたら、ここで終わりだ。

「白露」

清心は床に膝をついた。



「俺と一緒に、帰ろう?」

「え……」


振り向き手を差し出す。

床に寝ている少年に向かって、真っ直ぐ伸ばした。いつでも触れられる距離にいたから。


「大丈夫だよ。帰ってもお前は独りじゃない。俺がいるだろ」

「……ううん。いないよ。だって清心は俺以外に大切な人がたくさんいるでしょ? 友達も家族もいて、俺とずっと一緒にいてくれるわけじゃない。俺がいなくても困るわけじゃない。それじゃ無理だ。向こうに帰りたくない」


白露は清心の手を取ろうとせず、自身で起き上がる。色素の薄い肌が、さらに色を失くしていた。


「誰もいない場所なら独りでも耐えられる。でも皆いる場所で独りは嫌なんだ。臆病で、我儘で、子どもみたいだって分かってる。でも、それでも嫌なんだよ。……そんな気持ち、幸せな清心にはわからないでしょ」




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