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十時十分、十字路で。  作者: 七賀ごふん
寂しがりや

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1/25

#1



【十字路】

またの名を四つ辻。古くから道が二本交差する場所は魔物が住み着くと伝えられている。世界各地で危険視される怪奇的な場所のひとつ。

直接何も見えなくても、十字路に踏み入る際は道標の日の当たり具合をよく確かめて(南に向いているのに日に焼けてない、降雨中にも関わらず地面が乾いている等)、異常がないか最大限注意を払うこと。



──────────────


「何だ、もう帰っちゃうの? これからが楽しいのに!」


終電が迫る深夜零時。外の張り付いた静寂と反対に、クラブ内の賑わいは最高潮にあった。

今日は前々から予定されていたイベントの日だ。この界隈では一番大きなゲイバーで、皆朝まで飲み明かすつもりで来ている。

自分もその輪に入るつもりだったのに、胸の高鳴りがぱったりとやんでしまっていた。いつもの様にはしゃぐ気にはなれず、踵を返す。


「ごめん、また来るよ」

「マジか。まぁしゃあないな。気をつけて帰れよ」


顔馴染みの常連に頷き、店を出た。


秦城清心(はたぎせいしん)、二十五歳。都内の広告会社で営業をしている青年。


そして、同性愛者。特筆すべきはこの一点だが、私生活でそれを前面に出すことはない。社会的な印象を優先し、普段は異性に興味があるように振舞っている。

しかし夜になればこういった出会いの場に顔を出し、人脈を作ることに奔走していた。

恋人という特定の対象が欲しいわけじゃない。何なら一夜限りの相手で構わなかった。

たった一瞬でも良いから、現実を忘れさせてくれる刺激が欲しい。

そう思って顔しか知らない相手とも関係をつくったりした。今日もそのつもりで、気になるタイプがいればお持ち帰りするつもりだったのに。おかしいな……。


────急に嫌なことを思い出してしまった。


これではとても楽しむことはできない。

それに“嫌なこと”という表現も微妙だった。正確には、清心にとって大切な記憶でもある。乱暴に扱ってはいけないが、だからといって素敵な思い出というわけでもない。

辛く、悲しく、自分が許せない。そして尊く、激しく焦がれている。……大切なひとを想う記憶。


十年前の今日。

それは清心が、自分という人間を呪った日だった。





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