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チャッピーの日常4

俺は飲んだくれの冒険者ちゃっぴー、今日もギルドの酒場で飲んだくれている


「またそんな顔して……」エフィーナが優しく笑った。その笑顔を見て俺は我に返る。「おっと……」


「王女の護衛任務、上出来だったじゃない」彼女は嬉しそうに言った。「まさかあなたに褒められるとは思わなかったよ」


「ふふ……でも結局、力を抑えきれなかったんでしょう?」彼女の目は鋭く光る。


「バレたか」俺は肩をすくめた。「あの王女様、なかなか面白いやつだな」


「まあね……」エフィーナは意味深な微笑みを浮かべた。「ところで今夜はどうするの?家に帰る?」


「もちろん帰るさ。エフィーナと暮らしてるんだからな」


つい最近結婚したばかりだ。彼女とは長い付き合いだけど、お互いの生活リズムを変えたくなくてギルドで働いているエフィーナと家では一緒に過ごすというスタイルだ。


「そうね」彼女は嬉しそうに微笑んだ。「今日は特別に良いワインを開けようと思ってたの」


「マジか!早く帰ろうぜ!」


そう言って席を立とうとした瞬間、ギルドの扉が勢いよく開いた。一人の青年が息を切らせて駆け込んでくる。


「助けてください!」青年は俺たちを見つけて駆け寄ってきた。「私の村がウルフの群れに襲われているんです!」


「ウルフ?」エフィーナが眉をひそめる。「どれくらいの規模ですか?」


「三十頭以上います!昨日から畑を荒らされて……このままじゃ冬を越せません!」


「三十頭か……」俺は顎に手を当てて考える。「それくらいなら俺一人でもいけるか」


「チャッピーさん」エフィーナが静かに言った。「忘れてないわよね?あなたの腕輪は壊れたままよ」


「あっ」俺は手袋を見た。確かにもう片方は修理に出している最中だ。「でも大丈夫だって!ウルフくらい素手で……」


「ダメよ」エフィーナは厳しい表情で首を振った。「代わりのものが来るまで依頼は受けられないわ」


「くそぉ……」俺は項垂れた。「すまない坊主……他を当たってくれ」


「そんな!」青年は泣きそうな顔で訴えた。「他の冒険者さんたちはみんな忙しいって……」


その時、エフィーナが少し考え込んだ後、小さな箱を取り出した。


「これを使って」彼女は箱を開けて一本の杖を見せた。「簡易封印具よ。これを持っていればある程度力は制御できるわ」


「本当か!ありがとうエフィーナ!」俺は喜んで杖を受け取った。


「ただし条件があるわ」彼女は人差し指を立てて言った。「絶対にこの杖から手を離さないこと。そして無理はしないこと。わかった?」


「ああ!約束する!」


エフィーナと俺のやり取りを見ていた青年が不思議そうな顔をする。


「あの……お二人は夫婦ですか?」


「そうよ」エフィーナは少し照れながらも誇らしげに言った。


「わぁ……素敵です!」青年は純粋に喜んでいるようだ。


「さてと」俺は立ち上がり、青年の肩を叩いた。「時間もないし早速行くか」


「ありがとうございます!」青年の顔が輝いた。


ギルドを出た途端、俺は全力疾走で村へ向かう。村までの道のりは馬車で半日ほどだが、俺にとっては小一時間程度だ。


村に到着するとすでに酷い有様だった。家畜小屋が壊され、畑は荒らされている。


「ウルフ共め……」俺は低く呟いた。「おい坊主、家族は安全か?」


「はい!父と母は避難所にいます!」


「よし。俺が引きつけるから坊主は村人たちを集めておけ」


「わかりました!」


青年が走り去るのを見届けてから俺は深い森の方へ歩を進めた。杖を握りしめながらウルフの気配を探る。


「出てこいよ!」俺は大声で叫んだ。「ここは俺の縄張りだ!」


その声に反応したのか、木々の間からウルフたちが姿を現す。最初は警戒していたが、獲物として認識したのか唸り声を上げ始めた。


「ほう……結構な数だな」


三十頭どころか五十頭近くいるかもしれない。これは少々厄介だ。


一匹が飛びかかってきた。俺は杖で地面を突くと同時に跳躍し、空中で回転して着地する。その動きだけで周囲の空気が震え、ウルフたちが怯む。


「おっと……危ない」杖の効果か、力が完全に解放されていないようだ。「これくらいの方が丁度いいか」


再びウルフたちが一斉に襲いかかってきた。俺は素早く動き回りながら一匹ずつ確実に仕留めていく。杖で頭を叩き潰したり、足で蹴り飛ばしたりする程度だ。


「くそっ……」二十頭ほど倒したところで杖の表面に亀裂が走った。「もう限界か……」


残り三十頭ほど。ここで力を使えば村が吹き飛ぶ危険もある。しかし時間がかかれば村民たちに被害が出るかもしれない。


「やるしかないか……」

杖の亀裂が広がるのを感じながら、俺は決断を迫られていた。今ここで全力を出せば、村全体が崩壊する恐れがある。かといってこのまま戦っていては被害が拡大する一方だ。


「くそっ……何か方法はないのか」


数十頭のウルフたちが俺を取り囲み、低い唸り声を上げている。彼らの赤い目が暗闇の中で光り、獲物を狙う獣特有の殺気を放っていた。


俺は意識を集中させた。かつて災害級の称号を得る原因となったあの出来事を思い出す。三年前のドラゴン退治のとき、力のコントロールができずに周囲を吹き飛ばしてしまった。あの失敗を二度と繰り返すわけにはいかない。


「落ち着け……冷静になれ」


呼吸を整えながら、俺は周囲の状況を観察する。ウルフたちの配置、風向き、地形……すべてが生き延びるための情報だ。


「そうだ……」


頭に閃いた作戦があった。危険ではあるが、村への被害を最小限に抑えられるはずだ。


「よし、やってみるか」


俺は意図的に後退し始めた。ウルフたちが期待どおりに追いかけてくる。徐々に村の中心部から離れていき、森の奥へと誘導する。


「こっちだ!臆病者ども!」


挑発しながら逃げるふりをして、さらに距離を稼ぐ。ウルフたちが興奮状態になり、統率が乱れているのが分かる。まさに作戦通りだ。


充分に村から離れた地点まで来たところで、俺は突然振り返った。


「さあ、こいよ!」


全てのウルフが一斉に襲いかかってくる。その瞬間、俺は杖を握りしめた。


「ここからは本番だ!」





杖から眩い光が放たれた。簡易封印具が最後の力を振り絞っているのだ。俺の全身からオーラが湧き上がるのを感じる。


「グルルル……!」


ウルフたちが恐怖に満ちた声を上げた。俺の姿は彼らにとって脅威そのものに映っているに違いない。


「悪いけどな……」


俺は大地を踏みしめると、地面が震え上がった。衝撃波が円形に広がり、周囲の木々が激しく揺れる。


「全力で戦わせてもらう!」


杖をを大きく振りかぶった瞬間。眩い光と共に衝撃波が放射状に広がり、ウルフたちが次々と吹き飛ばされていく。


「ガアアァ!」


悲鳴のような鳴き声が森中に響き渡る。一体、二体と倒れていくウルフたち。しかし彼らは本能だけで動いているのか、恐怖よりも生存欲求が勝っているようだ。


「まだか……」


杖の亀裂がさらに広がり始める。あと数十秒しか持たないだろう。


「次の一撃で決めないと……」



「グオオォ!」


巨大なウルフが飛びかかってきた。今までの個体よりも遥かに大きい。こいつが群れのボスだろう。


「ようやく本命のお出ましか!」


ボスウルフの攻撃を避けながら、俺はタイミングを見計らう。チャンスは一度きりだ。


「今だ!」


杖を強く握り締め、全神経を集中させる。これまで蓄積してきた力と技術が一気に解放される感覚。


「はぁぁぁっ!」


渾身の一撃が放たれると、周囲に強烈な風圧が発生した。杖の先から放出されたエネルギーが、一直線上に伸びていく。


「ギャアアアァ!」


ボスウルフを中心に爆発が起こり、周囲のウルフたちも巻き込まれていく。眩い光に包まれながら、俺は全ての力を出し切った。


衝撃が収まると、そこには何も残っていなかった。ウルフたちの姿はもちろん、地面には大きなクレーターができており、周囲の木々も折れて倒れている。


「ふぅ……」


全身から力が抜けていく。杖は粉々になって地面に散らばっていた。


「やりすぎたかな……」


村から離れた地点とはいえ、これほどの被害を出してしまったことに自己嫌悪に陥る。エフィーナに何と言おう。


「チャッピーさん!」


村の方向から青年の声が聞こえてきた。振り返ると青年だけでなく、村人たちが続々と駆け寄ってくる。


「みなさん……」


彼らの顔には恐怖の色はなく、むしろ安堵と感謝の表情が浮かんでいる。老人も若者も、子供たちも皆俺を取り囲み、口々に礼を述べてくれた。


「本当にありがとうございます」村長と思われる年配の男性が頭を下げた。「おかげで村は救われました」


「いや……むしろこちらこそ申し訳ない」俺は地面の大穴を指さした。「こんな有様にしてしまって……」


「とんでもない!」青年が両手を振った。「チャッピーさんがいなければ私たち全員食べられていたんです!それに比べたら地面の穴なんて……」


村人たちが笑顔で頷いている。その様子を見て少し心が軽くなった。


「そうだな……」俺は苦笑いを浮かべながら言った。「でも次からはもう少し上手くやるよ」


「ぜひそうしてください」村長が冗談めかして言った。「チャッピーさんの名はもう伝説ですな」


「やめてくれよ……」俺は照れ隠しに頭を掻いた。「俺はただの酔っ払いで十分だ」


「ふふ……」


「さて、そろそろ戻るか。嫁さんが待ってるんでね」


「エフィーナ様ですか!」村長が嬉しそうに言った。「あの方も素晴らしい方ですな。ギルドでの評判は聞いております」


「ああ……自慢の嫁だ」


夕暮れの空の下、村人たちに見送られてギルドへの帰路につく。疲れは感じたが、達成感の方が大きかった。杖は壊れてしまったが、村を守れたことには変わりない。


「次はちゃんとした封印具を作るかな……」


独り言を呟きながら歩いていると、ふと思い出した。エフィーナが特別なワインを開けると言っていたことを。


「急いで帰らないと冷めちゃうな」


思わず笑みがこぼれる。災害級の冒険者である自分を唯一理解してくれる存在。それがエフィーナであり、大切な妻なのだ。


ギルドに戻ると、彼女がカウンターで待っていた。俺の顔を見るなり安心したように微笑む。


「おかえりなさい」


「ただいま」俺は壊れた杖の欠片を見せながら言った。「ごめんな、壊しちゃって」


「大丈夫よ。あれは試作品だったから」彼女は俺の手から欠片を受け取った。彼女が差し出したのは金属製の首輪だった。


「次はこれで抑えるわね♡」


「い、いやぁぁぁぁぁ!!!!」


「ありがとな……それより」俺は辺りを見回した。「ワインは?」


「ちゃんと冷蔵庫に入れてあるわよ」彼女はいたずらっぽく笑った。「シャワーを浴びてからにして」


「了解!」


疲れた身体を引きずりながらも、心は軽かった。災害級の冒険者としても、ただの男としても、俺は幸せ者だと感じる瞬間だった。


その夜、特別なワインを傾けながらエフィーナと過ごした時間は、どんな冒険よりも価値のあるものだった。


「次はどこに行きたい?」彼女が尋ねてきた。


「うーん……温泉かな」俺は照れながら答えた。「夫婦水入らずでゆっくりしたい」


「素敵な提案ね」彼女は優しく微笑んだ。「予定を入れておくわ」


窓の外では月が綺麗に輝いていた。明日からの新たな日々に向けて、今日もまた酒杯を重ねていく。それが俺たち夫婦の日常であり、そして永遠に続いてほしいと思う瞬間だった。


「最高だな……」俺は椅子に座りながら言った。「やっぱり家が一番だ」


「おかえりなさい」エフィーナはワイングラスに深紅の液体を注ぎながら言った。「怪我がなくてよかったわ」


「心配かけてごめんな」俺はグラスを受け取りながら謝った。「でも本当に大したことないんだ。ちょっと腕を擦りむいただけ」


「嘘つき」彼女は俺の左袖を軽く引っ張った。肘のあたりに大きな青あざができている。「これが『ちょっと』なの?」


「あー……」俺は慌てて袖を元に戻した。「実は最後の一撃の時にバランス崩しちまって」


エフィーナは小さく溜息をつきながらも、薬箱を取りに行った。慣れた手つきで傷の手当てをしてくれる。その間も彼女はギルドでの出来事や新しい冒険者の噂などを話してくれた。


「それでね」包帯を巻き終えるとエフィーナが言った。「あの村長さんからお礼の手紙が届いていたわ。チャッピーさんに直接渡したかったんだけど」


「へぇ……見せてくれよ」


彼女が取り出した封筒には厚い紙が入っていた。開くと美しい筆跡で書かれた感謝の言葉が綴られている。


『チャッピー様

昨夜は村を救っていただき誠にありがとうございました。貴方様の勇気と力強さは一生忘れることはありません。

特に息子のマークが何度も命の危機を救っていただいたとのこと、親として感謝の念に堪えません。

また村へお越しの際は是非お泊まりくださいませ。温かい湯と美味しい料理でお迎えいたします。

心よりお礼申し上げます。』


「マークか……」俺は青年の顔を思い出した。「良い奴だったよな」


「ええ」エフィーナはにっこり笑った。「まるで昔のチャッピーみたい」


「どういう意味だ?」俺は眉をひそめた。


「真っ直ぐで情熱的で……ちょっと無鉄砲だけど」彼女はワイングラスを持ち上げながら言った。「私があなたを好きになった理由と同じところがあったわ」


「照れるな……」思わず顔が熱くなるのを感じる。「お前だって変わらないよ。出会った時からずっと綺麗だ」


エフィーナは意外そうに目を丸くした後、「ありがとう」と小さく呟いた。彼女の頬が薄紅色に染まる様子を見て、改めて愛しさを感じる。


「そういえば」俺は話を変えようと食卓に目を向けた。「このワイン、かなり年代物だよな?」


「そうよ」彼女は得意げに胸を張った。「七年前のヴィンテージ。あの年の葡萄は特別だったの」


「七年……」思わず口にしてしまった数字にハッとする。「ちょうど俺たちが出会った年か」


エフィーナの目が輝いた。「覚えていてくれたの?」


「当然だろ」俺はワインを一口含みながら答えた。「初めて会った日のことを忘れるわけがない」


あれは雨の降る夜だった。泥だらけになって街に辿り着いた俺は、宿を探すために路地裏を歩いていた。そこで見つけたのが小さな飲み屋『猫のしっぽ』。店の灯りに誘われるように中に入ると、カウンターで一人酒を飲む女性がいた。それがエフィーナだった。


「あの時のチャッピーったら酷かったわよ」彼女が懐かしそうに言った。「全身濡れていて、目の下には深い隈があって……」


「言うなよ……」恥ずかしさで頭が痛くなってくる。「あれから五年だもんな」


「違うわ」エフィーナは優しく訂正した。「五年と三ヶ月。ちょうどあなたが私の仕事を手伝ってくれるようになった日からだから」


「そうなのか……」月日が流れるのは早いものだと感じる。「俺はあの頃まだ冒険者としては未熟だったな」


「そうね」彼女は穏やかに笑った。「でも誰よりも真剣だった。依頼一つひとつを大切にして、相手の気持ちを考えてくれる……それは今も変わらないわ」


「買い被り過ぎだぞ」俺は照れ隠しに魚を一切れ口に放り込んだ。


「それにね」エフィーナはワイングラスを両手で包み込むように持ちながら続けた。「チャッピーには特別な能力があるじゃない?だから余計に責任を感じてしまうのも分かるわ」


彼女の洞察力にはいつも驚かされる。確かに俺は生まれつき特殊な力を持っている。それは単なる武術や魔術ではなく、自然界のエネルギーを直接操る能力だ。幼い頃はそれを制御できず、何度となくトラブルを起こしてきた。

「災害級って呼ばれるようになったきっかけも知っていてよ」エフィーナが静かに言った。


「ああ……」


十年前のことだ。山間の村が大規模な土砂崩れに見舞われたという知らせを受けた俺は、現場に駆けつけた。救助活動中に力が暴走し、逆に山体崩落を引き起こしてしまったのだ。多くの家屋が潰れ、犠牲者も出た。


「あの時は本当に辛かったな」俺はグラスを置いて窓の外を見た。「自分の力を恐れ始めたのはあの日からだ」


「だから封印具が必要なのよね」エフィーナは俺の手をそっと握った。「でも私にとっては素晴らしい能力だと思うわ。ちゃんと使いこなせるようになれば、多くの人々を救える力になっているでしょう?」


「まあ……そう言ってくれるのはお前だけかもな」俺は自嘲気味に笑った。


「違うわ」彼女は真剣な眼差しで俺を見つめた。「ギルドのみんなも、助けられた村人たちも同じ気持ちよ。あなたは英雄なの。ただの酔っ払いなんかじゃない」



「ありがとうな」俺は彼女の手を握り返した。「お前にそう言われると少し自信が持てるよ」


二人の間に沈黙が落ちたが、それは居心地の悪いものではなかった。暖炉の火がパチパチと音を立て、ワインの芳醇な香りが部屋中に広がっている。日常の中にある幸せを感じる瞬間だった。


「そうだ」不意にエフィーナが立ち上がった。「マークくんからもう一通手紙を預かっていたの。明日ギルドに来るようにって」


「明日?」俺は首を傾げた。「何かあったのか?」


「さあ」彼女は手紙を広げながら眉をひそめた。「『至急確認していただきたいことがあります』と書いてあるわ」


「ふむ……」俺は顎に手を当てた。「ウルフの件に関係あるのかな」


「かもしれないわね」エフィーナは手紙を折りたたみながら言った。「明日行く?」


「ああ」即答する。「気になるしな。それに」俺は悪戯っぽく笑った。「ギルドの連中とも久しぶりに飲みたい」


「やっぱりそういう理由なのね」彼女は呆れたように肩をすくめた。「じゃあ準備しておくわ。今日はもう休みましょう」


「そうだな……」俺はベッドに向かいながら振り返った。「エフィーナ」


「なあに?」


「ありがとうな。いつも支えてくれて」


「どういたしまして」彼女は柔らかく微笑んだ。「夫婦なんだから当たり前よ」


翌朝、俺は早めにギルドへ向かった。いつもの喧騒とは違い、今日はどこか緊張感が漂っている。受付には見慣れない冒険者たちが集まり、壁の掲示板には注意書きの札が貼られていた。


「チャッピーさん!」


マークが階段を駆け降りてくる。昨日とは打って変わって深刻そうな表情をしている。


「どうした?」俺は声をかけた。「何かあったのか?」


「来てください」彼は俺の腕を掴んだ。「説明するよりも見てもらった方が早いです」


地下の保管室へ案内されると、そこには数人の冒険者が集まっていた。中央の机の上には布に覆われた何かが置かれている。


「チャッピーさん……これを」


マークが布を取ると、俺は思わず息を飲んだ。そこにあったのは昨夜使った杖の残骸ではなく、大きい魔石だった。


「これは……」


「ボスウルフから出てきたものです」

一人の冒険者が説明した。「昨夜村に帰還した我々が確認しました。通常のウルフに魔石が残るなどあり得ないことです」


魔物化していたということか……。これは単純な獣害ではなく、魔力による侵蝕だった可能性が高い。やれやれ、厄介なことになりそうだな……




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