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第61話 参謀エバンス、最後の策

いつもお読みいただきありがとうございます。

第61話では、参謀エバンスが人の知恵の限界を賭け、最後の策を打ちます。

そして英雄親子が辿り着いた“幻日流の極致”。

決戦直前、すべてが収束する一話をお楽しみください。

玉座の間。


張り詰めた空気の中、最初に動いたのは――参謀エバンスだった。


「魔王様。少しの間、お下がりください」


「ほう?」


魔王は興味深そうに口角を上げる。


「この親子は……

 “私の戦場”です」


一瞬の沈黙の後、魔王は低く笑った。


「良い。

 見せてもらおう――人の知恵の限界を」


魔王の存在感が、わずかに後退する。

それだけで、空気が少し軽くなった。


だが――

それは錯覚に過ぎない。


エバンスは、達也と由香里を真っ直ぐに見据えた。


「英雄・磯崎達也。英雄の娘・由香里」

静かな声。

「……やはり、英雄親子は想定を超えているか」


だが、彼は笑った。

それも、どこか満足げに。


「ならば――こちらも全力を出さねばなるまい」


エバンスは、杖を床に突き立てた。


――カッ。


床一面に、無数の魔法陣が浮かび上がる。


エバンスが地面に突き立てた杖の先から、禍々しい魔法陣が幾重にも展開される。

死と怨嗟、未練と絶望――それらを糧とする、ネクロマンサーの本領。


「応えよ、四天王よ。

死を超え、獣を超え、三度目の“超獣化”として――降臨せよ!」


大地が悲鳴を上げた。


黒紫の魔力が噴き上がり、裂けた空間から姿を現すのは――

かつて英雄親子に討たれた四天王たち。


しかし、その姿は以前とは明らかに違っていた。

理性を削り、存在そのものを燃料にした、第三形態。

筋肉は異様に膨張し、魔力は制御を失った嵐のように荒れ狂っている。


「……召喚維持は一時間が限界、か」


エバンスは理解していた。

先の戦いから、時間が経っていない。

完全な再構築は不可能――だからこそ、この一時間で全てを決めるしかない。


「行け。

出し惜しみは無用だ」


超獣化した四天王は、言葉を持たない咆哮と共に動いた。


同時。

寸分の間もなく、四体がそれぞれの必殺技を解放する。


空を裂く超重力の衝撃波。

大地を溶かす灼熱の奔流。

魂を削る咆哮と、魔力そのものを叩きつける一撃。


――必殺。

間違いなく、世界を終わらせかねない連撃だった。


だが。


「由香里」

「うん、おとうさん」


英雄親子は、前に出た。


恐れも、迷いもない。


二人の足元に広がるのは、幻日の紋。

積み重ねた修練と、戦いの中で完成させた“流派の極致”。


「幻日流――最終奥義」


達也の背後に、龍が顕現する。

由香里の背後には、虎が牙を剥く。


「“龍”」

「“虎”」


重なる声。


「――逆鱗咆哮破!!」


世界が、ひっくり返った。


龍と虎の咆哮が交差し、渦となり、暴虐なエネルギーを呑み込んで爆発する。

超獣化した四天王の必殺技は、触れた瞬間に砕かれ、押し潰され――


次の瞬間には、存在そのものが消し飛んだ。


残骸すら、残らない。


余波は戦場全体を薙ぎ払い、エバンスの身体を容赦なく叩きつけた。

彼は血を吐き、杖を支えに、どうにか立っている。


「……は、はは……」


その顔に浮かぶのは、苦笑。


「なぜだ……。

なぜ、超獣化した四天王でも……勝てない……?」


その問いに、達也は静かに答えた。


「四天王が生きていればな」


エバンスの視線が、わずかに揺れる。


「超獣化の“先”があったかもしれない。

だが、あんたはそれを奪った。

成長できないモノに――勝機はない」


沈黙。


そして、エバンスは小さく頷いた。


「……なるほど……英雄とは……未来を奪わぬ者、か……」


再び、苦笑。


「参謀としては……最悪の敵だ……アガレスト様、エキドール様…申し訳ありません」


「…エリザベートの側近の名前か…」

達也は違和感を覚えた。


そのまま、エバンスの身体は崩れ落ちる。命の灯は、静かに消えた。


戦場に残るのは――英雄親子と、そして。


底知れぬ“気配”。


空間の奥が、歪む。

圧倒的な存在感が、ゆっくりと世界を侵食してくる。


「……来るね」

「ああ」


達也は前を見据え、拳を握る。


「いよいよだ、由香里」


魔王との――決戦。


次なる舞台は、ここから始まる。

参謀エバンス編、ここで決着です。

「成長を奪う者に未来はない」というテーマを、この話に込めました。

次回はいよいよ魔王バーミリオンとの直接対決。

英雄親子の“頂”を、最後まで見届けていただければ嬉しいです。

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