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第56話 “英雄”の残像、娘の覚悟

第56話「“英雄”の残像、娘の覚悟」更新。

四天王三体の完全連携、その只中で達也が戦線を離脱。

戦場に残されたのは由香里ひとり。

それでも“英雄”は二人いる――

そう信じさせたまま、少女は前に立つ。

空間は、もはや戦場ではなかった。


爆発する魔力。

軋む大地。

砕け散る障壁の残滓が、嵐のように舞っている。


「ちぃ……!」


ガニメデの多重障壁が、ついに一枚砕けた。


「まだだ……まだ耐えられる!」


だが、息は荒い。

超獣化による力は凄まじい。

だが同時に、消耗もまた尋常ではなかった。


「ゴルディアス! 押し切るぞ!」


「言われずとも!」


三体の四天王は、ついに完全な連携へと移行する。


正面からゴルディアスの重撃。

側面をシーザリオンの高速突進。

上空からガニメデの圧殺結界。


――本来なら、逃げ場はない。


「由香里!」


達也の声が響く。


「はいっ!」


二人は同時に踏み込んだ。


「“ミラー”――第二段階!」


分裂していた動きが、今度は収束する。


増えた残像が、重なり合い、一本の線になる。


「なに……?」


ゴルディアスの拳が、空を打った。


「……消えた?」


否。


次の瞬間、三体の四天王は同時に衝撃を受けた。


ガニメデの障壁が内側から爆ぜ、

シーザリオンの側頭部が砕かれ、

ゴルディアスの膝が、大地に叩きつけられる。


「ぐ……ぅ……!」


それは、力任せではない。


角度。

タイミング。

役割分担。


――二人だからこそ成立する、完全連携。


「……ば、馬鹿な……」


シーザリオンが、荒い息で呟く。


「フレイアが倒され、我ら三体が……押されているだと……?」


その時だった。


達也が、ふっと動きを止める。


「由香里」


一瞬だけ、視線が交わる。


「――あとは頼む」


「……はい」


達也は、静かに戦列を離れた。


誰にも悟らせぬ速度で。

誰にも気付かせぬ気配制御で。


王城へ――。



「……?」


ガニメデが、違和感に眉をひそめる。


「今のは……?」


だが、答えを与える暇はない。


『出力調整完了。ミラー演算継続』


アデューの声と同時に、由香里の動きが変わる。


重さが、消えた。


盾と徹甲が、まるで意思を持つかのように連動する。


「まだ……いる……?」


四天王たちは、“英雄”が二人いる前提で動き続けていた。


それが――致命的な誤認だと気付かぬまま。


戦闘は続く。


由香里は、退かない。

退けない。


(おとうさん……もう、いないんだよね)


だが、顔には出さない。


英雄は、まだ二人いる。


――そう、思わせ続ける。



その時。


「……連絡だ」


シーザリオンが、低く唸る。


「参謀エバンスから……」


短い沈黙。


『作戦……失敗』


空気が、凍り付いた。


「……そうか」


ゴルディアスが、拳を握り締める。


「ならば――」


三体が、同時に構えた。


「――英雄を、ここで仕留める」


完全連携。


今度は、一点集中。


「来る……!」


由香里は、歯を食いしばる。


盾を前に。

徹甲を引く。


(耐える……!)


三方向からの殺到。


だが――。


「……おかしい」


ガニメデが、気付いた。


「攻撃の“質”が……違う」


「……まさか」


次の瞬間。


三体の攻撃が、同時に交錯した。


――そこにいたのは。


少女一人。


「……一人、だと……?」


沈黙。


「……今まで、戦っていたのは……」


由香里は、まっすぐ前を見る。


「……そうだよ」


震える声を、意志で押し殺す。


「ここにいる“英雄”は――」


盾を構え、踏み出す。


「――私だけ」


四天王三体の背筋を、遅すぎる戦慄が駆け上がった。


だが――。


もう、退路はない。


“英雄”の娘は、ここに立っている。


そして王城には――

もう一人の“英雄”が、向かっていた。

第56話お読みいただきありがとうございます。

父の不在を悟らせぬまま戦い続けた由香里。

“英雄”の残像が消えた時、四天王は真実に気付く。

そして王城では、もう一人の英雄が動き出す。

次話、戦局は大きく揺れます。

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