第55話 超獣四天王VS"英雄"親子
超獣化した四天王、そして迎え撃つ“英雄”親子。
父と娘、それぞれの覚悟が交差する決戦の幕が上がる。
圧倒的速度と力がぶつかる中、最初に散るのは――。
数時間前――。
「再び“英雄”と相まみえるとは……血が沸るのう」
四天王ゴルディアスが、重厚な拳を鳴らした。
大地が、低く唸る。
「あの時は遅れを取ったが、今回は違う。超獣化――この力で、必ず雪辱を果たす」
シーザリオンの全身から、龍気にも似た魔力が噴き上がる。
「……ここまで進化するとはな」
ガニメデは自身の甲羅を見下ろす。
甲羅の一部が分離し、衛星のように周囲を旋回。
それらが展開する度、幾重もの障壁が重なり合い、空間そのものを歪ませていた。
「力が……溢れて止まらん」
最後に、フレイアが前へ出る。
四枚の翼。
人型へと変化した胴体。
爪はアダマンタイト、羽根は一本一本が対城兵器級。
「まずは――英雄の首を落とす」
その視線が、達也を捉えた。
⸻
「……髪、切ったのか?」
戦場の緊張とは裏腹に、達也は穏やかな声で尋ねた。
短くなった由香里の髪が、夜風に揺れる。
「すまんな。綺麗な髪だったのにな」
「……自分で決めた事だから」
由香里は、少しだけ拳を握る。
「おとうさんの役に立ちたいの」
達也は何も言わず、ただ頷いた。
「“アデュー”、“セイラ”……頼んだぞ」
『……マスターがそこまでおっしゃるのなら、今までの非礼は許します』
光が弾け、装備が構築される。
由香里――右に徹甲、左に盾。
達也――左に徹甲、右に盾。
同じで、違う。
その“違い”を、敵はまだ知らない。
「さぁ……来い」
達也が一歩、踏み出した。
「雑魚四天王」
その瞬間――。
⸻
フレイアが、消えた。
否。
速すぎて、消えたように見えただけ。
次の瞬間、達也の背後。
羽根が、矢の如く射出される。
「……遅い」
盾が回転し、羽根を弾く。
だが――終わらない。
上下左右、同時。
空間を裂くように降り注ぐ羽根の嵐。
「ッ……!」
一瞬、達也の足元が削られる。
フレイアは笑った。
「英雄とて、老いたな!」
空を支配する者の戦い。
速度、角度、殺意。
だが――。
「……だからどうした」
達也は、踏み込んだ。
盾を捨てる勢いで前へ。
徹甲に、圧縮された闘気が収束する。
「幻日流――穿天」
一撃。
音が、遅れて追いついた。
フレイアの胸部装甲が、内側から破裂する。
空中で制御を失い、地面へ叩き落とされた。
「な……に……?」
再生が、始まらない。
達也は、静かに見下ろす。
「空を取れば勝てると思ったか?」
とどめの一撃。
大地が砕け、フレイアは完全に沈黙した。
⸻
「……フレイアが、やられた……?」
その光景に、残る三体の四天王が凍り付く。
「馬鹿な……超獣化だぞ……!」
「……やはり、“英雄”は伊達ではないか」
ゴルディアスが、歯を食いしばる。
「ならば――ここからだ」
三体同時に、魔力が跳ね上がった。
大気が歪み、視界が揺れる。
「由香里!」
「はい!」
二人は、同時に構えた。
「多重攻撃――“ミラー”!」
空間が分裂する。
達也と由香里の動きが、幾重にも重なり、増殖する。
拳。
刃。
盾。
三体の攻撃が、同時に叩き込まれる――はずだった。
だが。
「……当たらん?」
ガニメデの障壁が削られ、
ゴルディアスの拳が弾かれ、
シーザリオンの牙が空を切る。
「これは……二人……いや……?」
錯覚。
だが、確実に削られていく。
――そして戦いは、さらに激化していく。
続く。
空を制した者は、必ずしも勝者ではない。
英雄の重みと、親子の連携が戦場を塗り替える。
戦いはまだ終わらない。
次なる激突へ――。




