第52話 参謀VS参謀
王都決戦、開幕。
戦場は剣だけでなく、知略でも火花を散らす。
国王軍参謀ケイセンと、魔王軍参謀エバンス。
英雄親子が剣を振るう裏で、参謀同士の読み合いが始まる――
これは、戦争を動かす“頭脳”の戦いの物語。
王都が、かつてない危機に瀕していた。
魔王軍が――王都へ直接、侵攻してくるという報が入ったのだ。
この状況を打破できる者は、ただ一人。
国王軍参謀、ケイセン。
「ケイセン……王国のために、頼む」
国王の言葉に、ケイセンは一瞬、視線を伏せた。
「……わかりました。しかし……」
言葉を濁すケイセンに、静かに声をかけたのは達也だった。
「俺たちも手伝う。魔王軍を、叩き出そう」
その申し出に、ケイセンは苦い表情を浮かべる。
「……私は、魔王軍の企みを読み切れなかった。
“英雄”達也……正直に言えば、あなたの方が適任ではありませんか」
不安を隠さぬケイセンに、達也は首を横に振った。
「今回は、ただ俺の疑い深さが役に立っただけだ。
全軍を動かす作戦行動なんて、俺にはできない」
しばしの沈黙の後、ケイセンは深く息を吐いた。
「……わかりました。国の危機です。
全力で、やらせていただきます」
その言葉に、国王は静かにうなずいた。
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「王子だけでなく、こちらが用意した側近まで捉えられるとは……」
苛立ちを隠さず呟いたのは、魔王軍参謀。
魔王軍参謀――エバンス。
死霊を操る、ネクロマンサーである。
「“英雄”達也……やはり、最大の敵だな」
魔王バーミリオンは重くため息をついた。
「ええ。さらに問題なのは――
彼の娘、由香里が英雄因子を覚醒させ、因子に自我を持たせたことです」
エバンスは冷静に、しかし淡々と現状を分析する。
「ですが……王国は今、戦勝ムードに包まれています。
油断している今こそが、好機」
その進言に、バーミリオンは腕を組んだ。
「……確かに、四天王を失い戦力は半減している。
それでも、今なら勝機はあるかもしれん。
だが……嫌な予感がする」
エバンスは一歩踏み出した。
「では、部隊を二つに分けましょう。
現在の魔王軍戦力は、王都地下道へ投入。
そして王都正面には――私の力で、四天王を四体、超獣化状態で復活させます」
「可能なのか」
「はい。ただし、限界は六時間。
ですがその間、“英雄”二人を正面に釘付けにできます」
エバンスの眼が、妖しく光る。
「そうすれば、地下から王都へ侵入した部隊が暴れ回る。
勝機は――生まれます」
沈黙の末、魔王バーミリオンは決断した。
「……わかった。
すべて、お前に任せよう」
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その頃、達也は英雄騎士団の部隊長クラス、そして由香里を騎士団本部に集めていた。
「今夜――魔王軍が攻めて来る」
唐突な宣告に、空気が凍りつく。
「そんな……魔王軍には、もはや戦力が無いのでは?」
第三部隊長サイナスが問いかけた。
「王子の側近が、洗脳された囚人だったと確認された」
達也は淡々と説明を続ける。
「側近が流した誤情報で、王子は敗走を重ねた。
正直、王子の能力じゃ巻き返しは無理だった」
騎士団の面々が息を呑む。
「囚人はヒュプノで洗脳されていたが、効果は一日限り。
つまり――その間に、魔族は王都へ地下道を掘り進め、侵入していた」
ざわめきが走った。
「……王都に、魔族が潜入していた……」
震える声が、あちこちから漏れる。
「だからだ」
達也は一歩前に出て、深く頭を下げた。
「参謀ケイセンの指揮のもと、作戦行動を取ってほしい」
「達也様、頭を上げてください」
サイナスをはじめ、部隊長たちは即座に応じる。
「ケイセン様なら、信頼できます」
その言葉に応えるように、扉が開いた。
参謀ケイセンが、姿を現す。
「……英雄騎士団の協力なくして、王都は守れません。
どうか、よろしくお願いします」
深々と頭を下げるケイセンに、騎士団長ラーハルトが前に出た。
「ケイセン殿、頭を上げてください。
我々英雄騎士団は、あなたの作戦のもとで動きます」
その場に、確かな結束が生まれた。
「ケイセン。魔王軍は、どう出ると思う?」
達也の問いに、ケイセンはしばし思考を巡らせる。
「戦勝に酔った今を好機と見るのは当然。
ですが、“英雄”が二人いる以上、正面から全軍で攻めれば敗北は必至」
一拍置いて、続ける。
「敵にネクロマンサーがいるとなれば――
四天王を復活させ、王都正面に配置。
“英雄”を釘付けにし、残りの戦力で王都を攻める……それが最善策でしょう」
「つまり――」
「ええ。
達也様と由香里様は正面。
英雄騎士団は、王都防衛」
達也は短くうなずいた。
「わかった。
俺と由香里で、正面を引き受ける」
「……お願いします。“英雄”」
その言葉に、騎士団の面々は戦慄した。
王都に一歩でも侵入され、煙一つでも上がれば――
それは、英雄騎士団の敗北を意味するのだから。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回は戦闘前夜、参謀同士の駆け引きを中心に描きました。
次話からはいよいよ王都決戦本番。
達也と由香里、そして英雄騎士団の運命が交錯します。
続きをお楽しみください。




