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第51話 戦場での違和感、本当の敵。

王都に広がる勝利の空気。その裏で、英雄・達也が感じ取った“違和感”が、静かに正体を現し始める。戦場の裏側で動いていた真の敵とは――。第51話、王都編・急転直下です。

王宮内――国王の間。

国王と達也は、机を挟んで向かい合って座っていた。


「国王、言っちゃ悪いが……あの王子に、あんな大それたことは出来ない」


達也は、戦場で感じていた違和感を率直に伝えた。


「英雄も、そう思うか……」

国王は小さく息を吐き、頷く。

「そうだな。流石に、我も自分の息子の力量は理解している」


しばし沈黙が流れた後、達也が口を開いた。


「明日、王子と直接話が出来るか?」


「……わかった。許可しよう」

国王は少し考えた末、条件を付け加える。

「ただし、我も同席する」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆


王宮地下牢。


見張りの兵と国王近衛兵が周囲を固める中、達也はバルタンの牢の前に立っていた。


「お前は……何をした?」


低く問いかける達也に、バルタンは首を横に振る。


「別に何もしていない。いつもと同じだ」


「やはりな」

達也は静かに頷く。

「そもそも、お前は何も知らない」


達也は一歩前に出て、淡々と語り始めた。


「お前の戦術を熟知し、お前の性格まで把握している。そんなことが出来る奴は、一人しかいないと思っていた」


「だが、少し聞き込みをすると……意外な人物が浮かび上がった」


「……まさか……」

バルタンは震える声で否定する。

「嫌だ……そんなはずはない……」


達也は逃がさなかった。


「なぜ、腹違いの双子の兄弟を側近にした?」


「……国王が、メイドに産ませた子だと聞いていた」

バルタンは絞り出すように答える。

「王族には変わりないのに、庶民として生きてきた。それなのに……王族に生まれながら、能力も無い俺が、裕福な生活をしている……」


その言葉を、国王が即座に否定した。


「馬鹿な。余には、妾の子などおらん」


達也は国王を一瞥し、結論を口にする。


「側近達はヒューマンだった。

ならば――魔族に、魔法で洗脳されていたと考えるのが自然だな」


「……洗脳魔法か」


「ヒュプノ系統だとすれば、効果は一日」

達也は冷静に続ける。

「つまり、毎日かけ直されていた可能性が高い」


国王の表情が険しくなる。


「……王都に、魔族が侵入していたということか」


「そういうことだ」


重苦しい沈黙が地下牢に満ちた。

戦場で感じた違和感は、確かな形を持ち始めていた。


本当の敵は――

すでに、王都の内側に入り込んでいる。


重苦しい沈黙を破ったのは、近衛兵の一人だった。


「報告します!」


地下牢の奥から駆け込んできた兵は、膝をつきながら声を張り上げる。


「封鎖されていた旧処刑区画にて、不自然な壁面を確認。内部が空洞化しており……隠し通路と思われます!」


国王の顔色が一変した。


「地下牢に、隠し通路だと……?」


「間違いないな」


達也は落ち着いた様子で答えた。


「魔王城近辺の地質と一致している。地中を掘り進める魔族の術式だ。おそらく、かなり前から準備されていた」


「……王都の地下に、敵の道が」


国王は拳を握りしめる。


「側近たちは、元は囚人だった」

達也は続ける。

「表の記録から抹消され、地下の名簿にだけ残っていた。処刑されたことにされていた連中だ」


「それを魔族が回収し、洗脳して王子の側近に……」


「使い捨ての駒としては、ちょうどいい」

達也は冷酷な現実を突きつける。

「王子の行動を操り、戦場を混乱させるにはな」


バルタンは俯いたまま、唇を噛みしめていた。


「……俺は……利用されていたのか……」


「そうだ」

達也は否定しなかった。

「だが、ここまで綿密な動きが出来るのは――現場の判断だけじゃない」


達也は国王を見据える。


「魔王軍には、参謀がいる。戦場全体を俯瞰し、人の心理と王都の構造を理解している知恵者だ」


「……参謀」


その言葉に、場の空気がさらに張り詰めた。


「しかも、地下通路が一本とは限らない」

達也は続ける。

「今回見つかったのは、たまたまだ。他にも、王城や王都へ繋がる通路がある可能性が高い」


国王は即座に決断した。


「近衛兵団に命ずる。地下区画の全面調査、王都地下の再点検を急げ!」


「はっ!」


命令が飛び交い、王宮が慌ただしく動き始める。


だが、達也は腕を組んだまま、低く言った。


「……時間はあまり無い」


「どういうことだ?」


「ここまで地下道を作っているという事は負けた時の用意もしてあったと見るのが自然だ。敵は動く」

達也の目が鋭く細まる。

「今、この王都は戦勝気分で浮き足だっている。その隙に乗じて一気に仕掛けてくる……」


一拍置いて、断言した。


「今夜、襲撃があるかもしれない」


国王は短く息を吸い、頷いた。


「……覚悟は出来ている。王都は、簡単には落とさせん」


達也は踵を返し、出口へ向かいながら小さく呟く。


「さて……本当の戦いは、ここからだな」


その頃、まだ静まり返った王都の地下深く――

闇の中で、何かが蠢き始めていた。


嵐は、すぐそこまで迫っている。

ここから物語は「戦争」から「陰謀」へと軸足を移していきます。

王都の闇に潜む本当の敵、そして迫る次なる戦い。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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