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第50話 凱旋、そして英雄へ

ついに王都凱旋。

父と娘、それぞれが戦い抜いた末に辿り着いた場所で、由香里は“英雄”として名を刻みます。

これは戦果の物語ではなく、想いを受け継いだ少女が一歩前へ進む物語です。

王都へ続く街道は、かつてないほどの熱気に包まれていた。


「――来たぞ!」

「英雄騎士団だ!!」

「四天王を倒したって本当か!?」


城門が開かれた瞬間、歓声が爆発した。


人、人、人。

道の両脇を埋め尽くす民衆が、旗を振り、花を投げ、涙を流して叫んでいる。


その先頭を進むのは――

英雄騎士団。


そして、その中心に並んで歩く二人。


英雄・達也と、

その隣で、少しだけ緊張した面持ちの少女――由香里。


「……すご……」


思わず、呟きが漏れる。


(全部……私たちに?)


《当然です》

“アデュー”の声が、穏やかに響く。

《あなたは、英雄として戦いました》


「……そっか」


由香里は、ぎゅっと拳を握り直した。


達也は、そんな娘を横目に見て、少しだけ口元を緩める。


「胸、張れ」

「お前の歩いてる場所だ」


「……うん」


その姿を見て、民衆の歓声はさらに大きくなった。


「英雄だ!!」

「父娘の英雄だ!!」


誰もが、理解していた。

この凱旋は――偶像ではない。

命を賭して戦った者たちへの、正当な称賛だと。



王宮・謁見の間。


重厚な扉が開かれ、

英雄騎士団と、達也、由香里が進み出る。


玉座に座る国王は、

二人の姿を見て、深く、深く頭を下げた。


「……感謝する」

「王国を代表し、礼を述べたい」


ざわり、と空気が揺れる。


国王が、英雄に頭を下げる。

それは異例中の異例だった。


「四天王全軍の撃破」

「王国史に残る戦果だ」


そして――

国王の視線が、由香里へと向けられる。


「由香里殿」


呼ばれ、由香里は一歩前へ出る。

心臓の音が、少しだけ早くなる。


「そなたは、英雄・達也の娘であり――」

「そして、それ以上に」


一拍、間を置いて。


「己の意志で戦場に立ち、

王国を救った“英雄”だ」


国王は、立ち上がった。


侍従が差し出したのは、

王国紋章が刻まれた小箱。


その中には――

銀と金が織り交ぜられた、小さな勲章が収められている。


「ここに宣言する」


国王の声が、謁見の間に響く。


「由香里・カヤマ」

「そなたに、“英雄”の称号を授ける」


その瞬間――


拍手が、嵐のように巻き起こった。


英雄騎士団。

近衛騎士。

侍従。

そして、達也。


誰よりも静かに、

だが誇らしげに、頷いていた。


由香里は、ゆっくりと膝をつく。


「……身に余る光栄です」

「でも――」


顔を上げ、まっすぐに言う。


「私は、守りたいものを守っただけです」

「それが、英雄なら……」

「この名を、胸を張って受け取ります」


国王は、満足そうに微笑んだ。


「見事だ」


そして、深く息を吐く。


「……最後に」

「王として、詫びねばならぬ」


国王は、頭を下げた。


「王子バルタンを信じ、

国王軍を危険に晒した」

「その責は、すべて私にある」


誰も、言葉を発せなかった。


その沈黙を破ったのは――由香里だった。


「……前を向いてください」


静かだが、はっきりとした声。


「私たちは、もう勝ちました」

「これからを、間違えなければいい」


国王は、一瞬驚いた顔をして――

そして、深く頷いた。


「……肝に銘じよう」



謁見の後。


王宮の回廊で、

達也と由香里は並んで歩いていた。


「……英雄、か」

由香里が、照れたように笑う。

「まだ、実感ないや」


「そのうち慣れる」

達也は、いつもの調子で言う。

「でもな」


足を止め、娘を見る。


「今日の戦いは、誰の力でもない」

「お前が、掴んだ結果だ」


由香里は、胸がいっぱいになって、

小さく頷いた。


「……ありがとう、お父さん」


「どういたしまして」


達也は、ぽん、と由香里の頭に手を置く。


「英雄殿」


その言葉に、

由香里は、少しだけ笑った。


王都の空は、どこまでも青い。


新たな英雄の時代が――

確かに、始まっていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

英雄の称号は終わりではなく、始まり。

父の背中を越えようとする由香里の物語は、ここからさらに加速していきます。

次章もお楽しみに。

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