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第48話 英雄の名を持つ者

四天王最後の二体、その前に立つ由香里。

英雄の血ではなく、英雄としての“意志”が試される瞬間。

静まり返った戦場で始まる、決着の一撃をお楽しみください。

世界が、静まり返っていた。


だがそれは――

戦いが終わったからではない。


終わることを、誰もが直感していたからだ。


由香里の前に立つ2体の四天王。

海竜王シーザリオンと、刃獣王ゴルディアス。


その眼には、確かな動揺が宿っていた。


「……馬鹿な」

シーザリオンが、喉の奥で低く唸る。

「さっきまでとは、まるで別の存在だ……」


「だが――」

ゴルディアスが、爪を地面に立てる。

「我らは四天王。超獣化の力を疑う理由はない」


2体は、同時に魔力を解放した。

海と大地が呼応し、殺意が嵐のように収束する。


「行くぞ、英雄の娘――否」


シーザリオンが、由香里を睨み据える。


「英雄」


次の瞬間――

暴力の奔流が、由香里へと殺到した。



だが。


それは、攻撃ですらなかった。


由香里は、動かない。

構えもしない。


ただ――一歩、踏み出した。


《解析完了》

《最適行動――実行》


“アデュー”の声と同時に、世界が折り畳まれる。


シーザリオンの放った水龍砲は、由香里の横を通過する前に“消失”した。

ゴルディアスの突進は、距離そのものが否定され、踏み込みが成立しない。


「――なに?」


理解する前に、終わっていた。


由香里の姿が、2体の懐に同時に存在した。


剣でも、拳でもない。

由香里が振るったのは――意志だった。


「――ごめんね」


「幻日流秘奥義 天地鳴動!」


その一言が、最後だった。



音は、なかった。


光が走り、

空間が一瞬だけ、静止する。


次の瞬間。


シーザリオンの巨大な胴が、真っ二つに分断される。

切断面は、燃えることも、凍ることもなく、ただ“終わり”を迎えていた。


「……見事、だ……」


崩れ落ちながら、シーザリオンは笑った。


「英雄の名に……相応しい……」


光となり、海へと還っていく。


同時に。


ゴルディアスの身体が、内部から崩壊を始めた。


「は、はは……」

血を吐きながら、それでも立ったまま、由香里を見る。

「刃を極めたつもりだったが……まだ、先があったか……」


最後に、深く頭を下げた。


「貴様と、その騎士団に……栄光を……」


次の瞬間、

刃獣王は黒い粒子となり、完全に消滅した。



――静寂。


次いで。


「「「うおおおおおおおおお!!!」」」


英雄騎士団の歓喜の雄叫びが、戦場を震わせた。


「勝ったぞ!!」

「四天王を、全て討ち取った!!」


誰もが、抱き合い、泣き、叫んだ。


由香里は、その中心で、静かに息を吐いた。


《戦闘終了》

《英雄因子“アデュー”、安定》


「……ありがとう」


《当然です》

《私は、あなたですから》


由香里は、微笑んだ。

四天王との戦いに、ついに終止符。

由香里は「英雄の娘」ではなく、「英雄」として立ちました。

次回は戦いの後――静けさの中で動き出す、人の思惑が描かれます。

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