第46話 超獣化する四天王
四天王シーザリオンとゴルディアスが、ついに本性を解き放つ。
超獣化という切り札を前に、由香里と英雄騎士団は圧倒的劣勢へ。
英雄の娘は、この絶望を前に何を選ぶのか――
第46話、四天王の“本気”が牙を剥く。
戦場の空気が――変わった。
否。
**“圧縮され始めた”**と言った方が正しい。
シーザリオンとゴルディアス。
2体の四天王が、同時に動きを止めた。
「……ほう」
シーザリオンの声が、低く、深く響く。
「ここまで追い込まれるとはな」
ゴルディアスが、ゆっくりと四肢を踏みしめる。
大地が軋み、戦場全体が震えた。
「認めよう、ヒューマン」
「貴様は、確かに英雄の域に足を踏み入れた」
その2体から――
異常なまでの魔力収束が始まる。
「魔力反応、急上昇!?」
「四天王クラスの上限を超えてる……!」
騎士たちの警告が飛ぶ。
由香里は歯を食いしばった。
(……来る)
「……奥の手、ってやつか」
2体が、同時に吠えた。
「――解き放て」
「――我らが本性を!」
次の瞬間――
爆発的な魔力の奔流が、2体を包み込む。
◆
シーザリオンの身体が、軋みながら膨張する。
鱗が再構成され、より鋭く、より神秘的な紋様へ。
首が伸び、角が分岐し、翼は龍そのものへと近づいていく。
宙を泳ぐ魔獣ではない。
**“海と空を支配する龍王”**の姿。
「超獣化形態――」
「真なる名は不要」
シーザリオンが、ゆっくりと頭をもたげる。
「我は、海竜王」
その一言だけで、
空気中の水分が完全に支配下に置かれた。
◆
対照的に、ゴルディアスの身体は――収縮した。
だが、それは弱体化ではない。
巨体が引き締まり、筋肉が凝縮される。
体毛が一斉に抜け落ち、即座に生え変わる。
黒く、鈍く光る――硬質化した獣毛。
爪は細く、長く、刃物のように研ぎ澄まされ、
牙には、紫黒色の毒が滴っていた。
「陸は、研ぎ澄まされるほど強くなる」
ゴルディアスが、低く笑う。
「超獣化――刃獣王形態」
一歩踏み出しただけで、
地面に深い裂傷が刻まれた。
◆
次の瞬間――
2体が、同時に咆哮した。
「――――――――!!!!!」
音ではない。
衝撃でもない。
存在そのものによる破壊。
「第三部隊、防御――!!」
「由香里様、シールドを――!!」
反射的に、動いた。
「“幻日流――シールド多重防御展開!”」
由香里と英雄騎士団三部隊が、
重ねに重ねた防御障壁を展開する。
だが――
一瞬だった。
咆哮が触れた瞬間、
魔力障壁は紙のように砕け散った。
「――なっ!?」
「防御値、測定不能……!」
衝撃が、遅れて襲う。
兵士たちが吹き飛ばされ、
由香里の身体も、後方へ叩き飛ばされた。
「ぐっ……!」
地面を転がり、ようやく踏みとどまる。
「……そう、だよね」
由香里は、苦笑した。
前を見る。
シーザリオンが、尾を一振りするだけで、空間が引き裂かれる。
ゴルディアスは、構えただけで、
殺意が刃となって溢れ出す。
「これが……四天王の本気……」
英雄騎士団も、立ち上がれない者が続出していた。
「由香里様……」
「すみません……」
誰もが理解している。
――今度こそ、詰みかけている。
シーザリオンが、冷ややかに告げる。
「ここまでだ、英雄の系譜」
「超獣化した我らに、抗う術はない」
ゴルディアスが、刃のような爪を鳴らす。
「誇りは認めよう」
「だが――ここで終わりだ」
2体が、同時に踏み込んだ。
死が、確定する距離。
由香里は、武具を変化させ構え直した
膝は、正直に震えている。
息も荒い。
それでも――
(……まだ)
(まだ、終わらせない)
だが現実は非情だった。
次の一撃が来れば――
誰も、生き残れない。
戦場は、完全に沈黙し、
死の瞬間だけが、目前に迫っていた。
――由香里と英雄騎士団、
絶対絶命。
四天王の切り札「超獣化」お披露目回でした。
完全に格上の力を前に、由香里たちは追い詰められます。
次話では、この絶望をどう覆すのかが焦点です。
ここから物語は、さらに加速します。




