第41話 魔王の叱責、四天王動く
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
前話では王国側の動きが描かれましたが、
今回は――ついに魔王側が本格的に動き出します。
英雄とその娘を脅威と認識した魔王。
そして、その命令を受ける四天王たち。
静かだった戦場の裏側で、
確実に「次」が始まろうとしています。
それでは、第41話
「魔王の叱責、四天王動く」
どうぞお楽しみください。
深淵の底。
そこは、光という概念すら拒絶する空間だった。
黒曜石の床に刻まれた魔法陣が、脈動するように赤く明滅し、
天井とも壁ともつかぬ闇の奥から、低く、重い鼓動が響いている。
――魔王城・最深部。
玉座に座す者は一人。
魔王バーミリオン。
燃え盛るような深紅の瞳が、膝をつく影を見下ろしていた。
「……戻ったか、ガニメデ」
声は静かだった。
だが、その一言だけで、空間の温度が一段下がる。
「はっ……!」
ガニメデは、額が床に触れるほど深く頭を下げていた。
背中には、戦場から持ち帰った傷跡と――敗走の痕。
「言い訳は、あるか?」
「……ありません」
即答だった。
「人の子一人に戦線を乱され、
英雄騎士団をまとめて仕留め損ね、
挙句、撤退――」
バーミリオンの指が、玉座の肘掛けを叩く。
それだけで、
魔力の衝撃が嵐のように吹き荒れた。
「貴様は“四天王”だ」
「遊び半分で前線に立つための称号ではない」
「……申し訳、ございません……!」
ガニメデの声が震える。
恐怖ではない。
誇りを傷つけられた、純粋な屈辱だ。
「だが――」
バーミリオンは、ゆっくりと立ち上がった。
「敵は、想定以上だ」
「特に――“あの男”」
脳裏に浮かぶのは、
圧倒的な威圧と、理解不能な戦闘力を持つ男。
異世界英雄 達也。
「そして、その娘」
「すでに“駒”ではない」
その言葉に、
ガニメデの指が、わずかに震えた。
「……よって、命じる」
魔王の声が、玉座の間に響き渡る。
「四天王、全軍投入」
「次は、確実に――叩き潰せ」
闇が、ざわめいた。
⸻
「……やれやれ」
軽く肩をすくめたのは、長い銀髪を揺らす男。
四天王・シーザリオン。
「随分と大事になったものだね」
「人間相手に、四人がかりとは」
「文句を言うな」
低く冷たい声が、それを遮る。
氷の女王のような佇まい。
四天王・フレイヤ。
「命令は命令」
「従わぬ理由はない」
「ガルル……」
玉座の影から、獣の唸り声が響く。
筋骨隆々の巨躯。
鋭い爪と牙を隠そうともしない――
四天王・ゴルディアス。
「次は、逃がさねぇ」
「親も子も、まとめて引き裂いてやる」
最後に、
ゆっくりと顔を上げたガニメデ。
「……俺の失態だ」
「だからこそ――」
「次は、俺が終わらせる」
その瞳には、もはや慢心はない。
あるのは、静かな殺意。
バーミリオンは、その様子を満足そうに見下ろした。
「良い」
「では行け、四天王」
「英雄も、騎士も――」
「希望ごと、焼き払え」
闇が割れ、
四つの影が、それぞれの戦場へと消えていく。
⸻
その頃――
砦では、まだ知らぬまま、
夜の静けさが続いていた。
由香里は、灯りの落ちた廊下を歩きながら、
なぜか、胸騒ぎを覚えていた。
(……寒い?)
(それとも……)
知らない。
だが確かに、
“次の戦い”は――
もう、動き出していた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は戦闘は控えめですが、
物語全体にとっては大きな転換点となる回です。
・魔王が敵をどう見ているのか
・ガニメデの変化
・四天王それぞれの性格と温度差
そして――
由香里の「胸騒ぎ」。
まだ何も起きていないからこそ、
これから訪れる激突の重さを感じていただければ嬉しいです。
次回からは、
四天王がそれぞれ動き始め、
物語は一気に加速していきます。
引き続き、
ファザコン由香里と親バカ達也をよろしくお願いします。
感想・評価・ブックマーク、とても励みになります。




